前夜戦 其の一
寒すぎる余り防寒ばっちりで続きを書いてしまう今日この日
今回はサイチの今までの戦いを振り返りつつ、全部のスキルを使ってみる長期ストーリーです。
其の一の敵は森の戦いを思い返させる彼らです。
釣り上げたクラーケンはゲソだけ美味しく頂き、俺たちは岐路に着いた。
そして着いた途端に…
「…で、背中に連れてるのが見間違いじゃなければ増えてるんだけど、詳しく教えてくれる?」
「笑って見逃してくれ」
「却下よ」
「ウェル、ここでお前の得意技使うんだぞ」
速攻でそっぽ向きやがったあの野郎。
いつも俺にやってる却下を却下しろや。
「…正直アカネから話を聞いた時は嘘だろうって思ったが」
「なぁんで眷属増えてるんですかぁぁぁぁ~~」
今俺の前にはユーラ・ファラットを含めた6人の冒険者。
俺を追い詰めた「クロガタリ」のメンバー達だ。
「でもユーラ様。本当に手を組むんですか?二人の話を信じるなら彼は元人間ですが、今は魔物ですよ」
「そーですよ…(少し幼さが抜けている)」
大柄盾使いと精神年齢メスガキが多少の警戒を入れつつ俺の事を見る。
「それに、聞いてた話だと奴隷三人と眷属三人なんですよね。一人多くないですか?」
「だから私も聞いてる。そいつ何」
ユーラが目を向ける先には…
きれいに八つに分けられた黒く首から下が白い髪
赤と青が半分ずつ移る瞳
そして何より、明らかに人に無い柔らかいように見える角
「頭首、こいつらが言ってるのは私の事ですか?」
そう、俺の横には新たな眷属改め、ゲソだけ取って眷属にしたクラーケンが居た。
名前は考えるのが怠かったので「ク」と「ン」を抜いて「ラーケ」にした。
「まぁちょい成り行きで」
「一体どんな成り行きがあったらZ級ですら苦戦する魔物を狩れるんだよ…」
「主様に常識を求める方が間違ってるぞ…釣りでオクトブロー釣ったりする人…だしな」
「何なら普通に殴って倒してましたよ…一撃で」
シンシェア姉妹の言葉に尋ねたゲージンが青ざめる。
「それだったらなんで僕たち相手にぼろ負けしてるんだい。そんな実力だったら普通に僕らを倒せるでしょう?」
「デバフガン積みしやがって良く言うわ。あんなん動ける範疇じゃないから」
ありゃ邪道だ。
「デバフってのが何かは分からないけど、今回の目的は分かってるのよね?てか、そっちから提案したのだからね?」
「分かってる。つうわけで合同訓練よろしくな」
俺は対武力国家トゥーラとの闘いの為にお互いの戦闘の仕方や相性を把握したいと共に魔物狩りをしようと提案した。
これにユーラは二つ返事で了承。
一旦帰宅しそれぞれ用意をして合流したのだ。
なおその間に俺はピクニックを挟んだ。
集合が夜だったからな。
なんでも…夜の方が魔物が多いらしい。
「夜は闇を呼ぶ時間。昼間と変わってアーカルムを守る結界の力が弱くなるのよ。その結果、魔物が多く現れるの。と言っても結界の力が弱くなるだけで一応ゴブリンやコボルト、オークやスライムは入ってくる事は無いわ」
「その代わり、A級もしくはA級以上の魔物が出やすいんだな」
「そう。王城の近くなら結界は強いんだけど流石に国境付近は弱くなるからね。だからA級以上は夜の活動を控えてもらってるわ。そして、この国のA級以上は私達以外居ない」
「ふーん。つまり」
暴れ放題か。
今俺の目の前には数多くの魔物が居る。
パペットゴーレム(A級)幻樹(A級)子悪魔(B級)動く鎧(A級)メタルキング(S級)赤竜(A級)etc…
普通の冒険者であればすぐに気絶してもおかしくない程の強力な魔物がこちらに向かって行進してくる。
「やべーなありゃ」
「何故かここら辺の魔物は全員協力してくるんだよ」
「子悪魔と動く鎧は相性が悪いのかよく戦うんですがねぇ」
あはは。マジか。
「さて、どうやらあちらも私たちの事に気づいたらしいわよ」
ユーラが言いながら見てる方向を見直すとこちらに向かって狼(なんか角生えてるし違うか?)が走ってきている。
「狩人狼牙ですね。確かA級の魔物ですが、集団で行動し連携の強さから数によってはS級になるはずです」
「詳しいわね」
「元冒険者なので…それに弓を使う関係上遠距離攻撃が当たりずらい魔物も居ますし」
フリーレが魔物の種類を当て、称賛するユーラ。
「つい最近敵対したばっかだが、今回はよろしく頼むぜ」
「えぇ。取り合えず貴方以外の実力が分からないから最初だけ眷属と奴隷…フォルテに戦って貰っても良いかしら?」
「よしイニーシャ行ってこい。ついでに爆散しとけ」
「なんか酷くないですか!?」
食事に睡眠薬入れようとしてた奴がよく言うわ。
「まぁ行きますけど…せめてもうちょっと優しく見送ってほしいなぁ…」
なんか文句を言いながらイニーシャは狩人狼牙に向かって…一歩で急接近した。
「ガルゥ!?」
「ヘドロ」
イニーシャは目の前に居た狼の口の中に腕を突っ込む。
そして時間差で狼の口から紫の液体が溢れる。
そしてその狼が口から溶けて居るのが遠くからでも視認出来る。
「うわぁ…」
「…あのユーラ様?」
「何?」
「私達必要ですかね?」
クロガタリの面々からドン引きの顔が見える。
『イニーシャ。あんまグロいやり方で倒すな』
『はーい♡』
『やっぱ爆散してこいお前』
『いやだからなんでですか!?』
念話でイニーシャに自爆命令を出しつつ俺も前に歩み出る。
なにせ…久しぶりに気分が高揚している。
ゲーマーとしての性みたいなもんだ。
俺のゲームスタイルだからな。
「敵が多けりゃクソゲーだって楽しんでやるよ」
スキル発動
「ギルタベル」で攻撃力を強化
「初級雷魔法:スパーク×15」で赤竜を攻撃
「先読み」「未来予測」「未来予知×13」による回避先に対する攻撃用意
「飛躍×12」とステータス「空中浮遊」で空に回避する赤竜を追いかける
「怨念」「死怨」「ホーミング」発動
対象の防御力とスタミナにデバフを掛けて相手を補足
「大魔導士」による多重魔法発動
スパーク、グレンレッカ、ストーンバレット、スプラットボールを10個展開
合計展開数40
「バルハラム」で魔法発射速度上昇
「そして…吹っ飛べ赤竜!!」
発動した40の魔法陣から四種の属性の魔法がドラゴンに向かって飛んで行く。
「ホーミング」の効果から逃れる事が出来るわけも無く、あえなく撃破。
「次は…」
イニーシャは狩人狼牙と幻樹と戦っている。
アルナはウェルと共にメタルキングと戦闘中。
クロガタリのメンバーは動く鎧に全員で対処している。
ラーケは一人で悪魔の仕掛け箱…と呼ばれる魔物と戦っている。
確かあいつ雑魚敵を大量生産するんじゃなかったっけ?1000体くらい同時に。
フォルテ達奴隷組はパペットゴーレム相手に善戦を行えている。
だったら…
「途中参加とは良いご身分だな…顔でも変えたか?」
「…」
恐らくアレとは別個体。
だが、図らずとも再戦となったわけだ。
「久しぶりだなアンデットキング…あの頃とは変わった俺ともう一度戦うか?」
目の前に居るのは生まれた森を思い出させる懐かしき骨の顔。
そして後ろに続く燃える包帯と燃えない包帯…大剣を携えた骨。
まるであの戦いの敵を再現したかのようだ。
だがお互いの目に映るのは…殺意。
「ギィイヤヤヤヤヤヤァァァァ!!!」
「上等!ぶっ飛ばしてやらぁ!!!」
アンデットキングの叫びと俺の大声と共に戦いは始まった。
ウォリアーゾンビが剣を構え突進してくる。
「が、遅いんだよ!」
足を滑らせるように背後に回る。
俊敏の高さと空中浮遊のコンボだ。
《確認しました。スキル「スライドムーブ」を獲得しました》
なんか新スキル手に入れたが一旦無視。
素早くインベントリを開き俺は中から木の棒を取り出し、ウォリアーに向かって振る。
ウォリアーゾンビの肩が抉れる。
かつて作った武器。だがエンチャントの仕様の関係で使用者にも見えないデメリットを持ち封印していた棘の球体。
「想像以上に仕えるかもなぁ。ゴーストモーニングスターは」
そのままもう一度インベントリから別の武器を出す。
今度はあの二種の激やばエンチャント武器だ。
「これで死に晒せや!大剣使いゾンビ!」
「無限激痛」と「確定負傷」の二つのエンチャントを持つループウィップがウォリアーゾンビの抉れた肩に深く当たる。
その一発でウォリアーゾンビは灰となり消滅した。
「まず一人!おっとあぶねぇ」
歓喜の声を上げつつ背後から撃たれた魔法を回避する。
「次はお前だ!エングール!」
炎に包まれる包帯の死体に向かって俺は突進する。
こいつはシンプルに、そして俺の原点を。
「ゾンビの基本攻撃は爪で毒を与える攻撃ってのを忘れてるぜ。お前は」
エングールの体が横向きに五等分される。
そしてエングールの進化前であるグールが突撃してくる。
「遅い!」
手に魔力を集め地面に打ち付ける。
かつて、手に入れたがそこまで使う事が無かったスキル。
「魔力波×10」がグールの体を岩の如く粉砕する。
「最後はお前だ!アンデットキング!」
「刃物速」の内包スキル「俊映」で背後に高速移動。
「狂戦士」の能力「憤怒行軍」で俊敏と攻撃にバフを乗せる。
「暗殺者」の能力「確亡」で急所を確実に攻撃する。
「場所は…首元!」
アルナの為に専用武器を作ろうとした過程で出来た「致命的なナイフ」がアンデットキングの骨の首へ刺さる。
ウォリアーゾンビと同じで灰となって消え去るときに周りのゾンビが一斉に俺に向かってくる。
「スカーフレイパ!」
広範囲に目くらまし用の砂嵐を起こす。
そして、四つ子が目を覚ます。
「さんざん待たして悪かったな!飯だぞ!お前ら!」
俺の背後から四つの黒い口が現れる。
「ニクゥゥゥゥ!!!」
「クウ!クウ!!クウ!!!」
「チニクヲアジアワセロォ!」
「ニガサナイ!」
「お前ら昼あんだけ食ってんのによく腹減るな!?」
いや呼んだ俺が言うのはダメか。
呼び出した四つの口…オオ達改め「大口食」がゾンビ達に齧り付く。
「悪いが俺は別の奴を吹っ飛ばす!から一旦分離だ!」
「ナンデモイイカラハヤククわせろぉ!」
四つの黒い口は煙から幼き四つの幼女へと変わる。
その口から狼の牙のように伸びた歯を見せながら…
とてつもない勢いでゾンビやスケルトンに齧り付く。
「さてと…なんか今までを振り返ってんのかな?」
次に俺の目の前に現れたのはかつてガントレットになった岩の塊。
「ストーンゴーレムの群れ…ね。まぁ簡単だろうけど」
俺は仮面を外す。
久しぶりに楽しめそうな戦いが明けそうな予感がする。
ああ懐かしきアンデットキング達
速攻で攻略されましたが次は一筋縄では終わりません




