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蜥蜴の果実  作者: 梨鳥 
第十一章
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『獅子の団』と『鷲の団』3


「おりゃー! 教えなかったか!? 攻撃は、最大の防御ナリー!!」


 アスランが声高に一声吼えると、『獅子の団』の騎士達は「うおぉおおおーーー!」と一気に燃え上がり、『鷲の団』の奇妙な筒など恐れもせずに一斉に突撃を開始した。

 ロゼが目を丸くしてあたふたした。


「お、オイ、ウォーじゃねぇ……っ!」

「そうだ! そんなもん、棒っきれだ! 突っ込め―! 挟み撃ちだー!」

「待て、隊長は俺……」

「ウォー!」

「勝機は我らにアリー!!」


 ロゼははぁー、と大きく溜め息を吐いた。もうイヤ。俺、凄く困ってます。


 団長を捕えられて士気も指揮も無い『鷲の団』は、『獅子の団』の迫力におかしな筒でボンボンと虚しく宙を打つのがせいぜいで、ほとんどの者が覇気に固まって構える事も出来なかった。

 ああ、どうせなら、使い慣れた弓矢を持って来れば良かった、と多くが後悔をした。

 そうしたら、こんなにマゴマゴしなかったかも知れない。否、どっちにしろお終いだ。団長があんなに容易くねじり上げられてしまった。

 ほとんど諦めて無抵抗な『鷲の団』を騎士達数人で剣を突き付け一纏めに囲ってしまうと、


「おう、皆見事だな!」


 と、アスランが晴れやかに笑った。


 「ハイ!」とか「オス!」とか、褒められた犬の様に『獅子の団』の騎士達が力強く返事をする。

 ロゼはもう、ただ目を細めて力なく立っているのがやっとだった。



 アスランは騎士達に「オウ!」と答え、縛り付けられて座り込むホーク隊長を見る。

 ホーク隊長は観念して、アスランを見据えた。


 どうやってか分からないが、戻って来た。

 何の為に? 否、分かり切っている。

 俺への復讐に違いない。

 

 さて、とアスランが彼の前にしゃがみ込んで顔を覗き込むと、


「殺せ」


 と、ホーク隊長は唸った。

 アスランの細長い眉が、ぐいと上に上がった。


「俺の負けだ。お前の部下を、殺そうとした」

「ああ、あれはいただけなかった」

「……こんな事が世間に知れたら、どうせ失脚だ」


 項を垂れるホーク隊長に、「ザマァ、ハゲ鷲!」とロゼが意地悪く笑った。


「たりめーだ。死んだ後でも言いふらしてやるからなぁ」

「ロゼ、止めろ」


 ロゼを厳しく止めると、アスランはボリボリ頭を掻いた。

 彼が何か言い掛けた時、『鷲の団』の誰かが小さな声を上げた。


「殺さないで下さい」


 ハッとして、ホーク隊長はそちらを見る。

 『獅子の団』の騎士たちの足の間から、懇願する様にこちらを覗いて、『鷲の団』の騎士達が口々に懇願しだしたのだ。


「ホーク隊長をお許し下さい」

「殺さないで下さい」

「お願いします」


 彼らにとっては、命の惜しい隊長なのだろう。それもその筈、ホーク隊長は、身分や容姿の不味さが突っかかって、なかなか騎士に昇進出来ない者達を積極的に『鷲の団』に採用していた。自分の様で放っておけない、とは絶対に口に出さなかったけれど、部下達はその隠された意図に気付いていて、感謝していた。


 慕う隊長がいるのは、『獅子の団』の騎士達も同じ。彼らもまた、ロゼやアスランに同情を求める眼差しを向けて、居心地が悪そうにしている。

 うんうん、とアスランが腕組みをして深く深く頷いた。


「ホレ見ろ、ホーク」

「お前ら……」


 ホーク隊長は、歯を食いしばって俯いた。


「殺さねぇよ」

「……すまねぇ」

「部下に命乞いなんか、させんなよ」

「……情けねぇ……」


 なに、大丈夫さ! とアスランが笑った。


「仲間しか、見てねぇよ……」


 はぁぁああああ~!? と、ロゼは胸中で喚いた。

 でも、彼を除く全員からキラキラが溢れ出ていて、馬鹿馬鹿しさに声も出せなかった。

 

 ロゼは、キラキラなんか、大嫌いだった。


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