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魔王はベルナルド隊に組み込まれる事になった。配置は東側の一角。といっても南から攻めてくるネスターが最も少ない一角だ。
塀の上から外を覗いた魔王はあからさまにがっかりした。
「こんな崖、誰も狙って来ねえよ……」
眼下に広がるのは、切り立った崖。足元を見ると底が知れず、身が竦む思いがする。
では頭上のリーズはといえば、崖に半分突き出すように作られたそこは他より一段低くなっていて、並び立つ塔により空は随分と狭い。
「帝都から戻ったばかりで疲れているとでも思われたのでしょうか」
隣でベルナルドも苦笑を浮かべている。
ニールは一番入り口に近いあたりに配置され、意気揚々と広場で別れた。魔王も出来ることならそちらに行きたかったが、新参者が勝手な行動を許されるはずもない。
ただでさえ、ベルナルドの隣にいるゼノから突き刺さるような視線を感じる。戦場に出るのだからと剣は返してもらえたが、「その剣をひとたびこの砦に向ければどうなるか判っているだろうな」という無言の圧力が痛い。
背後の建物の向こうからは魔物の絶叫と人々の雄たけびが聞こえる。これは圧勝だなと何もない崖を眺めているベルナルド隊は、ほっとしながらも出番のない寂しさを感じていた。
その時魔王はピリっとした違和感を感じた。
何かははっきりしないが、嫌な予感が全身を包む。それは魔王の中にある封印された魔力が何かに惹かれたからなのか、それとも単なる偶然か、魔王は塀から身を乗り出し崖を覗き見た。
暗い崖の下で何かが光ったと思った瞬間、魔王の目の前を物凄い質量と風圧が通過した。
灼熱の赤い鱗に覆われた巨体、ドラゴンだと誰かが叫んだ。




