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蜥蜴の果実  作者: 梨鳥 
第十三章
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ラヴィ・セイル  

 本当はとても寂しいの

 でも あなたがそう言うのなら

 わたくしはそうするしかないのでしょう

 でも 何故だろう?

 胸がときめく 心が弾む

 わたくは貴方の言うとおり

 気ままな風なのかも知れない


-----------------------------


 マクサルトへ着いて、ロゼがラヴィの船へ乗り込もうとした時、バドが彼に何か言って、言い合いになり、喧嘩を始めたのをアスランが止めて、今度はアスランがロゼに何か言って言い合いになり喧嘩を始めた。

 それを見てラヴィは溜め息を吐いた。

 正直、ロゼと上手くやれる気がしない。


「アイツどうしようもないぜ!」


 バドがイライラしながら傍へやって来て、ラヴィの腰を抱き寄せた。


「いいか、ぜってー気を許すなよ」

「わかってますよ」


 皆の前だったので、ラヴィはよそよそしくバドから離れた。バドは「つれねぇの」と口を尖らせた。

 バドは抑止の効く場面だと強気なんだ、と初めてラヴィは気が付いて、吹き出した。


「なんだよ」

「いいえ。バド、本当にありがとう。どうか、お元気で」

「うん。ラヴィも」


 ひら、と片手を上げ、何だか曖昧に笑ったバドが寂しそうで、ラヴィは胸の奥がキュッと締め付けられ、思わず彼の顔に両手で触れると彼の「へ?」といった顔にキスをした。

 おお、と周りがどよめいた。


「な、なにすんのよ」


 と、思わずオネエ口調になってしまったバドに、ラヴィがアハッと笑った。

 その愛らしさに、バドは堪らずガバッとラヴィを抱きしめた。


「なんだよ~、卑怯だぞ! オレ、どんだけ我慢したと思ってんだ!」


 わっと喝采が沸いた。ラヴィは急に恥ずかしくなって、バドの胸に顔を埋めた。

 

「調子に乗って言っちゃうけど……たまに会いに来てくれる?」


 バドがおずおずとラヴィの耳元で言った。

 全く彼らしくなかったけれど、もしかしたらそれがバドなのかも知れなかった。

 ―――あの、寝顔の主だ……。

 ラヴィは微笑んで、頷いた。


 そうよ。わたくしは自由な風。なにものの制約にも、囚われたりしないんだわ。


   

-----------------------------


 ラヴィの船は旅立った。

 バドが小さくなって、見えなくなるまでラヴィはずっと船から身を乗り出して、手を振っていた。

 やがて海原が広がり、好奇心旺盛なカモメたちが船の周りに寄って来ると、ラヴィは風になびく長い髪をひとくくりにして片手に掴み、小さな赤いナイフで無造作に切った。

 切った毛束を風に飛ばすと、髪の短くなった頭をブルッと振って、ラヴィはデッキの柵に頬杖をついて囁いた。


「わたくしはラヴィ。ラヴィ・セイルです」


 向かうのは、彼方西の空。

 見据える先に、キラ、と何かが光った。

 恋しいパルティエ皇女の微笑みが見えた気がした。

後もう一話、お付き合いください。

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