5 謁見
「陛下にご挨拶申し上げます。イザベラ・スチュアートと申します。」
ランヴァルドがチラリと見たのを感じ、イザベラは足が震えそうになった。緊張していたということもあるが、興味ないように見えたので早々に消えたいと思った。ただ、それは彼女の勘違いに過ぎない。
一方のランヴァルドは彼女が王となった自分の前で、早く引き下がろうとしているのを感じ、見た目とは裏腹に度胸のある女だと考えていた。面白い、少し意地悪してみよう、と不敵に笑う。
「そなたがかの侯爵の一人娘か。これまでは病気だったと聞いていたが、もう大丈夫なのか?あるいは、もしかして病気というのは嘘だったのかい?」
イザベラはさらに血の気の引いた顔になった。
「い、いいえ!もともとは病気でしたが、今は普通に過ごせるまで回復いたしました。これまで陛下にご挨拶できなかったこと、大変申し訳なく思います。」
慌てて否定したため、これを見た人によっては怪しくも見えるのだが、ランヴァルドは嘘をついているようには見えなかった。その代わり、場に慣れていないことが他の貴族のあげあし取りになりかねない、と考える。
「そうか、やはり病気だったか。」
ランヴァルドは周りを見渡して頷いた。
「では、今後は開かれる宴に参加するように。イザベラ嬢もきっと気に入るだろう。」
そんなことはない、と二人とも思ったが、ランヴァルドは挑戦的な表情を崩していない。
イザベラは悔しく思い、一瞬強張ったがすぐに弱弱しい笑みを浮かべて一礼した。
そしてこの陛下と気が合うことはないだろう、と確信した。