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窓際社員の俺にナポレオンが憑依したので、戦略で会社を帝国にします 〜営業最下位から始まる皇帝のビジネス戦争〜  作者: ズッキー
覚醒編

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【第5話】最初の勝利

午後三時。

柚留は営業車を走らせていた。


目的地は一つ。


ビューティーさくら。


信号待ちでスマホを見る。

さっきの電話がまだ信じられない。


「半分売れた……」


昨日置いた商品は―

たった10個。


それでも。

柚留の営業人生では

信じられない数字だった。


そのとき―

ナポレオンが言った。


『焦るな』


柚留は答える。


「焦りますよ」

「俺の人生で一番売れてるんです」


ナポレオンは少し笑った。


『それはお前の戦争が小さすぎただけだ』


車は商店街に入る。

店が見えてきた。


ビューティーさくら。


柚留は急いで車を止めた。


店のドアを開ける。

チリン。


店主がすぐに顔を上げた。


「あ、鈴木さん!」


柚留は少し緊張しながら聞いた。


「売れてますか?」


店主は棚を指さした。


「見て」


柚留は振り向いた。

そこにあったはずの商品。

花咲化粧品のクリーム。


棚には―

三つしか残っていない。


柚留は固まった。


「……え?」


店主は笑っている。


「朝からお客さんがね」

「これ何?って」


柚留は驚いた。


「どうして……?」


店主は言った。


「昨日あなたが作ったPOP」


柚留は思い出した。

ナポレオンに言われて作った手書きのPOP。


「利益率が高いから売りたい商品です」


正直すぎるPOPだった。


店主は笑った。


「正直なのが面白いって」

「お客さんが言うのよ」


柚留は棚を見つめた。

そのとき―

ドアが開いた。


チリン。

客が入ってくる。

若い女性だった。


店主が言う。


「いらっしゃい」


女性は棚を見る。


「あ、このクリーム」


店主が言う。


「人気なのよ」


女性は商品を手に取った。


「じゃあこれください」


柚留は息を止めた。


レジの音。

ピッ。

店主が笑った。


「はい」

「これで最後」


棚から―

最後の一つが消えた。


柚留は動けなかった。

目の前で―

完売。


営業人生で初めての瞬間だった。


ナポレオンが静かに言った。


『見たか』


柚留は小さく答える。


「はい」


ナポレオンは続ける。


『勝利とはこういうものだ』


柚留は店主に頭を下げた。


「ありがとうございます」


店主は笑った。


「追加お願いね」

「20個」


柚留は驚いた。


「20……?」


「売れるわよ」


柚留の胸が熱くなる。


外に出る。

空を見上げる。

冬の空は青かった。


ナポレオンが言う。


『覚えておけ』


柚留は聞く。


「何をです?」


ナポレオンは言った。


『勝利は伝染する』


柚留は少し笑った。


「伝染?」


『一つの勝利は』

『次の勝利を呼ぶ』


柚留は車に乗った。

ハンドルを握る。


胸の奥で何かが動いていた。


ナポレオンが言う。


『鈴木柚留』


「はい」


『次の戦場を探せ』


柚留はエンジンをかけた。


「はい」


アクセルを踏む。

営業車が走り出す。


そのとき―

柚留のスマホが震えた。


営業部のグループLINE。

メッセージが流れている。


「花咲クリーム売れた店あるらしい」

「どこの店?」


柚留は画面を見つめた。


ナポレオンが笑った。


『見ろ』


柚留は聞いた。


「何を?」


ナポレオンは言う。


『噂だ』

『噂は戦争の始まりだ』


柚留はスマホを閉じた。


まだ小さな勝利だ。

だが―

確実に何かが動き始めていた。


この日―

花咲化粧品の売れないクリームは

初めて完売した。


たった10個。


だが―

それは―

帝国の最初の勝利だった。

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