食への追及 戦いの最後は
前回までのあらすじ
大口食がスキルブレイク
大口食が大暴れ
本編どうぞ
※普段の二倍ぐらい長いんだが…まぁ良いか
ユーラ達もスキルが喋った事に対して驚愕の表情を浮かべていたがそれは俺にとっても同じだ。
何故唐突に「大口食」が発動したのか。
何故喋るようになったのか。
何故意思のような物を感じるのか。
それらは全て突如発生した「スキルブレイク」に関係があると思われる。
だが何処でこんな地雷踏んだんだよ。
もしもスキルに意思が宿ったなら、その意思は恐らくスキルの能力に似た意思になると思う。
つまり今の俺は…
「ぐぉぉぉぉ!ちょっと止まれよこのスキル共ー!!」
「あぶねぇ!」
「ちょま!?」
「チニク!チノマセロ!ニクカマセロ!」
食欲を抑えられない、四つの口を持つスキルに引っ張られまくってる。
(くっそ!本当に何が起きてんだよ!?)
何がスキルブレイクだ!迷惑でしかねぇよ!
こいつら俺の事は襲わないけど、一切言う事聞かねぇし!
スキルを使い踏ん張ろうとしてもこいつらスキル自体を食って発動を無効化してきやがる!
「いい加減止まれ大口食!何でスキルに意思が宿ったかは知らんがお前らを呼び出してるの俺だぞ!」
「シラナイ!カンケイナイ!ニク!ニクヲクワセロ!」
俺の意思でのスキルの停止が不可能な状態で更に暴れまわる意思を手に入れたスキル。
そして、逃げまどい続けたリューマとゲージンは気づいて無い。
いや本来だったら気づくだろうが異常自体が故に注意が疎かになっていた。
「ニクゥゥ!!!」
「んぁ私ぃ!?」
「んな!?」
「ヤー!」
そう、必死に逃げ回り過ぎたが故にゲージンとリューマはいつの間にかヤーの近くに来過ぎてしまったのだ。
そして動かない的はただの餌食。
大口食は二人から目を離し、標的をヤーへと変えたのだ。
そして大口食は前衛職の二人から完全に興味を無くし…
その歯をヤーに食い込「ちょっと待つっす」ませなかった。
「え!?」
「は!?」
「なんで!?」
ここは神聖国アーカルムである。
俺の場合は「勇者」があるので意味が無いが通常の魔物では入る事が出来ぬように「聖魔結界」なるものが施されている。
それじゃ、なんで今俺の目の前にはナイフを構えるゴブリンが居るんだ?
いや、居ても不思議じゃない。
だってこいつは…
「久しぶりっすね。ヴェイトの別エレさん。ところで聞きたいんすけど、どうやって大口食のロックを解除したんすか?」
「ゴブ?」
「お、覚えていてくれたんすか。うれしいっすね」
かつて俺が受けた依頼「ゴブリン集落偵察」改め「ゴブリン集落殲滅」で現れた人語で喋るゴブリンこと「ゴブ」が居たのだ。
かつては殺意と言う言葉を知っているのかと思えるほどの雰囲気を晒しだしていたのに今俺の前に居るのは殺意をむき出しにした別の何かとしか思えない。
「ま、それはそれこれはこれっす。もう一度聞くっす。どうやって大口食のロックを解除したんすか」
ゴブの言ってる意味を理解する事は出来ない。だが一つ言える事が俺にはあった。
「…俺は何もやってない。発動しようともしてないし、何なら何でこうなったか分かんない程だ」
「それは本当っすか」
ゴブは驚愕の表情を浮かべながらも俺に問を返してくる。
周りの奴らは突如現れたゴブリンが人語を喋ったりするせいで完全に攻撃の手を止めていた。
だがこの中で今も動いているのは…ゴブを喰らおうとする大口食だけであった。
「「「「ニクヲクワセロォォォォォォ!!!!」」」」
「ちょっと黙るっす」
だが、大口食達は全てゴブが振り上げた片手の短剣だけで吹き飛ばされる。
そしてその後にゴブはポツリと言葉を零した。
「…まさか、星っすか?ロックを外したのは」
そして空を見上げる。それにはまるでこの状況を生み出した原因に心当たりがあるかのような行動だった。
「…星。何で大口食なんすか?彼の場合は「修理」でも「曲演歌」でも良かったハズっす」
ずっと空を見上げ言葉を続ける。まるでそこに心当たりが居るかのように、話しかけるように。
だがゴブは数秒空を見上げる行動を続け、視線を俺に向ける。
「…それが最善なんすね」
意味深な言葉を言うと同時にゴブの背後に青い煙が突如として沸く。
「は!?」
「ヴェイトの別エレさん」
ゴブが俺を呼ぶ。
「そのスキルは「消去」される事を恐れているっす。何も食せなくなり、何も満たされなくなるのを嫌うっす。それが…そのスキルを上手く扱うコツっす。ま、軽めのアドバイスとして受けといてくださいっす」
ゴブはそう言うとすぐに青い靄の中に入りそして青い靄と共に消えていった。
「…」
「「「「「「…」」」」」」
ユーラ達も含め静かな沈黙が流れる。
そして沈黙は当たり前の如く喰らわれる。
「ニクゥゥ!」
「うぉい!?」
「危ないな…」
大口食の食欲にそこは無い。
ひたすら喰らい、ひたすら飢えを満たそうとする。
大口食にとって何よりも優先すべきは飢えを満たすことだけだった
だが俺にとってはゴブが最後に呟いた言葉が頭の中で渦巻いていた。
—そのスキルは「消去」される事を恐れるっす—
プロゲーマーとしての思考が動き続ける。
「そのスキル」は「大口食」
「大口食」は「恐れる」
「恐れる」は「消去」
なら「消去」は?
最後に纏まった結果は、過去に俺に「何故こんなスキルがあるのか」と疑問を生み出させたスキルの存在。
あまりにも理不尽。自身に対して何のメリットも存在しなかった事から俺自身も忘れていたスキル。
俺は100スキルポイントを消費しそのスキルを獲得しようとした。
何故ならこのスキルを獲得した途端、俺は確実に死ぬからだ。
とゆうか周りの状況的にな、絶対死ぬし。
「おい!止まれ大口食!」
「ワタシタチハハラガヘッタ!」
「ウエガミタサレテイナイ!」
「ミタサナケレバ!」
「トマレバウエガオソウ!」
それぞれの口で丁寧に否定してくんじゃねーよ!
「あぁそうか!だったら「消滅」取っても良いよな!」
「「「「!?」」」」
「は!?」
「えあの魔物この状況で本気で言ってるんですか!?」
俺の発言は大口食だけで無くユーラ達の動きすら止めるほどの衝撃的な発言だったのだろう。
それもそうだ。
スキル「消滅」
獲得する事で獲得した者のスキルと称号と役職全てを消し去るスキル
このスキルを獲得してすぐに全てが消される
これが俺が今獲得使おうとしてるスキル。
そしてそれがゴブのアドバイスに対する「答え」
「もう一度言うぞ大口食…今すぐ止まれ。じゃなけりゃ俺もこの人生…いやゾンビ生をお前と一緒に全部捨ててやるよ」
「グゥ…」
大口食は動きを止める。
こいつは「消去」されるのを「恐れる」
つまりそこさえ押さえればこいつは…じゃじゃ馬だろうが自由自在に操れる。
「何も「喰うな」って言ったわけじゃない。俺の指示に従う行動であれば喰うのは許す」
「「「「!!」」」」
俺の言葉を聞き、大口食は俺を見る。
それは「早く命令を寄こせ」と言ってるように見え「食事をさせろ」と言ってるようにも見える。
だから俺は餓える口達に最初の指示を飛ばす。
「まず最初は、あそこの奴の杖を喰え」
俺はヤーを指さす。
それと同時にヤーの杖の上半分が喰らわれる。
「嘘でしょ!?やば!?」
ヤーの役職である「呪術者」は杖を媒体にし相手にデバフを与える。
つまりその杖が消えれば俺に付いていた大量のデバフを消し去る事が出来る。
そして次の指示を大口食に与える。
「次は俺が出した魔法を喰わずに口に貯めろ。スカーフレイパ」
俺を中心に砂嵐が起き、その砂嵐を大口食が吸い込んでいく。
そしてその奇行を眺める事しかしないユーラ達。
「あいつら何をやって…」
「さぁ…」
リューマとゲージンは何をやってるか理解が及ばない。
「ねぇどうしよう!?私何も出来ないんだけど!?」
「落ち着いてヤーちゃん」
「取り合えず警戒はしとくけどさぁ…あまり動かれると守り切れる自信無いよ僕」
ヤーは錯乱しアカネはヤーを落ち着かせフェーメは次の行動を警戒する。
だがこの中で俺の企みに気づいたのはただ一人。
「突っ立ってないで!早く倒して!」
「え?」
「ユーラ様!?」
Z級冒険者であるユーラただ一人だけだった。
だけどもう遅い。
さぁ、この戦い最後の指示だ。
「それを地面に向かって吐き出せ!」
俺はさっきよりも大きな声で大口食に指示を飛ばす。
そして指示が実行される直前、俺はユーラに向かって一言残した。
「二度と戦いたくないから予想してくんな」
砂が空中を舞う。
ユーラ達は巻き込まれる。
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謎の黒い意思を持つ靄によって吐き出された砂の煙が消える頃…
その場に人を偽る魔物の姿は何処にも無かった。
砂を煙幕にされ逃げられたのだとユーラは悟った。
「魔法を煙幕代わりにしやがってたのか…」
「うわぁ…やらかした。風魔法で飛ばせばよかったですね」
「あの私役立たずになってるんだけど!?どうしよう!?」
それぞれが反省点を述べる中、ユーラは最後に見た予知を思い出す。
それはユーラが持つ…と言うよりは世間一般的に「神託の感」と呼ばれる物だ。
そしてそこで見た光景。
砂で視界を遮り、アーカルムに逃げ込むところ
つい最近あったZ級の裏切り者と戦う人を偽る魔物
そして、トラベルテのギルドマスターの謎の言葉
トラベルテギルドマスターが「感」の中で呟いた言葉。
「あいつと同じ母国を持つ好でもあるし何よりも人を襲う気は全く無いからな」
その言葉にユーラは疑問を持つ。
何故なら、トラベルテギルドマスターが喋ってる相手はついさっきまで自身と戦っていたからだ。
(トラベルテギルドマスターも魔物の肩を持ってる?いや、なら匿わないのはおかしい。冒険者として推薦したのは放浪ハンターズだった。可能性として彼らも黒の可能性がある。でも、何故分かってて…)
ユーラの中で疑問が動き続ける。
そして最終的に下した結論は…
「アカネ」
「はい!?な、何でしょうか…」
仲間と反省会中に話掛けられおっかなびっくりした状態でアカネはユーラの話を聞こうとする。
「今からトラベルテギルドに行く。転移を用意して」
「えぇ!?そんな唐突に言われても…」
「早く」
「はい今すぐやります。だからそんな怒った顔しないでください」
ユーラは飛び立つ。トラベルテに居る一人と一団を訪ねる為に。
真実を、聞きに。
最後は見事逃走して見せたサイチでした!
ちなみに大口食は「ちゃん」だったりします
そしてゴブ再び登場!
今後も出番あったり?




