5:友達
「とりあえず大きな怪我はなさそうでよかったぁ」
その後、私と彼女は保健室に行きました。
私はくだらない理由で殴られたことを知られたくなかったので、保健室の方には怪我の事情を隠して診断してもらいました。
大きな怪我はないと判断されたものの、たんこぶのようなものができていました。
ですので、頭を冷やす用の氷をもらい、保健室のベッドに2人座って休んでいました。
「私の名前はモナ・エフティフィア、ティファと呼んでください。先ほどは迷惑をおかけしました」
「私はエブハ・ラーシェリア、ラーシュでいいよ。当然ののことをしたまでさ」
互いに自己紹介をして、しばらく静かな時が流れました。
頭の痛みが引いてきたなと思った頃、彼女が私に話しかけてきました。
「どうしてティファはあの子のことを嫌ってたの?」
「え……?」
と、突拍子もないことを聞かれました。
「なんか、明らかに誰かの仇みたいに嫌ってる雰囲気を出してたからさ」
「いやいや、初対面ですし嫌うも何もないですよ、強いて言えばぶつかられてイラっときてたとかはあるかもですが」
私はそのときの自分の感情を思い返しながら冷静に答えました。
「ほんと?まぁ走ってぶつかってきたあいつが悪いんだけどさ、初対面であれだけ嫌ってる雰囲気だしてたら流石に……」
「うるさい!」
嫌なことが起きてさらにこのように立て続けに答えたくない質問をされたからでしょうか。
私の中で何かが溢れ出しました。
「あなたもあいつらと同類なんですか、そうですか。
ぶつかってきたのはあいつなのに肩を持つって言うんですか。
私はあいつらの何もかもがわからなくて怖いんです。
怖いから近寄られないように嫌うんです。
ルールがあるのに守らないし、ことあるごとに泣くし、怒るしふざけるし。
特に私が何かしたわけでもないのに怒る人もいれば泣く人だっているんです。
わかってればそうなったときに寄り添ってなんとかできるのかもしれません。
でも、わからないんです。
それがわからないと自分も傷つくし他人も傷つけてしまう。
それがほんとに嫌なんです。
傷つくのなら、傷つけてしまうのなら、誰ともいっそ関わらない方が良いでしょう……?」
涙が止まりませんでした。
ここまで私が抱えてきたものが全てこぼれ落ち空っぽになったような感覚がありました。
彼女はそんな私を抱きしめ、頭を撫でてきました。
「よーしよし。ティファは優しいんだねぇ」
「別に……そういうわけじゃ……」
それがそのときの私にできた精一杯の反論でした。
私が落ち着きを取り戻すと、彼女は私の手を握り、元気づけるように笑顔でこう言いました。
「わかった。
もしティファがわからないって言うんだったら私が教えてあげる。
傷ついて、傷つけて、気に止むことがあるんだったら私が相談に乗って一緒に解決してあげる。
そうやって苦手なことを曝け出して、互いに助け合っていくものでしょ、友達って」
あれからおおよそ6年が経ちました。
ラーシュと一緒に過ごし、様々なことを学びました。
自分とは相反する考え方、理解し難いものにも必ず何か理由があるということが今なら分かります。
変な影響をラーシュから受けてか、前よりも成績は下がりましたが、代わりに、成績には反映されることのない、けれどもとても大切なことをたくさん、たくさん学びました。
そしてその学びの意欲は外の世界の方へと自然と向かっていきました。
このようなことがあり、私は、開拓者になることを決意したのです。




