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第四話:再会と、カードゲーム

一部、実際にあった話が混ぜられています。

原形をとどめていませんが。

彼氏が居る生活というのは、思ったほど悪くなかった。

今まで誰もくれなかったものをくれる。

それが愛情かどうかは置いといても、心地よいと思えることだけは確かだった。


和也とは通う高校が違う事もあって、学校内では会わないことが幸いしていた。

私の通う高校は、恋愛禁止を謳い文句にしてるわけじゃない。ただ、節度を持って清いお付き合いをしましょうと注意するだけだ。

そんなん、誰も守らない。

隠れてキスしたりなんて、そこら中でされているのに気が付いた。

友人の沙知から、校舎内にお楽しみをする場所もあるとかなんとか聞いてしまうと、私もいずれ、和也とそうなるのだろうか?と自然と考えるようになっていた。


和也とは通う学校が違うからこそ、節度を保っていられた。


その事実に気が付いたのは、付き合い出して一ヶ月ほど経って、夏休みに入ってからだった。


夏休みだから、和也とほぼ毎日顔を合わせる。

彼氏と会うのだから、なにも不自然なことはない。

けど、和也に会いに出掛けるたびに、弟が同情するような表情をしているのが、どうも気にかかった。



なんでこうなるかなあ?



最近、よくホビーショップに連れていかれる。

一緒に行くのではなく、連れていかれる、だ。

カードゲームには興味も無いと言っているのに、カードゲームで遊ぶために和也はホビーショップに行きたがる。

私は、和也の彼女だから、仕方なく付き添ってるだけ。

暇を持て余す私は、その場の雰囲気を楽しむくらいしか、やることがなかった。

しかし、その日は違った。

和也から、例のあの人を紹介されたのだ!

驚いた。なんでこうなる!?

突然の再会に動揺する私をよそに、あの人の名前が、ついに判明した。


大場優(おおば・ゆう)だよ。よろしくね」


聞けば、和也とはカードゲームで知り合った中のようで、和也の通う高校の先輩らしい。

今では卒業して社会人とのこと。

他人に何かしら奢るのは、癖のようなものらしい。なにそれ?


「安藤くん、彼女いたんだ」

「実はそうなんすよ、優さ~ん」

親しそうにしながらも、きっちり線引きしている様子の優さんと、自慢しながらウザ絡みする和也。

熊が犬に襲いかかっているような、不思議な光景だった。


「あの、失礼かもですけど、優さんっていくつなんですか?」


きょとんとした顔の優さん。それから、ちょっといたずらっぽく笑って、

「いくつに見える?」

と、逆に聞いてきた。

今年18歳の熊公が小学生に見えるくらい落ち着いているように見えるから、えーと、たぶん。


「25くらいっすかぁ?」

近くにいた、リアル小学生が会話に割り込んできた。

そんな妙に軽い態度の小学生に優さんは、怒るでもなく、呆れるでもなく、何と、落ち込んだ。

「マジかぁ……。俺そんな年上に見える?」

「オレもそんくらいだと思った!」の声が複数。仕方ない、とばかりに語る優さんの歳は、

「俺早生まれだからまだ19だよ。年が明けたらようやく成人式だ」


は?社会人二年目?それでこんなに落ち着いてるの?


周りの、嘘だー、老けて見えるー、公文書偽造ー。なんて言葉も、耳を素通りするくらい驚いた。

っておいこら最後のやつ誰だよ?優さん睨んでるじゃん。怖くないけど。和也かよ。下手くそな口笛吹くんじゃねぇよ音鳴ってねぇよ土下座して謝れよ私が恥ずかしいわ!

私の怒りの視線が通じたのか、和也は「ごめ~ん優さん許して~」と、無駄にでかい体で押し潰すようにウザ絡みしにいった。

「はいはい、気にしてねぇよ」

と優さんは大人な対応。

それでも、どこか楽しそうだった。


ホビーショップの一角は、カードゲーム専用のプレイスペースとなっていて、学校も年齢も違う人達(全員男子!)が思い思いにカードゲームで遊んでいる。

「上原さんは、これやんないの?」

優さんが不思議そうに聞いてくるも、私は首を横に振るしかなかった。

「いえ、アレの付き添いなんで」

視線の先には、小学生に対してガチで勝ちにいってる和也の姿。

ほとんど何もさせずに勝利をもぎ取り、一人ではしゃいでる。

対戦相手の不貞腐れた顔と、周りの冷めた雰囲気が、色々と語っているよう。

その様子を見た優さんは、苦笑しながら軽くため息。

「いやまあ、俺も勝ちにはこだわりたいけどさ」

そのままの表情で私の方を向き、

「ルールは教えてあげるから、とりあえず、やってみる?」

カードデッキと呼ばれるカードの束を私に差し出してきた。


……アレの事は、見なかった事にするらしい。



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