dance floor
「皆さんには異世界に行って魔王討伐、又は討伐の補助をしていただきたいと思っています」
豪奢な椅子の両脇に天使を従えた女神様が、41人をゆっくりと見渡しながらそう言う。
「うおおお!まじかよ!」「冗談じゃないわ!」「これは夢よ」
などなどクラス中が混乱する中、女神の赤い瞳がこちらを見つめる。
「おーはよシノブ、目覚ましなさいよ」
そういってボクの体を揺する。
「もう120分寝かせてよ...」
いつも1時間は早く起こしに来てるんだから。
「ちゃんと朝ご飯食べないと許さないんだからね、ほら!」
布団をはぎ取る、さむいから返して。
嫌々起きたボクをリビングまで引っ張っていく。
「おばさま、連れてきました」
「ごめんね銀子ちゃん、あとお義母さんって呼んで良いのよ」
「わかりましたお義母さま」
朝からテンションの高いこって。
「はい、銀子ちゃんも一緒にね」
「はーい、いただきます」
「いただきます....ねむい」
ボクの名前は結城忍近くの高校に通う一年生16歳。
身長175cm運動は得意だとおもう、勉強は銀子が見てくれるから上の方だと思う。
趣味はゲーム、あとは新作の度に銀子と一緒に映画を見に行くくらいで至って普通の高校生だと思う。
そして朝から元気なこいつは坂城銀子16歳。
隣に住む幼馴染でなんと幼稚園から高校までずっと同じクラスだ。
母子家庭で母が夜の仕事をしており、親友だったうちの母の提案で一緒に食事をしている。
腐れ縁ここに極まれりだ。
嫌な訳じゃない、銀子はすごい可愛いし何人からも告白されていると聞いたことがある。
ずっと一緒だったし、あの、その...す、すきだけど。
サラサラストレートセミロングとか、メガネとか、ぱっちりした目とか、スラっとした割に胸が大きいとか、一緒にテスト勉強したり、意外に泣き虫だったり、ホラー映画が苦手だったり、毎年誕生日にはプレゼントくれたり、チョコもくれるし...プレゼントあげるとすごい喜んでくれたり、前に買ってあげたストラップずっと使ってくれたり...
「どしたの?あー、オベントついてるよ」
そういってボクの頬のご飯粒をとって、たべた?!
「あ、いや、なんでも、ないよ」
「ふーん?さっさと食べて顔洗ってきなよ、それとも食べさせてあげよっか?」
「ごちそうさま、着替えてくる!」
ボクは恥ずかしくなってにげた。
玄関でクツを履く。
「ほーら、早くしないと遅刻だよ」
「銀子のお陰で小学校から無遅刻継続中だよ」
「そーでしょそーでしょ、感謝しなさいよ」
「皮肉だっての」
「それじゃあお義母さまいってきます」
「いってらっしゃい」
そんな当たり前の毎日を送るんだと、そう思っていた。
先生が来てホームルームがまさに始まろうとした時だった。
教室が光に包まれて...そこは白くだだっ広い空間だった。
「勇者の素質を持つ者達よ、どうか魔王を打倒し世界をお救いください」
2段ほど高い位置にある椅子の前に立ち、皆に向かってそう言った。
その女は白い布を巻きつけたかのような服を着て、羽衣のようなものを漂わせ、白いベールを被って口元しか見えなかった。
椅子の両脇には武器を携えた天使がいて、こちらを警戒するように見つめている。
下手に近づいたら殺されそうな雰囲気を放っている。
「わたくしは異世界を管理する神、アウシュリーと申します。突然の事で驚いているかと思います、しかしあまり時間が無いのです」
そう女が言った、神であると。
確かにその女が発する威光というか雰囲気が、否応なく上位の存在であると伝える。
「皆さんどうか、心を静め、楽にして聞いてください」そういって女神が椅子に座る。
一番最初に担任の佐々木先生が口を開いた。
「わ、私どもに何をせよとおっしゃるのでしょうか」
「現在魔王によってこちらの世界が瀕しており、最後の希望として勇者召喚の儀が行われております」
豪奢な椅子の両脇に天使を従えた女神様が、クラスと先生の41人をゆっくりと見渡しながらそう言う。
「勇者としての素質が有る皆さんには異世界に行って魔王討伐、又は討伐の手助けをしていただきたいと思っています」
一瞬の沈黙の後、歓声とも悲鳴ともつかない叫びに包まれる。
「うおおお!まじかよ!」「勇者きたー!」「冗談じゃないわ!」「これは夢よ」
クラス中が混乱する中、女神と目が合ったような気がした。
「それではお一人ずつお呼びします、そこの魔法陣にお立ちください。秘められし勇者の力を顕現させましょう」
混乱の中一人また一人と名前が呼ばれ、能力をもらって転送されていく。
ドキドキしながら待っていたが最後まで呼ばれることは無かった。
ボクと銀子が残された。
「最後になっちゃったね、これからどうなるんだろ」
「わかんないよ、勇者になって魔王と戦えなんて...」
2人でひそひそと話していると、銀子が先に呼ばれた。
「坂城銀子さん、こちらへ」
「じゃあ先に行ってるね、早く来てよね」
「うん、すぐいくよ」
魔法陣の上に立った銀子は他の皆と同じようにあっさり転送されていった。
さぁいよいよボクの番だ。
「では最後に結城忍さん、こちらへどうぞ」
魔法陣に立つ、女神様が手をかざして...首をかしげる。
「結城忍さん、申し訳ありません貴方が戦闘に適した能力ではないようです。少しの回復魔法は使えるようですが」
「ちょ、ちょっと待ってください女神様!どうすればいいんですか!」
さすがにそれは無いよ!
「ですので代わりに補助をお付け致します」
女神の手から光が溢れ、手のひらサイズの天使を創造する!
「直接の戦闘行動を取ることは出来ませんが、世界や魔法の仕組みなど、忍さんの補助をする天使を作りました」
その天使はボクの鼻先に飛んでくると優雅にお辞儀、
「アルジェントと申します、忍様宜しくお願い致します」
そういうとボクの肩に座る。
「忍さんにしか天使は付けておりません、内緒でおねがいしますね。他人には見えないのでご安心ください」
ほほ笑む女神様、そして何故かボクに近づいてくる。
「このような力しか与えれず申し訳ありません、ですがあなたの大切な人を守ってあげてくださいね」
銀子の事が脳裏に浮かんだ。
「あ、あの、がんば「祝福を」ひたいにキスをされる。
混乱しているボクに向かって女神様が手を振って、
「お気をつけて」転送された。
一番最後に転送されたにも関わらず、魔法陣の上に召喚されたのはみんな同時だった。
月夜の下、広場の魔法陣の上にボクらは居た。
ボクらの周りを甲冑姿の騎士やローブ姿の魔法使いたちが見守っていた。
騎士達を割っていかにも王様王妃様といった2人が歩み出る。
「おぉ、伝説は本当であった。勇者様方、どうぞこの世界をお救いください」
先生が一歩出る。
「私達は女神アウシュリー様から願われて参った次第ですが、こちらの事情を良く知らないのです」
「おおお、なんと我らが女神からとは、神よ感謝いたします!」
王様が感謝を天に捧げると周りの騎士、魔法使いたちも天に感謝をささげる。
「それでは今日は召喚の影響もありましょう、部屋を用意しております。お名前と宜しければ女神様の祝福をお教えくだされば」
本日中に訓練の指針を相談しますので、と。
能力を言わないとダメなのか、ボクは何だろうと思っていると肩に乗った天使アルジェントが教えてくれる。
(中級までの回復魔法が使用出来ます、シノブ様)
(ありがとうアルジェント)
皆が名前と能力を書記さんに伝えていく。
「日野篤、能力は火の理っていうらしい、鍛えれば一般人には無理な火の上級魔法を使えるらしいぜ」
おおーと歓声が聞こえる。
「はいはーいわたし瑞野唯、水の理だったよ」
「クラス委員長の館山政人です、ナイトオブナイトといって皆をまもる力だそうです」
「館山くん皆を守るとかかっこいい!」「さっすが委員長」
文武両道のクラス委員長は能力も優秀らしい、ボクは中級回復なんだよなぁ。
皆が能力を言い合い、盛り上がっている中一、目立たないように伝えに行く。
「結城忍、中級までの回復魔法です」
突然辺りが静かになった。
「なんだよ結城おまえ中級までかよ」
「回復だけ?俺の専属ヒーラーにしてやろうか」「ヒール薄くて死んじゃうよ」
散々な言われようだ、さっさと部屋に案内してほしい。
全員の確認が終わり、城の部屋に案内される。
ベッドに腰掛け溜息をつく、よく耐えたぞボク。
(大丈夫ですかシノブ様)
(ありがとう、アルジェントが一番の祝福かもね)
そのとき扉がノックされる。
「シノブ?私だけど入って良い?」
「どうぞ開いてるよ」
銀子が入ってきてボクの前に立つ。
「これからどうなっちゃうんだろうね...」
下から銀子の顔を仰ぎ見る、月光に照らされた銀子は美しいと思った。
「魔王を倒して世界平和なんて簡単に言ってくれちゃってさ」
一歩近づいてくる。
「死ぬかもしれないんだよ?」
もう一歩。
「だからさ」
顔を近づけてくる銀子。
「抱いてよ」
「え?」
突然顔を掴まれキスをされる。
数秒後唇が離れる、銀子の真剣な涙を湛えた瞳から視線を離せない。
「もしかしたら明日にも死んじゃうかもしれないんだよ?知らない土地で消えて無くなっちゃうかもしれないんだよ?」
「だからさ、後悔しないようにさ、抱いてよ」ベッドに押し倒される。
銀子と見つめあっていとアルジェントが、
(シノブ様シノブ様、女神様の言葉を思い出してください)
(大切な人を守るって、止める事だよな)
(いいえ、きちんと愛すべきです。銀子さんの事をお好きなのでしょう)
(こんな時にどうしろっていうんだよ!)
(少々お待ちを...部屋に結界を張りました邪魔は入りません)
「ねぇ、シノブは私のこと、嫌いなの...?」
(さぁシノブ様覚悟をきめてください!銀子さんの決意を受け止めて!)
「ぼ、ボクも銀子の事大好きだよ」
「うれしい!」
そういってまたキスをされる。
「2人で大人の階段、のぼっちゃおうっか」
(先程はお楽しみでしたね)
うるさいよ...
銀子は隣で寝息を立てている。
大好きだよ銀子、そう思いながら髪を撫でてやる。
首元に銀子らしからぬハートの付いた白いチョーカーが目に映る。
銀子がこんなの付けてた覚え無いんだけど。
(良かった!シノブ様の能力が発動しましたね!)
能力?確か女神様が戦闘向きではないと言ってたけど、コレが?
(シノブ様と愛を交わす事で発動します、詳しい説明が必要ですか?)
説明お願いします...
(愛の証がそのチョーカーです、色が状態を表しハートのサイズが愛の大きさです。今の色はピュアホワイト穢れ無き愛です、ハートは最大サイズですね)
それが今の状態な訳ね...
(持ち主の心の状態により様々な色に変化し、サイズも変動します)
聞きたくないけど黒で最小サイズになったら?
(...聞きたいですか?)
止めておこう...
(という訳で銀子さんはシノブ様の愛の奴隷となった訳です)
ちょっと奴隷って!
(愛のです、性ではありません)
あ、すみませんボクの早とちりです。
(更に愛の奴隷を増やしていきましょう。)
なんで増やさないといけないんですか....
(人数に応じて愛奴さんがパワーアップします)
増やさないとダメって事か、どうやって増やすんでしょう?
(そりゃもちろんセックスで)
おおおおおおおおいいいいいい。
(増やしたいからと言って無理やりではいけませんよ?でも無理やりが好きな女性が居るかも知れませんね)
いやいやいや、そうじゃなくてですねアルジェント様。
(かといって新規の方ばかり可愛がってもいけません、既存の方も可愛がってくださいね)
なんだよそれ、今までの雰囲気が全部ふっとんだよアルジェントさん。
「という訳でですね」
今まで手のひらサイズだったアルジェントが人間サイズになる。
「銀子さんは魔法で深い眠りに入ってもらいました」
「え、いや、一体なにを....」
「私も可愛がってもらえませんか?」
何を言ってるんだ!
「能力を解放させていくには私も可愛がってもらわねばなりません」
「そんなことは聞いてない!」
「私は貴方の為だけに生み出されたのです」
「え...?」
「良くご覧ください、この顔、体、声、銀子さんにそっくりでしょう?全てが貴方の好みのままなのです」
何を言って...手のひらサイズだったから気が付かなかったが瓜二つだった。
「ご安心ください、初めてですがデータは豊富です」
「そういうことを言ってるんじゃ....」
「ご安心を、私の全てはシノブ様の為だけに...」
『アウシュリー様、第一段階が終了しましたのでご報告申し上げます』
自室で待っていると報告が入る。
「宜しいでは経過報告を」
『はい、それでは報告致します』
アルジェントからの報告を直接受け取る。
「んんっ!ぁっ、くふっ」
思わず膝を抱えてしまう。
「っはぁ...はふぅ....とても可愛がられたのね貴女、羨ましいわ」
『坂城銀子の分も報告いたします』
「ありがとうでは引き続きシノブをお願いね」こちらは手で受け取る。
『承知いたしました』通信が切れる。
「まったく、シノブが銀子ちゃんと一線超えないものだから異世界なんて作ってしまったわ」
純白のベールが落ちる、それは銀子と全く同じ顔をしていた。
「私は世界に散らばり貴方を待つ。貴方は世界に散らばった私を探し愛を交わす」
「数々の困難が愛を育むでしょう、銀子と忍の愛を」
「この世界はその為だけに作られたダンスフロアなのだから」




