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第九話:ひびを満たす毒

この物語はフィクションです。

いかなる理不尽でも、受け入れてしまえば日常になる。


和也は、エサを与えていればおとなしい。

要求を、心を閉ざして淡々とこなせば、特に何かをされることはなかった。

要求の内容は、中々エグいものが多い気がするけど。

たぶん、和也が欲しかったのは、彼女や恋人ではなく、都合のいい人形か何かだったのかもしれない。


……だってさ、私の表情が死んでるのにも、嫌々従ってるのにも気が付かないで、いつも上機嫌だし。


良かったね、都合のいい女が手に入って。

あんたは私の事を愛してるって言ってくれるけど、私はあんたの事、一ミリも好きじゃない。

愛してるって言われるたび、ひびだらけの私の心に毒みたいな液体が少しずつ溜まっていく。そして、心のひびから少しずつ漏れだして、私の心と体を蝕んでいくんだ。


母さんが死んでからは、愛してる、なんて、あんたしか言ってくれない。

だから、今日もまた、あんたの吐き出す毒を飲み干して、ひびだらけの心を満たしに行くのさ。

その毒は、満ちるどころか、ひびから漏れだして、決して心を満たすことはないけれど。


あんたの毒が、あんた自身を殺すか、私の心が壊れるまでは付き合ってあげる。


だってさ、私は、あんたみたいな人の姿をしたナニかに捧げられた生け贄みたいだから。







誰も助けてくれないからさ。

私が私を守るしかないじゃん?







……本当は、たまにちらつく、誰かさんの笑顔が、ギリギリのところで私の心を繋ぎ止めてくれている。

ストレスで急激に増える心のひびを、少しだけ治し続けてくれている。



……けれど、もう、あの優しい笑顔も、忘れてしまいそうだよ……。

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