観覧車
ガサガサガサ……
「キャァッ!! 蒼史ィィィィィィ!!!!」
はいはい。いちいち抱きついてこないでいいから。そう思いながら何かが動いた草むらの方へ行って見るとそこには、クラスの中でひそかに組織された夢のファンクラブの幹部たちが隠れていた。
「スミマセンデシタァァァ……」
さすがの幹部たちも、雨音未来には敵わない。風紀委員はどんどんと幹部たちに迫って言った。言葉で説明できないようなことを……
その間、やっぱり夢は僕の背中にがっちりと抱きついてきた。
なぜ子供みたいに僕の背中に抱きつくのだろうか……よく理解できない……
「もういいわ。こいつらとじゃ話しにならない。夏目君、行きましょう。牧田さん、いい加減離れてください。」
そう冷たく言い放つと、雨音未来は足はやに歩き始めた。
「ここがあの観覧車か……でかいな……」
「前のチームはもういないはずです。早く乗ってしまいしょう。」
雨音未来がテキパキとそう言うと観覧車に近づき乗り込んだ。
「ねぇ、蒼史……私たちは別の乗りかごに乗らない……??」
「おれもできたらそうしたいが……それはだめなんだってよ……」
そう言って僕たちも乗り込んだ。
ギシギシギシ……
観覧車は回っている。
……当たり前か。観覧車だもんな。
この観覧車はどこからか声が聞こえると言うことで有名らしい。
僕は今日初めてきたのであまり知らないが、小さな女の子らしき声だとか、おばあさんの声だとか……人によって様々らしい。
でも、不思議だよなぁ~……
この観覧車に乗って、声を聞いた人はみんなこの中から忽然と姿を消す。あるいは死んでしまうのどちらかなのに、噂だけはどこからか広がっていく。
この世の中不思議なもんだらけだな。まったく……
そうこうしているうちに一番上まで来たようだ。
この観覧車はドリームランドのど真ん中にあるから、ほとんどその外の景色は見えない。かろうじてタワーの航空障害灯がかすかに見える。
本来なら、何も見えない外を眺めていられるのだろうが、今回は違った。やけにかごが狭いので、向かい側に座ってる人の足。すなわち雨音未来の足がたまに僕の足とぶつかる。
そのたびに夢があからさまにいやそうな顔をする。
何なんだこれは……
この地獄を止めてくれるのなら幽霊でも妖怪でも何でもいい……頼むから早く終わってくれぇ~……
のこり半分、僕はそう祈り続けることだろう。
昨日書いた内容をなぜか完璧に忘れていた黒羽でございます。
この作品も真ん中を越えました。(多分……)
もう半分、気楽にお付き合いくださいませ!!