【第27話】分断せよ
帝都ビューティー 本社。
神崎玲司は資料を眺めていた。
「直販で持ちこたえています」
部下が報告する。
「卸を通さず、店舗へ直接納品しています」
神崎は静かに頷く。
「予想通りだ」
「補給線を作り直したか」
部下が言う。
「どう対処しますか?」
神崎は答えた。
「分断しろ」
「……分断?」
神崎は立ち上がる。
「物流は止められない」
「ならば」
「売り場を押さえろ」
部下の表情が変わる。
「棚を……ですか」
神崎は微笑む。
「そうだ」
「店舗は有限だ」
「棚は戦場だ」
「そこを埋めればいい」
別の資料を差し出す。
帝都ビューティーの新商品。
「類似商品を投入する」
「価格は抑える」
「露出は最大化する」
神崎は言う。
「選ばせるな」
「迷わせろ」
部下は深く頷いた。
帝国が、動く。
翌日。
コスメプラザ吉祥寺店。
店内は再び人で溢れていた。
「また売り切れ?」
「昨日買えなかったんだけど!」
熱気。
ざわめき。
柚留は段ボールを抱えて店に入る。
「持ってきました!」
相沢葵が振り向く。
「鈴木さん!」
商品を並べる。
だが——
葵の表情が少し違った。
「……他の店舗から連絡が来てます」
柚留が手を止める。
「なんて?」
葵は言った。
「商品、置けないって」
「棚が全部埋まったって」
柚留の眉が動く。
(昨日、少量だけど三店舗に回した)
(全部、断られた?)
(……一斉に?)
ナポレオンが低く言う。
『来たな』
柚留は息を吐く。
(分断か)
ナポレオンが続ける。
『敵は補給線ではなく』
『戦場を奪いに来た』
柚留は店内を見る。
人の波。
手が伸びる。
商品が消える。
(ここは売れる)
(でも——)
(ここだけじゃ、ダメだ)
柚留は言う。
「相沢さん」
葵が振り向く。
「この店、強すぎます」
「え?」
「だから」
「潰される前に分けます」
葵は理解する。
「……他の店舗に?」
柚留はうなずく。
「小さくいい」
「置ける店を探す」
「棚が空いてる場所に、刺す」
ナポレオンが言う。
『面で戦うな』
『点で刺せ』
柚留は続ける。
「大きく取れないなら」
「細かく取る」
葵は少し考え——
うなずいた。
「……それ、いけます」
「個人店とか、セレクト系なら」
柚留は笑う。
「そこです」
そのとき、店員が声を上げる。
「これ……見てください!」
スマホの画面。
帝都ビューティーの新商品。
似ている。
そして——
安い。
葵がつぶやく。
「……やってきましたね」
柚留は画面を見つめる。
(分断、そして類似商品か…)
ナポレオンが言う。
『いい』
『王道だ』
柚留は小さく笑った。
「面白い」
葵が驚く。
「え?」
柚留は言った。
「戦争ですね」
ナポレオンが言う。
『当然だ』




