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「魔物の数は?」
「ネスターが十五匹。子育て中のネスターを刺激したようだ。悪いことに人を食っている」
「刺激されてかリーズも現われて上空を飛んでいる」
ネスターは顔は熊のような大型の魔物で、繁殖が5年に一度群れで子育てをする家庭的な魔物だ。
子育て中は群れ全体が気が立っていて、他の魔物でさえ子育て中のネスターには近づくのを恐れている程だ。
リーズは有翼の魔物だ。
人の背に翼をつけた、というよりは蝙蝠が巨大化したといった方が近い。全身を短い褐色の毒毛に覆われ、吸い込んだ相手を麻痺させる力がある。
しかし、自ら狩りをするというより、他の魔物が獲物を捉えた後に残った血溜まりを好んだりする狡猾な魔物だ。
流石に対魔物用に作られた砦だけあり、周囲を囲む城壁から投石や炎で魔物を近付けさせていないようだが、一度何処かが破られればそれも危うい。
対リーズにマスクをつけた一団が広場を通り抜け奥の棟へと向かっていた。
ここでベルナルドがあたりを興味津々に観察している魔王に気付き頭を下げた。
「こんな事態に巻き込んですまない。マオは炊事上女たちと一緒に地下に避難していてください」
「いや、俺も戦う」
咄嗟に口から出た言葉に魔王自身も驚いた。へとへとに疲れていた筈なのに、元来の戦闘好きが何処かで開花したようだ。
「あれだけ飲み食いしたのだから当然だ」
「っし!その腕前見せてもらおうじゃないか!!」
ニールが力いっぱい背中を叩く。
多少痛かったながらも、彼の目には楽しそうな炎が踊っていた。無類の戦闘好きなようだ。
「しかし、一般人を巻き込むとは……」
「彼はこの先のサルトを一人で倒してきた勇者です。きっとこの戦いでも我々の力になってくれるでしょう」
難色を示す短い銀髪の男に、ベルナルドは大丈夫ですと説得する。
「青年、マオと言ったか……危険な任務だが、先ずは自分の身を一番に考えて戦ってくれ」
そう言って白髭のヒューグラー大佐が頭を下げられては反対できるはずもなく、他の三人もマオを受け入れざるおえなかった。




