第三話:嵌められた
この物語はフィクションです。
突然ですが、彼氏が出来ました。
また、わけが分からないことが起きた。
事の発端は、別居している祖父母の家に遊びに、正しくは、せっかくの日曜なのに、と嫌がる 私と弟を、クソ親父が無理矢理連行した事だった。
友達との約束もドタキャンして行ったら、親戚の会合とかで、親世代や祖父母世代が10人以上集まっていた。
聞けば、この場に居る全員が親戚なんだとか。
だというのに、初めましてがずいぶんと多い。
祖父母世代は皆兄弟で、親世代は子供達。
私たちは孫世代。
孫世代が一番少ないと言う不思議。
少子化が騒がれている時代。未婚も少なくないと聞く。実際、孫が居るのは二家族の三人だけのようだ。
で、目の前に居るのが、父が用意した彼氏ということらしい。
お見合いかよ。ふざけんな。
テーブルを挟んで目の前に居る同年代の少年は、クマみたいな体格と、一見人懐こそうに見える表情をしている。
最低限の事はしておかないと、あとで父から拳がプレゼントされる。だから、不本意で面倒だけど、情報交換をしなければならなかった。
少年は、安藤和也高三の二個上だけど敬語やさん付けは不要。
趣味はテレビゲームとカードゲーム、あとマンガ。
聞いてもいないことをベラベラしゃべる。
弟は早速飽きて、携帯ゲームを始めてしまう。
それに絡み、ゲームの攻略法を得意げに語る和也。
二人はあっという間に意気投合。弟はチョロかったようだ。
その後、急にカードゲームの話に変わる。
カードゲームの事は興味なかったけど、実物を見ながらの事だったので、暇潰しにはなっていた。
「お前ももう高校生だ。変な男と付き合うくらいなら、和也くんと付き合いなさい」
親戚総出で昼を食べたあと、クソ親父がそんなことを言い放ったわけだ。二十人近く居るなかで。
大勢が居るなかで、無言の圧力に晒されながら、イエスを強要される。
吐きそうな気分だった。
仕方なくうなずけば、目の前のクマみたいな体格の少年は、ニチャアと粘つくような笑顔?を浮かべた。
嵌められた、と思った。
引きつった表情になることくらい、許して欲しい。
珍しく、弟が同情するような表情なのが、印象的だった。