臆病なオーク
「このオークを合体させたいんです」
「おや、この子は今の君の大事な戦力じゃないのかい?」
今日もまた冒険者がやって来た。
皮の装備を身にまとっている。駆け出し冒険者ではあるが、少しがレベルアップしているのだろう。オークを従えているだけの力はある。
彼が差し出したモンスターを預かる。【大魔獣】オークと【魔獣】ワンダーラビットの組み合わせだ。
「【大魔獣】と【魔獣】の合体では、新たに生まれるのは【妖蟲】ポイズンワームだ。戦力的には劣るが、それでもいいのかい?」
「いいんです。これで」
冒険者はどこか諦めている様子だった。
【大魔獣】オークは【魔獣】の上位種族だ。彼らは力に目覚めているがその凶暴さゆえに、多くの冒険者たちに畏れられている。
仲間にできればよき戦力になるため、合体で何とか手に入れようとする冒険者も多い。
しかし、今日現れたオークはそんな彼らの特徴とは少し違っていた。
オークは怒り狂った時にしか表情の変化が読み取りにくいのだが、それでも変化がわかるほど暗い表情を浮かべていた。
――きっと何かがあるのだろう。
しかし、彼らに口出しをすることは私の役目ではない。
「わかった。それでは待っていなさい」
私はオークとワンダーラビットを連れて合体の間に入っていった。
合体の間に入ってもオークはまだ暗い表情のままだった。
「きみ、いったいどうしたんだい?」
私は好奇心が抑えきれず話しかけてみた。
突然話しかけられたオークは驚いてしまっていた。オーク相手にはなかなか見ることができな反応だ。
オークはおずおずと話し出す。
「おれ、戦いがとても怖いんだ。どういう訳かわからないけど、この世界にやってきてからずっと敵が怖くて仕方ねえんだ」
「戦闘に関しては僕うの方が役に立っているからね」
ワンダーラビットが誇らしげに言う。オークに勝っているのだからそれは喜びもするだろう。
オークはどこか臆病で祭壇の上でもじもじしている。
私はその姿を見てとある記憶を思い出した。
「君は合体でできた存在なんだっけ?」
「ええ」
「もしかして、合体前はアースゴブリンだったかな」
「な、なぜそれを!」
オークは珍しく身を乗り出して訊ねてきた。
どうやら当たりのようだ。
以前、とても臆病なアースゴブリンの合体を受けたことがあった。
【魔獣】の中でも特に体の小さいアースゴブリン。弱いモンスターゆえに臆病であることもしょうがなかったのだが、それでも他のものに比べて特に臆病であることは変わりなかった。
その合体を経由しているとすれば、オークでも臆病になってしまうのは妙に納得ができた。
私はその事実は教えないことにした。教えても余計不安をあおるだけだ。
「いや、なんとなく覚えていただけだよ」
私は笑ってごまかす。
「僕のこの性格は治りますかね」
オークは心配そうに尋ねる。
正直治るかはわからない。モンスターの性格の中でも、特に影響の強い部分は代々受け継がれてしまう。
たとえ、あの冒険者が合体を重ねて強い種族を作り出したとしても、もしかしたら……
「わからない」
私はそう答えるしかなかった。
「合体後の性格まで私は操れるわけではないからね」
本当はもっと優しい言葉もあるのだろう。オークの顔はまだ不安のままだ。
「大丈夫さ、僕の性格で何とかしてやるよ」
突然、ワンダーラビットが胸を張って話に割り込んできた。
その小さな体に劣らず、相当自信があるようだ。
「お前の戦闘力と僕の強気が合わされば、こんな最強なことないだろ」
ようやくオークの顔が晴れた。
冒険者によって適当に合わせられた2体なのかもしれないが、もしかしたら最高の組み合わせなのかもしれないな。
「それでは始めるぞ」
私は合体のスイッチを押す。
2体は希望の光に包まれながら、新しい体へと生まれ変わる。
【妖蟲】は大魔獣と比べたら決して強い種族ではない。しかし、どれだけ遠回りしてもいい。
最後に最高の形で力を求められればいいだけなのだ。
「おはよう」
私はポイズンワームに話しかける。その子の目はもう怯えてはいなかった
お読みくださりありがとうございます!
こんな感じで様々な種族のモンスターに注目しながら合体に臨むモンスターのドラマを描いていきます!
▲感想・評価・レビューなどいただけますと、励みになります!▲
応援よろしくお願いします!
【他にも以下のような作品を連載しております】
・異世界からの刺客を最強勇者が迎え撃つドタバタコメディ!
「勇者様は異世界転生が許せない!」
・個人的な短編集(不定期更新)
「おさむ文庫の気まぐれ短編集」
あとがき下からのリンクから飛んでいただけると幸いです。