第十四話:事後処理と結末
この物語はフィクションです。
空欄の先を読むのは、自己責任でお願いします。
「こちらが、今回の事件の報告書になります」
大きいサイズの茶封筒には、印刷したようなきれいな文字で『調査報告書』と書かれてあった。
お互いの挨拶もそこそこに、優さんが差し出したのは、今回の事が詳細に記された報告書だという。
受け取ろうとする祖母の手を、そっと掴んで止める優さん。なんだろう?と首をかしげると、にわかには信じがたいことを口にした。
「先に言わせてもらいます。こちらには、今回の事件についての詳細な情報が記されています」
「つまり、なに?はっきりとおっしゃって?」
「大変に過激な内容が含まれています。何も見なかったことにして、破棄することをおすすめします。・・・私は、この報告書を読んで、犯人に殺意を覚えました」
本気で怒っている様子の優さんの背中に浮かぶオーラの姿は、般若か夜叉か。
優さんは、こんな顔も出来るんだ、と意外に思った。
でも、優さんが殺意とか、ね。ちょっと信じられないなぁ。
「とうに覚悟は出来ていますわ。必要とあらば、この老骨に鞭打って、わたくし自ら痴れ者の首を跳ねましょう」
般若がこっちにもいたよ。怖えぇよばあちゃん。
「それが叶わないことは、ご存知で?」
「それを、今から確認するのですよ」
「叶うならば、犯人をこの手で八つ裂きにしてやりたかったですわ」
息が詰まるような緊張感の中無言で三度ほど読み返して、ため息の後にようやく出てきた言葉が、それだ。
怖えぇよばあちゃん。グレードアップしてるよ。
透なんて、ガタガタ震えてるじゃん。
一体何て書いてあったのさ?
ねえ優さん、読ませて?
手を差し出せば、渋い顔をする優さん。
ばあちゃん?読んでいい?
とても嫌そうな顔をするばあちゃん。
二人とも、頑なにに渡してくれない。
ねぇ、ほんとに気になるんですけど?
(報告書より、一部抜粋)
ここからは、本当に過激な内容になっていることを、始めに記す。
心の弱い者は、閲覧非推奨。
・上原美香(現・東城美香)
計76日間に及ぶ、虐待、凌辱、洗脳等を受け、一時期、社会復帰は不可能と思われていたものの、後遺症等は確認できず、表面上は健康に見える。
PTSD等の精神疾患の可能性あり。長期にわたる経過観察を推奨する。
・安藤和也(死亡:頸椎損傷による失血死)
上原美香に暴行を加え、物理的・精神的に屈伏させた状態で、長期にわたり凌辱と洗脳を繰り返した。
その最中、両親を首吊り自殺に見せかけ殺害。
上原美香が保護されたあと、自死を図った。
メモ書き等、犯行に繋がる資料は一切発見できず。動機は不明。
上原美香以外に対する暴行の事実が多数あるものの、立件はしない模様。
・安藤夫妻(死亡:頸部圧迫による窒息死)
上原美香が暴行を加えられていることを知りながら放置、後に息子和也に殺害される。抵抗の様子はなかった。
元々、息子和也からのDVがあった模様。
正常な判断が出来ない状態だったと思われる。
・上原泰蔵(死亡:頭部損傷による脳挫傷)
経緯など、詳細は不明。争った形跡などなく、なんらかの理由により錯乱の後、投身自殺を図ったものと思われる。遺書等は発見できず。
元々、精神疾患を患っていたと思われる情報あり。詳細は不明。
生命保険が、東城姉弟宛に支払われている。事実確認を推奨。
・⬛️⬛️⬛️⬛️(名前が塗り潰されている)
(男子:退学・不起訴処分)
上原美香のクラスメイト。詳細な情報を安藤和也に逐一渡していた。
上原美香の虐待に関わっていた情報と証拠はない。ただし、凌辱の映像等を報酬として受け取っていた形跡あり。
サイバー犯罪部門に情報を提供し協力を要請。解決済み。今後も監視を推奨。
悪事は人を不幸にします。
どうか、踏み留まってくださいますよう。




