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「何か作ってくれるそうです」
「相変わらずの人気者だな」
ニールの軽口にベルナルドは困ったような苦笑で返した。
目の間のグラスに赤いワインが注がれると、遅れてゼノが入ってきた。
ずうずうしいやつと魔王に向けられたゼノの視線は物語っていたが、魔王は知らん顔をして注がれたワインに口をつけた。
「そいえば旅をしていると言ったが、マオは何処を目指しているんだ?」
「・・・・・・魔界、魔王城を」
「魔王城ってマジかよ?!何、お前勇者とかってヤツ?」
逡巡した後答えた魔王に、三人は驚きの声をあげた。
ニールにいたっては驚きすぎてワインを零しそうになっている。
勇者と言われ魔王は眉間に皺を寄せる。
勇者というのはそう簡単に名乗れるようなものなのだろうか。グリトロールは勇者が現われたとかなんとか言っていたが・・・・・・。
「お前なんか魔界に辿りつく前に死んじまうんじゃないか?」
「ニール・・・・・・だからこんな山奥を旅していたんですね、大丈夫でしたか?」
「出身は何処だ?」
三人から質問攻めにされて、魔王は一瞬たじろいだ。
相変わらずニールの発言にはイラっとするものの、ゼノの質問に冷汗が流れる。
「この先の屋敷でサルトに食われそうになった以外は・・・・・・まぁ」
「サルトってジャルと名乗ってる黒毛のですか!?」
「ああ。たまたま寄った村で魔物退治と娘の救出を頼まれてな」
ちょうどその時厨房から、いい匂いの漂う大皿を女達持ってきた。
最初の椀にはゴロゴロと煮込まれた野菜や肉が琥珀色のスープに浮いている。続いて生野菜と焼かれた魚、雑穀のパン等が運ばれてきて机の上は一瞬で賑やかになった。
「旨そうだな」
魔王は誰よりも先に椀に手を伸ばし料理を貪った。
まともな飯は実に何日ぶりだろうか。
しかしせっかく運ばれてきた料理に手をつけているのは魔王一人で、三人は何やら驚いた顔で魔王を見ている。
「確か・・・・・・」
ベルナルドは脇に持っていた大きな鞄から紙の束を取り出すと、その中から一枚を選んで抜き出し読み上げた。
「『ニトム村北東にある、かつての領主の館に住み着いたサルト退治の依頼。ターゲットは2メートルを越す黒毛のサルト。人語を理解し、自らをジャルと名乗る。グイールを使役し、特に黒毛と赤毛の二匹は強敵である。☆3』
・・・・・・と依頼書にあるがこの事か?」
「黒毛と赤毛もいたからたぶんそいつ」
魔王はスープに浮かぶ肉の塊を頬張りながら答える。
「☆3つの依頼ってうちでも五人以上はいないときついぜ」
「一人でか?」
「まぁなんとか」
三人の反応があまりにも凄いので、そんなにすごいヤツだったのかと考えさせられる。
無闇に言わないほうが良かったかと思い始めたが、時既に遅し。特にニールは興味深深という顔を魔王に向けている。
「お前チビのくせに思った以上にやるな!」
ニールは魔王の首に腕を回し、乱暴に頭を撫でた。
慌てて魔王は講義の声を上げる。
「ちょ、止めろよ!!それに俺はチビじゃない!」
「悪い悪い」
一向に悪びれた様子のないニールだったが、魔王はどうにか手から逃れた。




