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蜥蜴の果実  作者: 梨鳥 
第十章
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それは籠めること

短いです。すみません。

 バドはもう一度オバアの傍にしゃがみ込み、小さく丸まった背中を撫でた。


「すぐ戻るよ」

「ボン様……」

「オレ、訳解んねぇや。だから、知りたい。全部知りたい」

「……」


 皺しわの顔を静かに泣き濡らして、オバアが震えた。バドは手を自分の服でゴシゴシ拭いてから、オバアの顔を手のひらでそっと拭った。少しだけ皺が伸びて、すぐに戻った。


「約束忘れたの?」


 バドはサッとオバアから離れ、ニッと笑って見せる。


「どんな時も、ラビィで。……オレは、守ってたよ」


―-----------------------------


 サッと抜け穴へ消えて行くバドを食い入る様に見送りながら、老婆は息を震わせて両手を握り合わせた。

 アスランはそんな彼女を見て、鉄格子に寄りかかる様に座った。


「俺は一軍を率いてた事もあるから、男を見る目なら自信あるぜ。……女を見る目はからっきしだけどな」


 老婆はアスランの方を見て、首を項垂れた。


「大丈夫だって。簡単に死ぬタイプじゃない。泥まみれになりながら、生き残るタイプだ」


 老婆がゆっくり瞬きをするのを見ながら、『あ、そうか。言葉が』とアスランは口元を軽く抑え、悔しそうに顔を歪ませた。


「言葉が通じなければ、人を慰める事も勇気づける事も出来ないなんて、悲しいな」


 ……否……。通じたって、ジージョの無実を証明させる言葉も、未だに孤独を恐れるアイツを安心させてやる言葉も、見つけられない。


 何が人を変える? 何が人を動かす?


「ダ・グァー」

「え?」


 ふいにした老婆の言葉に、アスランは顔を上げる。

 老婆は温かみのある瞳を微笑ませ、胸の前でそっと皺しわの両手を重ねた。


「ミヴァン・オミャサー。ルルッシー・ワ・ダ・グァー(貴方の気持ちが、私は嬉しい。伝わりましたよ。ありがとう)」


 一言も解らなかった。

 それでも、アスランは頷き、微笑んだ。


「ダ。ダ。ラヴィ」


 そう言って、老婆も微笑んだ。


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