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聖夜、水色の花に触れる(オーティス・レディングに捧げる)

作者: 秋葉竹

                    


歌は、

今夜も眠りをいざなうだろう


僕は、

この部屋にながれる

美しくも、切ない、哀しげな調べを

オーティス・レディングの歌声を

その『ホワイト・クリスマス』を

祈りを込めて、聴くだろう


君はいつまでも、

なぜ僕のまぶたを見つづけているのだろう

夢を忘れようとしない僕は眠り


その夢色の眠りの中で


フローリングが冷たくて心地よく

冷めきった水色の心の花に触れる小指の先を

そっと、みつめ、

みつめ、みつめ………



涙がながれおちるまえに

手鏡でチェックをして、哀しみの色を消す



なにも、始まらないのは

なにも、始めようしないから、


なのだから。


ひと眠りをしたら、いい人のふりをしよう

氷たっぷりの、冷水を友とし、

辛い人生を消し去るように忘れよう


心でさえ、

一滴の血も触れれば凍るほどに、

その土まで冷えているだろう。

入った瞬間は、寒いと感じるくらい。


世界は、ただ忘れられることを待ち

歌は、ただ眠りをいざなう夢を忘れない


この部屋にも、こんや。

君の優しさが転がっていると

僕の目には映るんだ


夢を忘れない僕には

聴こえてくるはずのない、

星空への特別な祈りを捧げる歌声が

その部屋にはながれているような


深く、折りたたまれた心のアルバムに

平凡な誠意という言葉にすり替えられて

貼り付けられるような

「ありがとう」

「さようなら」


心の扉を開ける歌声は、

しっとり濡れていて、

けれど、忘れることなどない

オーティス・レディングの

『ホワイト・クリスマス』

その甘く、切ない、哀しみを掠れさせた

懐かしい歌声が、

ながれる


どんなことが起こっても

僕は君と

この部屋にながれる

美しくも、かすかに掠れた夢の歌声を

きっと、聖夜、聴くだろう


だから、僕はこの部屋から、

出られない


心には夢があり

聖夜、僕はその夢色の歌声を聴きながら

ようやく、微笑むのだろう


きっと、忘れてはいけない

僕と君の希望の未来を想い描いて


ありがとう、オーティス、

って言うんだ


その哀しみに、

さようなら、オーティス、

って。





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