チラチラ
雑草の小さな花に、
シジミ蝶がとまった。
さっきまで、シジミ蝶は、
草刈りをしているぼくの周りを、
チラチラ飛びまわっていたのに、
どうやら、
あまり見られることのない、
花にとまって、
蜜を吸うことにしたみたいだ。
ぼくはこれまで、
シジミ蝶を、じっと見たことがない。
いつも心の中で、
なんや、シジミやん、の一言を、
発するだけだった。
目の前のシジミ蝶は、
さっきからピクリとも動かない。
もうそろそろ、チラチラ、
飛び回るんじゃないかという、
ぼくの予想に反して、
ひたすら目立たない
小さな花にとまっている。
シジミ蝶さん、死んでしもたん?
それとも、寝てるん?
ぼくは、わりとまじめに、
そんなことを考えた。
そして、ぼくがそろそろ、
家に戻ろうとしたとき、
別のシジミ蝶がチラチラ現れて、
とまっていたシジミ蝶の周りを
飛び始めた。
「ごめん、ごめん、待った?」
「ぜんぜーん、今来たとこ」
まるで、
待ち合わせでもしていたかのように、
とまっていたシジミ蝶も
チラチラ飛び始めた。
そうか、待ち合わせなんや。
シジミ蝶達は、
しばらく、庭を散策しては、
カップルで仲良く、
秋の空に消えていった。
ぼくは、また一つ、
自然に気づくことができて、
嬉しくなった。