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大切な人  作者: 悠月
4/6

宣戦布告

時は少し遡り数時間前。


「うわぁ、可愛い~!」

優莉菜は目の前に綺麗に作られたデコレーションケーキを見て目を輝かせた。

ケーキは、苺はもちろん桃やキウイなど色とりどりの果物でデコレーションされていて、プロが作ったかのような出来栄えだった。

「龍ちゃんって器用だね!」

「ま、本気出せばこれくらいちょろいもんさ」

龍之介は鼻に生クリームをつけたまま自慢げに言った。

そう、ケーキは龍之介が一人で作ったのだ。

「生クリームついてるよ。・・・子供なんだから」

笑いながら優莉菜は指で拭ってあげる。

「サンキュ。お前の誕生日くらい力作作ってやろうと思ってな」

「ありがとう」

優莉菜は満面の笑みで答えた。

「でも、食べるのもったいないな~」

「何言ってんだよ。食ってくれないと作った甲斐ないだろ」

「そうだね。じゃ、早速食べよう!」

ケーキを8等分してそのうちの2切れをお皿に乗せる。

優莉菜はフォークで一口分すくって口へと運ぶ。瞬間、口中に甘い味が広がる。

「うん!めちゃくちゃ美味しい!!」

「そうか。よかった」

「いつも思ってたんだけど、龍ちゃんって創作菓子作るの上手だよね」

優莉菜の言葉に少し考える龍之介。

「そうか?・・・まぁ、考えながら作るのは好きだな。どうやったら人と違うものが作れるかとか」

「だよね!龍ちゃん、パティシエになっちゃえばいいのに」

「パティシエ?考えたことないな。俺はサラリーマンでいいよ。倒産しない限り安定してるし」

その言葉に優莉菜は溜息をつく。

「夢がないなぁ。こんなに美味しいもの作れるのにもったいないよ」

「いいんだよ。これは趣味で作ってるだけだから。それに・・・」

「それに?」

不意に言葉が途切れたので不思議に思った優莉菜は龍之介の顔を見た。

龍之介は少し顔を赤らめて視線を逸らしながら小さく呟いた。

「・・・お前との将来を考えたら、パティシエなんて職より安心だし・・・な」

その一言に優莉菜の心はぱっと温かくなった。

将来の事、考えてくれてるんだ。

「・・・ありがと、龍ちゃん」


不意に目が覚める。

懐かしい夢を見た。

これは、半年前の事。優莉菜の誕生日の時の会話だ。

なんだってこんな夢を見たんだ?

龍之介は起き上がり時計を見た。

午前7時。

今日は日曜日。

カーテンを開けると眩しいまでの朝日が照りこんできた。

その日差しに目を細める。

龍之介は昔からお菓子を作るのが好きだった。

姉が3人いるのでその影響が殆どだったが、嫌ではなかった。

最近は仕事が忙しくなっていたから全然作れなかったが、昔は暇が出来るとよく作っていた。

最後に作ったのはさっきの夢、優莉菜の誕生日の時だ。

「パティシエか・・・」

龍之介はそれもいいかもしれないと思い、出かける準備を始めた。


優莉菜は龍之介の携帯に電話をかけた。

だが、コール音が鳴るばかりで一向に出ない。仕方なく諦めた。

小さく息をつく。

「何処に行ってるんだろ」

もう一度話し合いたいのに。

その時、唐突に声を掛けられた。

「花村さん…ですよね?」

「え?」

見ると、ハッとするほど美人な女性だった。

この人は…。

優莉菜はすぐに分かった。

この間、龍之介と腕を組んでいた人だ。

「あ…はい。そうですけど…」

少し動揺した返事をしてしまう。

「いきなり呼び止めてごめんなさい。あなた、藤森さんの彼女さんよね?」

「え?」

何故この人が私のこと知ってるの??

一度も会った事ないはずなに。

優莉菜の様子にちなみは少し笑った。

「驚いてるみたいね。あたしがあなたの事知ってるのが」

当然だ。

龍之介が話したのだろうか。

「藤森さんからは何も聞いてないわよ。まぁちょっとした伝手で知ってるだけよ」

優莉菜の心を読んだかのようなタイミングで言うちなみ。

優莉菜は直感的にちなみを怖く感じた。

「あの…、それで何のご用なんですか?」

ちなみは、また笑いながら言う。

「そうね。いつかあなたに言わなくちゃって思ってた事があるの。あたし、藤森さんが好きなの」

「!」

優莉菜は一瞬目を見張ったが、先日の龍之介といたときのちなみの様子を思い出し理解した。

「なんか知ってたみたいな顔ね」

ちなみは優莉菜の様子が気に入らなかったのか、眉間にシワを寄せた。

「なんかムカつく、あんた」

「どうしてあなたにそんな言い方されないといけないんですか」

ちなみの敵意剥き出しの言い方にカチンと来た優莉菜は言い返した。

ちなみは強気な優莉菜に一瞬気圧されそうになったが、フッと口の端を引きあげて自慢気に言い放った。

「強気でいられるのも今のうちよ」

そう言って両腕を組む。

「あたし、藤森さんと寝たの。彼、すごく優しくてあたしの事愛してるって耳元で囁いてくれたわ」

その時の事を思い出したのか、ちなみはうっとりと頬を染めて目を細めた。

優莉菜は彼女が何を言っているのか分からなかった。

誰と誰が寝たって?

「あんたはフラれたのよ。あたしは藤森さんと結婚するつもりよ。だからサッサと別れてよね。じゃ、サヨナラ」

そう言い放つとちなみは去って行った。

残された優莉菜は呆然とその場で立ち尽くしていた…。



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