それは籠めること
短いです。すみません。
バドはもう一度オバアの傍にしゃがみ込み、小さく丸まった背中を撫でた。
「すぐ戻るよ」
「ボン様……」
「オレ、訳解んねぇや。だから、知りたい。全部知りたい」
「……」
皺しわの顔を静かに泣き濡らして、オバアが震えた。バドは手を自分の服でゴシゴシ拭いてから、オバアの顔を手のひらでそっと拭った。少しだけ皺が伸びて、すぐに戻った。
「約束忘れたの?」
バドはサッとオバアから離れ、ニッと笑って見せる。
「どんな時も、ラビィで。……オレは、守ってたよ」
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サッと抜け穴へ消えて行くバドを食い入る様に見送りながら、老婆は息を震わせて両手を握り合わせた。
アスランはそんな彼女を見て、鉄格子に寄りかかる様に座った。
「俺は一軍を率いてた事もあるから、男を見る目なら自信あるぜ。……女を見る目はからっきしだけどな」
老婆はアスランの方を見て、首を項垂れた。
「大丈夫だって。簡単に死ぬタイプじゃない。泥まみれになりながら、生き残るタイプだ」
老婆がゆっくり瞬きをするのを見ながら、『あ、そうか。言葉が』とアスランは口元を軽く抑え、悔しそうに顔を歪ませた。
「言葉が通じなければ、人を慰める事も勇気づける事も出来ないなんて、悲しいな」
……否……。通じたって、ジージョの無実を証明させる言葉も、未だに孤独を恐れるアイツを安心させてやる言葉も、見つけられない。
何が人を変える? 何が人を動かす?
「ダ・グァー」
「え?」
ふいにした老婆の言葉に、アスランは顔を上げる。
老婆は温かみのある瞳を微笑ませ、胸の前でそっと皺しわの両手を重ねた。
「ミヴァン・オミャサー。ルルッシー・ワ・ダ・グァー(貴方の気持ちが、私は嬉しい。伝わりましたよ。ありがとう)」
一言も解らなかった。
それでも、アスランは頷き、微笑んだ。
「ダ。ダ。ラヴィ」
そう言って、老婆も微笑んだ。




