ラヴィ・セイル
本当はとても寂しいの
でも あなたがそう言うのなら
わたくしはそうするしかないのでしょう
でも 何故だろう?
胸がときめく 心が弾む
わたくは貴方の言うとおり
気ままな風なのかも知れない
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マクサルトへ着いて、ロゼがラヴィの船へ乗り込もうとした時、バドが彼に何か言って、言い合いになり、喧嘩を始めたのをアスランが止めて、今度はアスランがロゼに何か言って言い合いになり喧嘩を始めた。
それを見てラヴィは溜め息を吐いた。
正直、ロゼと上手くやれる気がしない。
「アイツどうしようもないぜ!」
バドがイライラしながら傍へやって来て、ラヴィの腰を抱き寄せた。
「いいか、ぜってー気を許すなよ」
「わかってますよ」
皆の前だったので、ラヴィはよそよそしくバドから離れた。バドは「つれねぇの」と口を尖らせた。
バドは抑止の効く場面だと強気なんだ、と初めてラヴィは気が付いて、吹き出した。
「なんだよ」
「いいえ。バド、本当にありがとう。どうか、お元気で」
「うん。ラヴィも」
ひら、と片手を上げ、何だか曖昧に笑ったバドが寂しそうで、ラヴィは胸の奥がキュッと締め付けられ、思わず彼の顔に両手で触れると彼の「へ?」といった顔にキスをした。
おお、と周りがどよめいた。
「な、なにすんのよ」
と、思わずオネエ口調になってしまったバドに、ラヴィがアハッと笑った。
その愛らしさに、バドは堪らずガバッとラヴィを抱きしめた。
「なんだよ~、卑怯だぞ! オレ、どんだけ我慢したと思ってんだ!」
わっと喝采が沸いた。ラヴィは急に恥ずかしくなって、バドの胸に顔を埋めた。
「調子に乗って言っちゃうけど……たまに会いに来てくれる?」
バドがおずおずとラヴィの耳元で言った。
全く彼らしくなかったけれど、もしかしたらそれがバドなのかも知れなかった。
―――あの、寝顔の主だ……。
ラヴィは微笑んで、頷いた。
そうよ。わたくしは自由な風。なにものの制約にも、囚われたりしないんだわ。
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ラヴィの船は旅立った。
バドが小さくなって、見えなくなるまでラヴィはずっと船から身を乗り出して、手を振っていた。
やがて海原が広がり、好奇心旺盛なカモメたちが船の周りに寄って来ると、ラヴィは風になびく長い髪をひとくくりにして片手に掴み、小さな赤いナイフで無造作に切った。
切った毛束を風に飛ばすと、髪の短くなった頭をブルッと振って、ラヴィはデッキの柵に頬杖をついて囁いた。
「わたくしはラヴィ。ラヴィ・セイルです」
向かうのは、彼方西の空。
見据える先に、キラ、と何かが光った。
恋しいパルティエ皇女の微笑みが見えた気がした。
後もう一話、お付き合いください。




