青い花は春に咲き、百合の花には
高校二年時、色々とこじらせていた自分が書いた話です。よくある恋愛者の話ですが、取り扱っているテーマは当時の自分にとってはカタストロフ級の手に余る問題で、一体どうすれば良いのかわかりませんでした。作者として、中々恥ずかし話を書いたものだと思っておりますが、まぁそれも時効かなと思い載せる次第であります。
思えば、初めは後ろから眺めているだけで僕は幸せだったのだ。
ある日の放課後、その日はたまたま違う道から帰ったのた。下校しながらそのまま友達の家で遊ぶということになっていた。
慣れない通学路。周りの生徒たちも普段は学校で顔を合わせているはずだが、この道では見慣れないやつが多い。当然か。
そんな事を考えているときだった。前を歩く一人の女子生徒の横顔が目に留まった。黒い髪の横から覗いた白い肌、その中で映える大きな黒い瞳が一際目を惹いた。そして一瞬振り返ってこっちを見た。だがまた前に向き直った。
ジャージの色は水色で、僕と同じ一年だということだけはわかった。
「あの前の子、名前なんつーの」
「前のって、どれだよ」
「真ん中のセミロング」
「知りたい?」
「なんだよ」
「いや、お前ああいうのが趣味だったんだなって」
「まあな」
「ふうん」
「否定はしない」
「なら、メアド欲しいか?」
「持ってんのか」
「まあな」
「なんでだよ」
「同じ小学校だったからな」
「それより」
「ん?」
「名前」
「ああ。忘れてた」
「わざとか」
「そんな怒るなって」
「別に怒ってない」
「ならいい。ほんじょうゆりだ」
「漢字は?
「大層ご執心だな。本棚の本に、憲法第何条とかの条で本条。それとゆりはそのまんま、花の百合だ」
「本条百合っていうんだ」
「どうした。惚れたか?」
「さあね」
「否定しない辺り、認めてることになる」
「それは受け取り方の問題だ」
とは口で言ったものの、実際そいつの言は的を得ていた。
漫画やドラマなんかで見かけると、下らないと一笑に付してはいた。だが百聞はなんとやらともいう。実際自分で体験してみると、なるほどこういうものかと感心した。
要するに僕は彼女に一目惚れしていたのだ。
「どうだ?」
「なんだ」
「メアド、本当に要らないのか」
「ああ。いい」
「なんでだよ」
「僕らが神の運命で繋がっているのなら、結ばれるべくして結ばれるだろうからな」
「冗談か? それとも強がりか?」
「両方だよ」
「両方か」
「とにかく要らない」
「なら、俺がその神とやらになってやろう」
「一回死んで、また蘇りでもするのか」
「それができたら、中学なんて通ってない」
と言ってその友達は笑った。
そのときはそいつの言っていることがよくわからなかった。だが、そいつの家から帰ってきて晩御飯を食べ、風呂に入り、歯磨きを済ませ、布団に入ろうとしたときわかった。
携帯が光っていて、メールが一通届いていた。
送り主は、本条百合だった。
彼はこの様に弁解した。
「お前のを教えるなとは言われていない」
お説ごもっともだが、全く迷惑な話だ。お蔭で毎晩こちらは苦しんでいるのだ。出来るだけ早く返信するのに。
あの日から僕と百合のメールの交換は始まった。メールのやり取りは基本的に、二分置きぐらいがちょうどいい。程よく会話をキャッチボールできると僕は思う。
だが、百合に(名前で呼ぶことを許可してもらった!)返信する文面となると、かなりの推敲を要する。質問にはしっかとすべて答えたか。絵文字の彩りや配置はどうか。たまには顔文字も入れてみるか。書き直しては消す。また書いては打ち直しては時間は過ぎていく。二分なんてあるようでないようなものだ。到底それ以内に完璧な文章を打ち込むのは至難の業だ。というか僕には無理だ。だから最低四分、そこをデッドラインとして返信することに決めていた。
内容は至って平凡だった。家はどこだの、晩飯がどうだっただの。百合はマンションに住んでて、立ち入り禁止の屋上から見る夕日が綺麗なのとか。僕も一緒に見たいなとか思った。他愛もないやり取りだった。
内容はあまり重要でなかったかもしれない。彼女と話をしている、繋がっているんだと思うだけと胸が締め付けられ、息が吸いにくくなった。まだ文字列ではあるが、「悠太君」と呼ばれる度に僕の頬は少し緩み血色が良くなった。
そのうち、同じ学校なのだから会ってみようと話になった。僕はベッドの上を跳ねて、転がりまわった。僕は舞い上がっていた。だが少し落ち着き冷静になりよく考えると、さらに落ち着いていられなくなったので、フローリングの床でおでこを冷やしたりした。彼女が目の前にいるわけでもないのに既に手が汗で濡れていた。
次の日の昼休み、ぼくらは空中廊下で会った。
あの時は後ろから眺めていた。一度だけこちらを向いたとはいえ、目も合ったかわからない一瞬だった。その百合が、いま目の前にいる。メールでやり取りをしているとはいえ、ほとんど初対面。ここは男らしく、僕から話しかけたいところ。
「や、やあ」
口から出たのはそんな情けない言葉。昨日練習したのに。
矢継ぎ早に言葉を足す。
「ど、どうも。あっ」
自分でも意味が分からない事を口走る。足まで震えだした。情けない。
「ははっ。緊張するよね。私もっ」
だが彼女は笑いかけてくれた。それで僕の緊張もいくらか和らいだ。
笑った彼女の口元からは、八重歯が少し覗いていた。白い肌と黒い瞳と髪の毛のコントラストが綺麗だった。改めて彼女と対面したのは初めてだったので、彼女の顔を見るのは恥ずかしかった。
それから昼休みじゅうはずっと話をしていた。メールでは時間のかかるやり取りも、会って話すと交わせる言葉は多かった。昼休みが終わらないでほしい。時間を止められたなら。そんなことを思いながら、彼女を見ているとその透徹とした黒い瞳に吸い込まれそうだった。
だが残酷にも別れのチャイムは鳴った。彼女は自分の教室に戻っていき、僕もまた自分の教室に戻った。
それから午後の授業は身が入らなかった。視線は虚空を彷徨い、焦点は合わない。時折、時計に目をやっては僕らを引き裂いた時間の流れをちょっとばかし恨んだ。
もっとも、午前中の授業も昼休みの大事な約束があったので、取るものも手につかなかったが。
その日から僕は、ことあるごとに百合の視界に入ろうとした。廊下に百合が出てきたら大げさに友達とふざけ、大きな声を出した。移動教室がある時はわざわざ彼女の教室の前を横切っていくようにした。その際教室の中を覗きながら歩くと、百合もこちらを向いて笑いかけてくれた。白い八重歯がまぶしく見えた。毎日のメールのやり取りももどかしくなった。会って話せば、この何倍速くお互いのことを伝えられるだろう。何倍速くお互いのことを知れるだろう。
そのうちに、僕は百合が欲しくなった。
ある日の下校中、とても夕日が綺麗だった。
僕は百合に告白しようか迷っていた。メールし始めてから約一ヵ月が経っていた。メールは毎日続いていた。一ヵ月続けていれば話題も少しずつ無くなっていく。伝えるべきことも少なくなってきた。
だが明確に伝えなければならないことはいつのころからかずっとあったのだ。ただし胸の中に。それを伝える媒体はメールではいけない。だがそれを伝えることは、今のこの繋がりを終わらせてしまうかもしれないのだ。それだけは嫌だった。耐えられないことだった。
歩みもバイパスの国道に差し掛かった。国道の歩道橋を、下を流れていく乗用車見ながら渡った。膨大な数の量の乗用車やトラックがすれ違う。
僕は百合とすれ違いたくない。
歩道橋を下りるとすぐ左にある原っぱの中に目が行った。そこには野生にしては大きな花が咲いていた。毎日ここを通っていたのに気付かなかった。その花は初め、夕日の光を浴びて橙色に染まっているのかと思った。が、そうではない。この色は元からこの花の色だった。
夕日色のオニユリが、一人で咲いていた。
僕は走って家まで帰った。そして荷物を玄関に無造作に放り、もと来た道を全速力で引き返した。
なぜ今まで気づかなかったのだろう。
百合は僕のことをずっと待っていたのではないか。一人でベットの中、携帯を握りしめて待っていたのではないか。僕を。僕のたった一言を。
僕は馬鹿だ。僕は自分のことしか考えていなかった。たとえメールでも、お互い繋がって同じ時間を共有していながら、なぜわからなかったんだろう。
百合の家までの距離がひたすら長く感じた。
だが百合の家に着く必要はなかった。下校途中の百合に追いついた
僕は百合に言った。
「百合。一緒に夕日が見たい」
マンションの屋上。いつか百合が言っていた場所。確かにここから見る夕日は綺麗だ。だがその夕日もいよいよ暗さを増し、群青色が空を占めていく中で、空の端の方をわずかにその緋色で汚しているだけとなった。
僕は百合に、電子メールの文字列では伝えてはいけないことを目を見て自分の肉声で以って伝えた。
「悠くん。気付くの遅いよ」
「本当にごめん」
「いっつも私が待ってるんだよ?」
「いっつも僕が待たせてるの」
「ふざけないの」
「ふざけてない」
「じゃあ常にふざけてる」
「そりゃあごもっともで」
「やっぱりふざけたんだ」
「常にふざけてるから、いま改めてふざけることはできないの。喋りながら喋ってって言われて喋れるの? 百合は」
「本当にゴメンって気持ちあるの?」
「なくはない」
「そう」
「でも」
「ん?」
「もっと早く気付くべきだった、とは思ってる」
「ならいい」
夕日の緋色が完全に闇に呑まれるまで、その日僕らは一緒にいた。
それからは毎日が幸せだった。幸せは幸せでなくなった時に初めて気付くものだというが、そんなことはなかった。朝は、ちょっと遠いけど僕が百合を家まで迎えに行って一緒に学校に登校した。下校はお互いの部活が終わるまで校門のところで待ち合わせた。周りの冷やかしも心地よかった。
「ずっと一緒だよ」
「それは無理な話だ」
「なんでそういうこと言うの?」
「いずれ死が僕らを分かつ」
「夢がないなあ。それにその言い方中二病っぽいよ」
「でも事実だ。それに中二だ」
「うん。じゃあ、死ぬまで」
「そうだな」
「じゃあ死ぬ時も一緒だね」
「そうだな」
こんなのろけ話もいつのことだったか。
いつの間にか一年が経ち二年生になった。僕らは色んな所に行った。その間に色んな事もした。手をつなぎ、腕を組み、互いの体を抱きしめたり、キスをしたり。喧嘩もした。別れようとか言いだしたときもあった。だがそれは一時的な感情に過ぎず、大したことはなかった。
所謂、恋人がするだろう事柄は一通りした。一生にに一度の大切なものもお互いに捧げあった。
なぜなら僕らは恋人だったから。
そんなある日、百合が事故に遭った。百合が漕いでいた自転車に車が突っ込んできたらしい。幸い、百合は一命をとりとめたが、顔から着地してしまい傷跡が顔面に一生残るそうだ。
百合は二週間ほど入院していた。その間、毎日僕はお見舞いに行っていた。いつも百合の顔には包帯がしてあった。早く退院して学校にも一緒に行きたかった。
そして退院の日。僕は朝一番で百合の病室を訪れた。だが百合はもうそこにいなかった。声は百合なのだが、顔面の右半分に大きな傷があり、異常に右目が吊り上がって、唇の一部が欠損し犬歯が剥き出しの同い年ぐらいの女の子がいた。
これは一体誰なのであろうか。なんで百合の病室にいるのだろう。ああ、きっと百合は退院して違う子が入院してきたのだな。そうに違いない。
僕は病院を出て百合のマンションに向かった。だがそこにも誰もいなかった。
おかしいなあ。
僕は心当たりのある場所を回ってみた。マンションの屋上や学校。前に百合と行ったことのある映画館やショッピングモール。いくらさがしてもあの八重歯の可愛い百合はいない。
どこに行ったのかなあ。
それからしばらくして百合の元居たクラスに、前に病院で会った顔に傷のある女の子が転校してきた。すると初対面でいきなり馴れ馴れしくも話しかけてくるではないか。僕はとても困った。
「なんで」
「どうして」
「私よ」
と言われても、僕には訳がわからない。
仕舞いには彼女は泣いてしまった。
僕の方がよっぽど泣きたかった。自分の彼女がある日突然いなくなってしまった。代わりにこの子が病室に居た。百合の家に行っても代わりにこの子が出てくる。お前が百合をどっかにやったんだ。返してくれ! 百合を!
僕が心の中で思ってたことなのか、実際に口に出していたことなのかは興奮していてわからなかった。ただ彼女はそれ以上は何も言わずに、自分の教室に戻っていってくれた。
百合がいなくなってから一ヵ月ぐらい経っただろうか。放課後呼び出された。約束の時間に約束の教室に行くと、多分クラスの女子だったと思う子が待っていた。百合ではなかった。
告白された。付き合ってくださいと。僕は承諾した。断わる大きな理由がなかった。今の僕に彼女はいないから。
ただひとつボトルネックとなったのは、彼女の名前がわからないということだ。何と呼べばいいのだろう。
「私のことは、ちかって呼んでね」
どうやらちか、もしくはちかがつく言う名前らしい。漢字はどう書くのだろうか。
ちかちゃんは明るくて活発な子だった。僕を色々なとこに連れ出してくれた。映画を見たりやショッピングモールで買い物をしたりした。なんだか懐かしくなったりもした。
付き合いだして一ヵ月目ぐらいだったころ、ちかちゃんが意外なことを言い出した。
「いままでさ」
「ん?」
「言い出しづらかったんだけどさ」
「何」
「前の彼女さん。お気の毒だったね」
「百合を知ってるのか」
「知ってるも何も昨日も学校居たでしょ」
「どこにいるんだ百合は」
「いつも学校来てるでしょ」
「俺は一度も見てない」
「いっつも携帯いじってるじゃん。朝も昼も帰りもずっと」
「嘘をつくな」
「あんた大丈夫?」
「百合が学校に来てて俺のところに来ないはずがないだろ」
「戻ってきた日に真っ先にあんたの所に行ったわよ」
「どこから」
「病院からよ」
「それはあの傷の子だ」
「あの子が百合よ」
その時僕の携帯が鳴った。メールが届いたらしい。送り主は、百合の母親だった。
どうもお久しぶりです。
悠くん。百合が亡くなりました。
屋上から飛び降り自殺でした。
葬儀は明後日執り行いたいと思います。
必ず参加してください。
喪服を着るのはこれで二回目だ。おととし曾祖母が亡くなった時以来だ。あまり頻繁に着たい服ではない。
葬儀は至ってしめやかに営まれた。焼香の際、顔を上げるとまだ美しかったころの百合の八重歯の可愛い笑顔が僕を見ていた。
百合は本当に亡くなってしまった。もう本当に居なくなってしまった。ずっと信じたくなかった。僕の百合は可愛かった。あんな顔の百合は僕にとって既に百合ではなかった。だから無いことにした。僕には無理だった。もう百合じゃない百合を愛せる自信がなかった。どうしようもないことはわかっていた。誰が何をしたって、もうあのころの百合は戻ってこないのだ。だから僕はああするしかなかった。かつて百合だったものを疎んで遠ざけるしかなかった。そうしないと、そうしないと僕が死んでいた。
セレモニーホールを出る際、百合の母に呼び止められた。
「渡したいものがあるの。待ってていただけますか」
僕は待ち、そのまま百合の自宅まで百合の母に連れられた。
「あの。渡したいものって」
「百合の携帯よ」
と言って百合の母は私に、持ち主を失った可哀想な電子機器を受け取った。
これで僕と百合は始まったのだ。
「送信ボックスを見てください」
そう言われるままに携帯を開く。
これで百合と僕は繋がっていたのだ。
「っこれ」
送信ボックスを開くと、未送信メール999件と表示されていた。
Re:おはよう。悠くん。昨日も悠くんと遅くまでメールしてたからちょっと寝不足気味~。悠君はしっかり起きれたかな?
Re:やっぱり? 悠くんも? でも寝不足の原因が悠くんなら逆に嬉しいよぉ☆
Re:気持ち悪いってゆうな それより悠くん朝ごはんなんだった? 私は朝なのにカレーだよ!
Re:そう 昨日の残りだよ~ お母さん最近朝サボるんさ~(怒)
Re:まあ朝はみんな辛いしね それより最近悠くんと会えないね~ 部活忙しいんでしょ 絶対ゆうしょうしてよね 私我慢してるんだよ?
もう見れなかった。
僕はその場で吐いた。気持ちが悪かった。こんなもの受け入れられなかった。なんなのだこれは。こんなものがあっていいはずがない。
ずっと、百合は僕を見ていたのだ。
百合は全く変わっていなかったのだ。顔をケガしても百合は百合のままだった。
こんなに懐かしいのだから。
じゃあ僕が愛していた、好きだったのは百合のなんなのだろう。僕が今まで見ていたのは百合だったのか。百合の外側しか見ていなかったのではないか。そのいい証拠に見てくれがダメになった百合を僕はあっさり捨ててしまった。僕が見ていたのは百合じゃない。僕は自分のことしか考えてこなかった。百合の顔があんなのになってしまったときも、僕は真っ先に逃げて、いやな現実から目をそらして生きてきた。一番つらかったのは百合自身であるはずなのに。なんでそんなこと気付かなかったのか。何を今までしてきたんだろう。
僕達はメールで、文字列で、言葉で、声で何を伝え合ったのだろう。
一年前に僕が百合に「好きだ」と言ったあの言葉はあの気持ちは嘘なのだろうか。
ただひとつだけ、はっきりとしている事がある。それは今までの僕自身の行動が証明していることだ。僕は本条百合という人間を愛してなんかいなかったのだ。僕が愛したのは、欲しかったのは彼女の黒髪であり、顔であり肉体だったのだ。百合が顔に傷を負ったときからうすうす感じてはいた。だがそれを認めたくはなかった。それを認めてしまうと、今までの自分が全てうそになってしまうからだ。
ああ、まただ、自分のことしか考えていない。自分本位でしか物事を考えてない。いつも自分がどうなのかが僕には重要なのだ。だから百合は自殺した。俺が殺したようなものだ。
じゃあ愛って何なのだろう。僕は百合を愛していた。少なくともそのつもりだった。ああなる前は。だがその気持ちは今考えれば、独占欲や、もっと言ってみれば性欲に基づくものだと言われてしまえば全て説明がついてしまう。じゃあ僕の今までしてきたことは? 僕にはわからない。
だけどはっきりしてることは、とりあえずもうこれ以上生きたくない。
百合の住んでいた部屋を辞し、エレベーターの上ボタンを押す。
最上階。屋上。
いつかここで夕日を見たのを覚えている。あの時の僕は既に嘘つきだった。そんな自分に見切りがついてしまった。
そういえば、死ぬときは一緒って言ってたもんな。
柵を越えると、あと一歩でそこはもう切れ落ちている。
どんな気持ちで百合はこの柵を越えたのだろう。自分のことしか考えてこなかった自分には到底わからないことだ。
ピピピピピピピピピ。
さっき預かった百合の携帯が鳴った。メールが届いたようだ。
送り主は本条百合だった。
Re:もうどこにもいかないで
そばにいて
メッセージは簡潔だった。
下を向くと、眼下の駐車場には百合がいた。
ゆっくりと足を踏み出す。あと一歩。
百合のために死ぬ。これは愛なのではなかろうか。
僕は自由落下した。
お読み頂きありがとうございました。
要するにこの話で私が伝えたかったのは「美人は顔を怪我しても愛されるのか」という問題で、なんだかんだいって性格だ、コミュニケーション能力だ、収入だ言うけれど人間最後は顔が一番大事なんだろう?ってことが言いたいんだと思います。でも、今の自分はそんな風に考えることは少なくとも無くなったので公開しました。
感想などいただけると今後も頑張れます。




