力を求める分かれ道
「おじさん。今日もよろしくお願いします」
今日はパーティがやって来た。5人組のバランスの取れたパーティ。昔は個人での冒険者がほとんどだったが、最近ではパーティを組んで冒険する者たちも増えてきた。これが時代の変化という訳か。
「よ、よろしくお願いしまsう」
パーティの中でも歳少年の少年が私の前にでる。差し出されたのは【幻魔】クフリンと【魔獣】ケルピ。
「この2体を合体するなら、種族を選んでもらわないといけないな」
「種族ですか?」
「そうだ。幻魔からは【天使】と【悪魔】の2通りの強化先がある」
少年はパーティの方へ向き直る。
「どっちがいいんだろう」
「ケビンは悪魔ってイメージはないなあ」
「確かにこんなにかわいらしいのに悪魔従えているのは面白いわね」
パーティメンバーたちが笑っている。少年は別に嫌がっている様子はない。いつも通りのからみらしい。ただ、その顔にはどこかまだ満足していないようにも見えた。
「天使と悪魔って何が変わるんですか?」
「天使は主に補助の魔法を多く使えるようになる。悪魔は攻撃的なものが多いかな」
それと……、私は少年の耳音でそっとささやいた。少年の顔がハッと変わる。
少年は私の言葉を聞いてまだ悩んでいる。
「ケビンは天使の方がいいんじゃないか?」
「戦力的にも補助魔法は助かるしな」
仲間たちの助言。ケビンは耳を傾けている動作をしながらも、一人の世界に入り込んでいた・。
「ほら、ケビン、私らもそろそろ行かないと。早く決めてくれ」
パーティのリーダー的なものがケビンを促す。
「わかったよ」
ケビンは決断を下した。
合体が終わる。ケビンは【悪魔】グレムリンを引連れた。
「まさか悪魔を選ぶなんてな」
「僕も早くみんなと一緒に戦えるようになりたいんだ」
パーティはそのまままた出て行った。少年の小さな嘘と一緒に。
「悪魔を引き連れる者は強大な力を手に入れる。その代わりその力は自分一人のみにしかもたらされないがね」
私が少年にささやいた時、彼の眼の色が変わった。
彼はきっとこれからもっと力を求めることになるだろう。そしていずれはパーティを……。
力を求めることは悪ではない。私はその手助けをする立場だ。
少年がその欲望に従いたいのならばそれでいいのだ。
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