表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蜥蜴の果実  作者: 梨鳥 
第十章
61/90

小さな手

 バド達は、ロゼの案内でリョクスに呆気ない程簡単に辿り着いた。

 高壁にぐるりと囲まれたかつてのリョクス一族の領地は、成程、人を捉えて置くには丁度良い塩梅の造りをしている。


「おまけに地下が穴だらけだかんなぁ、いくらでもそこにぶっこんどける」


 ロゼがリョクスの門を木陰から眺めながら言った。


「でも、抜け道もあんのさぁ」


 リョクスの付近を覆う様にある雑木林に入り込み、ロゼは一本の木の前に立った。

 なんの変哲も無い木だが、根の部分にバツ印がある。バドはしげしげとそれを見て、かつてロゼが付けた印だろうか、と推測した。


「さぁ掘れ」


 ロゼが偉そうに言って、その木の根元付近の地面をドンと踏んだ途端、地面が崩れ落ち、彼の姿が消えた。

 崩れ落ちた地面を見下ろすと、半身を土に埋もらせたロゼが、ブッと口に入った土を吐き出して、こめかみに青筋を立てている。

 バドは吹き出しながら、穴に埋まったロゼを見下ろした。


「ご苦労さん!」

「クソが、誰か使いやがったな……」


 腰に差していた剣を鞘付きのままシャベル代わりにして、ロゼは土を掘り返し始める。


 ……何か言い返して来ると思ったら


 意外にも真面目にミッションをこなそうとするロゼの姿勢に、バドも黙って穴へ降りて彼の横で土を掘った。それをジルが微笑んで見守りつつ、油断なく穴の外の見張りを請け負った。

 穴はすぐに別の穴に貫通した。


「あった!」


 バドが拳ほどの穴を掘りあてたのへ、どれどれと穴を確認する素振りで近づき、ロゼがバドの立ち位置などお構い無しにその穴の近くを思い切り蹴飛ばした。


「うおぉ!?」


 途端に足元に大穴が空いて、バドが見事に穴の下へ落ちた。ロゼが残った足場に不格好に張り付くようにして、バドを見下ろしてさも嬉しそうに笑った。


「ざまぁみろぉ!」


 この為にロゼはせっせと穴を掘ったのだと判ったバドは、穴の底から喚いた。


「この野郎! えらく真面目だと思ったら!」

「ばーか! 真面目なんてクソ喰らえ! こんな任務、正直反吐がでらぁ!」


 ロゼが土を蹴って、バドに浴びせた。

 バドは顔を真っ赤にして怒鳴った。


「降りて来やがれ! 童顔! チビ!」

「チビじゃねぇ!」


 激昂して飛び降りて来るロゼをサッとかわして、バドは土を彼に投げつけた。

 見事にロゼの横顔に命中して、今度はバドが笑い声を上げた。


「耳に土がぁ……」

「ぎゃはは、ザマミロ!」

「はい、そこまで!」


 ジルがいつの間にか降りて来て、二人の間でパンと手を叩いた。


「ア・レン様、大変良い遊び相手を見つけられましたね。しかし、今はお戯れはお控え下さい」


 ジルはそうバドに言った後、ロゼへ瞳孔の開いた目を向けた。


「ア・レン様にこれ以上の無礼、許さん」

「こっちの台詞だ」

 

 耳を小指でほじりながら、周囲の土壁を調べると、ロゼはすぐに土に埋もれた横穴を探り当てた。横穴はバド達が屈んで歩ける位の大きさだったので、彼らはそこを器用に身体を縮めて駆け抜けた。

 小柄なのを武器に、ロゼは手加減無しに進んでいく。彼の持つカンテラの灯がユラユラと揺れるのを見ながら、バドはひんやりとした息苦しさに、首にかいた汗を腕で拭った。


 本当にこんな暗くて狭い地下に押し込められているのだろうか?

 もし、この悪夢が本当なら、この穴の先で、オレは誰と再会出来るだろう?

 イヤ、再会して良いのだろうか? ……のうのうと生き延びたこんなオレが、どの面下げて?


 だが、そんな事で足を止める訳にはいかない。額から目に垂れた汗を拭い、バドはロゼを追いかける。

 すぐに行き止まりになって、またロゼが土の壁を弄る様に調べ始めた。


「人の手で埋めてある。掘れ」


 三人で土の壁を掘ると、呆気なく壁は崩れ落ちた。途端に濁った空気と悪臭が、三人を包み込む様に押し寄せ、ロゼが「うっ」と口元を抑えた。

 辿り着いたその場所は、牢獄の様な柵の中だった。

 バドはその場所に蠢くものを見つけた。それは、闇の中でポツンと座ってこちらを見ている。カンテラの薄明りの中、目が合った。その途端、バドはつんのめる様にして駆け寄った。


「オバア!」


 皺しわの手を取ると、その小ささに驚いた。バドの知っているオバアは、バドより大きかったから。


「……オバア、判るか?」


 オバアはハァ、ともフゥとも取れる音を出して、微笑んだ。


「……ボン様ぁ……」

「オバア!」


 抱きしめると、震える手で背中を撫でながら、オバアはとても小さな声で「ヤットカー(お久しぶり)、アンバどう?(ごきげんいかが?)」と言った。


オバアとオジイの言葉は、ほとんど名古屋弁です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ