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蜥蜴の果実  作者: 梨鳥 
第十一章
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『獅子の団』と『鷲の団』2

 ロゼは部下達より少し先に、単身表へ出た。

 荒れ放題のガーデンエントランスに、皆一様に鉄仮面をつけた一団がむさくるしく整列をしているのを見渡し、その先頭を一瞥する。

 仮面を外し、自分をマジマジと見て来る醜い男は『鷲の団』団長のホーク。これは通り名で、ロゼはアスラン(獅子)と張り合ったのだ、と推測している。


 頭のてっぺんは、確かにホークな。ロゼはそう思ってニヤついた。


             *


 かくして、ホーク隊長は目を見張った。

 部下が何人か人前で痛めつけられて、自団の威厳の為にやって来た仇討先で、まさか『獅子の団』団長と鉢合わせるとは思わなかったからだ。

 朝のジョギングがてら、と思っていた浮ついた気分が一気に萎えた。

 彼は『獅子の団』団長のロゼットが大嫌いなのだ。

 元々、ライバル視していたアスラン隊長を僻地へ追いやる様騒ぎ始めたのはホーク隊長だった。

「滅亡」とか「呪い」といった人の心を怯ます言葉を繰り返し繰り返し唱え、しつこい位に怯えさせ、煙たがられる程に「アイツは不吉だ」、と騒ぎ立ててやった。

 結果、遂に目障りな奴がいなくなったと思ったら、すぐにコイツが次期団長に就いた。

 始めは、整った童顔や、ホークにはなよなよしく映る見た目を鼻で笑っていた。

 どうせ、クリス皇子に寵でも貰っているんだろう、と。

 しかし、あれよあれよと人気も実績も抜かされてしまい、結局アスランが隊長の時の方がまだマシだったくらいになってしまった。

 身分も容姿も実力も圧倒的に上な、一回り近く若い団長。

 ……好感を持てるワケが無かった。

 

 それに、コイツが『獅子の団』団長に就任した日の事が忘れられない。

 就任式の後、廊下ですれ違う際、コイツは「よう」とホークに声を掛けた。

 その生意気な声掛けに顔を怒らすホークにそよとも動じずに、彼はぷらりと片手を上げた。

 

「新任なんで、よろしくッス」


 それから、コイツは何かの席で会う度、どこかですれ違う度、「よう」とホークに声を掛ける。

 後輩ぶってるのは外面だけ。

 ホークには解る。

 ホークには聴こえる。


 ―――「よう」


 ―――「かかって来いよ」



 くそっ! 何もかも手に入れて、のぼせやがって!!


 悟られない様に奥歯を噛んでいると、対峙していたロゼット隊長が首を傾げて見せた。

 今日もまた、「よう」と片手を上げて。

 

「よう、ウチになんのご用ですかぁ? フォーク(ロゼはわざとそう呼ぶ)隊長」

「お前こそ、何をしている」

「ちょっと実家の掃除に?」

「ふざけるな」

「どっちがですかぁ? 一応まだレルパックス家の領地なんでぇ、おタク、不法侵入ですよぉ」

「華街の女共が昨夜ここに集められたと聞いた。店でも開く気か?」

 

 皮肉を飛ばしてふんと笑ってやると、かかか、と笑い飛ばされた。


「そりゃいいや」

「一体なにをしている」

「ナニって……」


 そう言って、彼は背後からゾロゾロと現れた部下にチラリと視線を投げる。


「……そんなもん。なぁ……」

「埒が明かん。押し通る」

「断る」


 余裕綽々な、感じの悪い笑顔でバンと言い捨てた目の前の若僧を、ホークは苦々しく睨み付ける。

 そして、ふ、と思った。


 ―――待てよ。『獅子の団』の騎士の少ないこと……。うまくいけば、殲滅出来るかも知れない。否、出来る。俺には王の作った武器がある。だとしたら、後に残るのは俺の部下しかいない―――。


 彼は手に持っていた一本の筒を、嫉妬の対象へと向けた。

 

 ―――そうだ。あのアスランみたいに、消せばいい。

 何度も根気よく潰して行けば、いずれ邪魔者なんていなくなる。


「これの威力を、人間で試す時が来た様だ」

「へぇ……同僚ナカマんの?」


 怯えた顔をすればまだ可愛いものを、ロゼット隊長は腕を組んで、顔からニヤつきを外さない。……強がりだ。きっとそうだ。お得意の剣など構えて見せた所で、何てこと無い。

 その切っ先は、俺に届きゃしないのさ。


「……そう思った事は一度も無い」

「だからお前はアスランを越えられない」


 ボンッ!と青い閃光と音が弾けた。


、ロゼの足元に小さく鋭い焦げた穴が空いた。

 ひゅう、と弱い風が、穴から立ち上った煙をさらって行く。

 この一発でる事も出来た。でもそれではつまらない。さぁ、怯えて見せろ。


「……こりゃスゲェ」


 怯えなかった。


「次はお前だ」


 早くコイツの吹っ飛ぶ姿が見たい。そう思って、ホーク隊長は脇に控えた部下に次の筒を片手を出して催促する。

 ロゼが駆け出す。


 ……馬鹿め。敵う筈が無い。


 たす、と筒を受け取る為差し出した手に手が置かれた。


「!?」


 驚いてそちらを見ると、部下が自分の手を思い切り握って来た。その圧力たるや、今まで感じた事の無い激痛をホークにもたらし、彼は思わず呻いて部下を見た。

 鉄仮面の奥で、見覚えのある細い目が光り、ホークはゾッとして手を掴まれたまま後退る。


「お前……!」

 

 グイと引かれ、あっと言う間に身動きを取れなくされると、ロゼット隊長が突っ込んで来た。


 ホークを捉えた男は、繰り出された斬撃をホークごとひらりとかわし、「そこまでだ!」

とロゼに対して片手を突き出して制止をかけた。

 ロゼット隊長が、顔を驚かせているのがホークには見えた。

 一斉に『鷲の団』が彼に筒の先を向けた。

 ホークを片手で易々と捕えている男は、怯えもしない。


「お? いいぜ、試しに撃ってみろよ」

「や、止めろ! 俺に当たる!!」

「なんだ。部下は信じてやらにゃ」


 そう言って、男は仮面を取った。

 ロゼはもう、声だけで判った。


「た……」

「隊長!!」

「隊長ー!!」


 ロゼがアスランを呼ぶより早く、『獅子の団』の古株たちが喜びの大声を上げて、ロゼは片手で顔を覆う。


 話が違ぇぞ、鷲野郎!!


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