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窓際社員の俺にナポレオンが憑依したので、戦略で会社を帝国にします 〜営業最下位から始まる皇帝のビジネス戦争〜  作者: ズッキー
覚醒編

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【第11話】行列の店

翌朝。


吉祥寺。

午前九時半。


店はまだ開店していない。

だが柚留はもう店の前に立っていた。


営業バッグを肩にかけている。

緊張していた。


ナポレオンが言う。


『戦場ではよくある顔だ』


柚留は苦笑する。


「緊張してる顔ですか?」


『初陣の兵士だ』


柚留は店を見る。

コスメプラザ 吉祥寺店。

昨日並べた棚。


そこにある。

花咲クリーム。

100個。


「売れるかな……」


ナポレオンが言う。


『売れる』


柚留は聞く。


「根拠は?」


ナポレオンは静かに言った。


『昨日お前は王を落とした』


そのとき。

店のシャッターが上がる音がした。


ガラガラ。


店長が出てきた。

昨日の女性だった。


黒いジャケット。

仕事モードの顔。


「おはようございます」


柚留は頭を下げた。


「おはようございます」


店長は少し驚いた顔をする。


「もう来てるんですね」


柚留は笑った。


「戦場ですから」


店長が小さく笑う。


「変わった営業ですね」


柚留は言った。


「まだ名前を聞いてませんでした」


店長は少しだけ考えた。

そして言った。


「相沢です」


柚留は復唱する。


「相沢さん」


相沢店長は腕を組んだ。


「今日は土曜日です」


「人は多い」


「でも100個は多いですよ」


柚留は棚を見る。

そこに貼ったPOP。

昨日の夜、作ったものだ。


「店長が本気で売りたいクリーム」


ナポレオンが言う。


『いい餌だ』


柚留は笑った。


そのとき。

開店時間になった。


十時。

ドアが開く。

客が入ってくる。


若い女性。

店の中を歩く。


柚留は少し離れた場所から見ていた。

客が棚の前で止まる。


花咲クリーム。


POPを見る。

数秒。


商品を手に取る。

カゴに入れる。


柚留は小さく拳を握った。

ナポレオンが言う。


『一人目だ』


相沢店長がレジで会計する。

ピッ。


最初の一個が売れた。


そのとき。

別の客が言った。


「これSNSで見たやつだ」


柚留は振り向く。

二人組の女性だった。


「正直すぎるPOPのクリーム」


「これだよね」


二人とも商品を手に取る。

カゴに入れる。


相沢店長の目が少し大きくなる。

ナポレオンが言った。


『来たな』


客は増えていく。


棚の前で止まる人。

POPを見る人。

商品を手に取る人。


レジの音。


ピッ。

ピッ。

ピッ。


相沢店長が言った。


「鈴木さん」


柚留は振り向く。

店長は言った。


「これ」


「ちょっとおかしいです」


柚留は棚を見る。

クリームが減っていた。


まだ開店から二十分。

それなのに。


30個が消えていた。


柚留の心臓が跳ねる。

ナポレオンが笑った。


『戦線突破だ』

そのとき。


店員が慌てて言った。


「店長」


相沢店長が聞く。


「どうしたの?」


店員は言った。


「外です」


相沢店長は外を見る。

そして固まった。


店の前。

そこには。

人が並んでいた。


十人。

十五人。

二十人。


柚留は外に出た。

女性たちが話している。


「ここだよ」


「SNSの店」


「クリーム売ってるって」


柚留は空を見上げた。

胸が熱くなっていた。


ナポレオンが言う。


『見ろ』


柚留は呟いた。


「はい」


ナポレオンの声が静かに響く。


『都市攻略は』

『成功だ』


柚留は店を見る。

相沢店長と目が合う。


店長は少し笑った。


「鈴木さん」


柚留は答える。


「はい」


相沢店長は言った。


「これ」

「本当に戦争ですね」


柚留も笑った。


「はい」


吉祥寺の街はまだ知らない。


この小さな行列が。

やがて―

全国の市場を揺らすことになることを。

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