第六話:狂気と正気と
この物語はフィクションです。
それから、和也は毎日、私を呼び出しては、『彼女として当然のこと』を強要するようになった。
私は、暴力と変わらない『ソレ』を、毎日ただ受け入れるしかなかった。
受け入れる以外のことを考えてはいけないと思い込み、今幸せなんだと口にすることで、ありもしない幸福に酔いしれているフリをした。
そうしないと、生命の危険を感じるから。
そうしないと、心を守れないから。
……それ以外に、本当に何も出来なかったのかというと、分からないとしか答えられないけど。
一週間もすれば、さすがに周囲も気付く。
正確には、弟が警察に相談しに行ったらしい。
警察からは、恋人同士のことだから、そんな遊び方もある。と薄ら笑いしていたヤツもいたらしいけれど、必死に訴えかけるとさすがにいたずらではないと気付いたらしく、謝罪と共に、複数の警官から真剣に話を聞いてもらうことが出来たそう。
最初に対応した警官が、なぜいたずらと決め付けたかというと、夏休みシーズンだけあって色々ないたずらが舞い込んでくるのだそうな。
中には、弟のように、子供を使って警察を動かし、いたずらが成功すると爆笑しながらネタばらしするケースが複数あったとのこと。
悪質ないたずらで再犯の恐れがあることから、そのバカ共は、目出たく前科持ちになったそうな。ざまぁ。
で、私はというと。
双方の親に知られる羽目になり、警察からも、冷却期間という名の接触禁止令が出されることになった。
ニュースでたまに見る、書類送検とかではないそうだけど。
また、打撲傷をはじめ、いくつかの傷があるため、病院に担ぎ込まれ、検査と療養という名目で、夏休みのギリギリまで入院する羽目になった。
宿題を早い段階で終わらせたのは失敗だったかも。病室から出られない時間はヒマでヒマで仕方なかったから。
その間、クソ親父は一度も私の様子を見にくることはなかった。弟は、徒歩で見舞いに来てくれたというのに。
病院に連れていったのも、和也の両親だったし。
何度も謝罪されたけど、それよりかは、ほっといて欲しかった。
本当に謝罪するべき相手は、俺は悪くないと言ってるみたいだし。