プロローグ
「遠い昔、この砂漠の大地にはたくさんの国が栄えていました。
けれど、国同士は仲が悪いわけでもないのに、ケンカがしたくてしたくて仕方がない愚か者ばかりだったので、来る日も来る日も戦闘を続けていました。
あるとき、正体のわからない黒い穴がポッカリと開き始め、ケンカばかりする国は、どんどんどんどん飲み込まれて行きます。
そして。
残ったのが、平和を愛する国。
クイーンシティとダイヤ国のふたつだったのです。」
広大な砂漠を進んでいく乗り物。それは地上から一メートルほど浮かんで、爆音も立てず、排気も出さず、まるで鳥が風を切るように走っていく。
やがてそれは、砂漠に浮かび上がる大きなドームの横を通り過ぎた。
「そろそろ入れ替わる、かな? 」
操縦席の男がそうつぶやくと、前に浮かび上がっていたディスプレイにほんの少しノイズが入り、座っているシートの、自分を包み込む感じが変わったような気がした。
「えーと、リトルダイヤ、さん? 」
呼びかけた一瞬、乗り物のまわりにプラチナブルーがサアッと現れて、また消えていった。
「良かった、スムーズに入れ替わってくれた。成功だね」
ほっと胸をなで下ろしてその男は、行く先に見えてきた、さっきとは違うドームを目指す。
と、前方の空間がグニャグニャと歪み始める。
それを見てニコニコ顔に変わった男は、急いでその前まで行くと、乗り物から飛び降りた。
ポッカリと開いた移動部屋の入り口から顔を覗かせたのは人型のロボット。
「ドウだった? 泰斗」
「R-4! 」
泰斗と呼ばれたその男は、「成功だよ! 」と言って、R-4に飛びついた。