表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

第8話 幽霊の復讐者《ゴースト・リベンジャー》

喧嘩&幽霊回、中編です!

前回のあらすじ!


ひょんなこと(勇者様のセクハラ)から喧嘩してしまった、わたしと勇者様!

言い合いの最中、わたしの中になんと幽霊が入ってきてしまい…!?


果たして、勇者様は幽霊の願い(復讐)を成就させ、わたしの身体を取り戻す事が出来るのでしょうか!?



・・・あれ?この作品って、わたし(ユウナ)が主人公ですよね…?わ、わたしの扱い…!



〜〜〜〜〜


『サァ、コッチダ』


「その、復讐したい男……あんたの夫だった人……でいいんだよな?その人が今何処にいるのか分かるのか?」


『モチロンダ!奴ヘノ復讐心ヲ忘レナイヨウ、ズット監視シテイタノダカラナ!』


「えぇ…」


復讐したい程憎んでる相手をずっと監視してたって…

本当は好きなんじゃないか?その人のこと…


「でも、この辺って何日か歩かないと街とか村とか無いし…この辺りには誰も住んでないんじゃ…」


『奴ハ復讐ヲ恐レテイルノカ、隠レテ暮ラシテイルカラナ!』


「へぇ…」


まあ、恐れてはいるだろうな…。

相手は幽霊になってもバリバリ恨んでるワケだし…


「ちなみに、殺すとか言ってたけど、どうやって殺すつもりなんだ?」


話の流れでさらっと聞いてみる勇者。

何も、単なる好奇心で聞いたわけじゃない。


復讐に使う方法が分かれば、それを止める手立ても考えられるかもしれない。そう思っての事だった。


『………』


「おーい?」


何故か黙ってしまった幽霊。



『……何モ考エテイナカッタ…。』


「……………」


呆れた。

心底呆れた。


あれだけ復讐、復讐と言っておきながら、肝心の方法を何も考えていなかったって…

間抜けというか、なんというか…


…なんか、身近に似たような人がいた気もするけど……


「考えてなかったって…じゃあどうするんだ?真っ向勝負じゃ勝てそうにないんだろ?幽霊なんだから、呪い殺すとか?」


『私二ソンナ力ハ無イ!』


威張って言うことじゃないだろ。

幽霊の癖にヤケに人間臭い言動しやがって。


「本当にどうするんだ?」


『ウーム、ソウダナ……オッ?ナンダ、良イモノガアルデハナイカ!』


幽霊は、自ら(ユウナ)の身体をゴソゴソすると、懐から双剣を取り出した。

ユウナの愛用している武器である、雷の力を秘めた双剣...


『コレデ突キ刺シテ、コロシテヤロウ!』


「あー……悪ぃけど、それを殺しに使うのはやめて欲しいかな。」


『……何故ダ?』


ユウナの身体で首を傾げる幽霊。


「それ、ユウナの愛用してる大切な武器なんだ。モンスターを倒す為ならともかく、人殺しの為なんかには使って欲しくない。」


『……大切ダト?』


驚いた表情をみせる幽霊。


『何故ソンナコトガ言エルノダ?喧嘩シタ女ノ武器ナド、ドウデモ良イノデハナイカ?』


「あのなぁ…」


疑問をぶつける幽霊に対し、勇者は語る。


「確かに、俺がアホやったせいで喧嘩中だよ。でも、喧嘩したからって即嫌いになるわけじゃないだろ?俺は今でもユウナが嫌いになったわけじゃない。だから、俺にとってユウナは大切な人だし、そのユウナが大切にしてるモノもまた、俺にとって大切なモノなんだよ。」


『……………』


再び、少しの間黙る幽霊。


『……幸セ者ダナ、コノ女(ユウナ)ハ……』


「そうか?アイツ(ユウナ)は俺のこと、厄介者としか思ってなさそうだけど?いっつもクソボケ勇者様とかなんとか言ってさぁ…」


『ソウヤッテ言イ合イ出来ルダケデ、十分幸セデハナイカ…』


ホムラの言葉に対し、ボソッと呟く幽霊。


「えっ…?」


『…何デモナイ。サッサト行クゾ。』


「……………」


それ以上、幽霊は何も喋らず、ただ淡々と歩くのみだった。







ーーーーーしばらくして。



『着イタゾ。』


「着いたって、いや……家なんて何処にも無いんだけど……」


歩いていた幽霊が立ち止まった。


()()ダ。』


幽霊は、地面の葉っぱの塊に迷わず手を伸ばす。


「あっ!?」


その葉っぱの塊……いや、()()()()()()()()()()()()が、まるでマンホールの蓋のように、地面から離れる。


「こんなところに家があるのか…マジで隠れ家じゃん。」


『ヨッポド私ガ怖イラシイナ!』


そうだろうな、と心の中で呟くホムラ。


『静カニシロ!気付カレタラ厄介ダ!』


「はいはい…」


適当に返事しながらも、内心焦り気味の勇者。

結局、幽霊を止める方法が何も思い付かないままここまで来てしまった。このまま幽霊の凶行を食い止めるなんて出来るのか。

…まぁ、()()()はあるっちゃあるのだが。


『コッチダ。』


地下に広がる空間に足を踏み入れ、身長に進む幽霊。そしてホムラ。


「アンタの元夫がここの何処にいるかも分かるのか?」


『勿論ダ!監視シテイタト言ッタダロウ?奴ノ行動パターンハ完璧二把握シテイル。』


いや、監視ってそんなレベルでやってたのかよ。

やっぱり、本当は好きなんじゃないか?元夫のこと・・・


『静二シロ。イタゾ。』


一つの部屋の前で、幽霊が立ち止まる。


「ここに、お前の元夫が?」


『ウム。』


幽霊は答えると、静かに扉を開ける。



「・・・・・・」


中には、うつらうつらしている1人の老人がいた。


「アレが……お前の元夫?昔ブイブイ言わせてた魔法使い…?」


『流石二一線ハ引イタヨウダガ、未ダニ能力ハ衰エテイナイ。雰囲気デ分カル。』


小声で会話する俺たち。

というか、雰囲気で分かるんだ。やっぱ今でも好きだろ。絶対。



「・・・・・・」


老人はこちらに気付かず、こくりこくりと船を漕いでいる。


『一気ニ行クゾ』


「勝手にしろ…」


これ幸い、好機だと言わんばかりに容赦なく狙う宣言をする幽霊。

対して、勇者。何も投げやりになったわけではない。

幽霊がこれだけ警戒しているのだから、実際この老人は相当な実力者なのだろう。ならば、幽霊にそう簡単にやられるハズが無い。そう考えてのこの発言だった。


『エイゾウ、覚悟シロ…』


エイゾウというのは、恐らくこの老人・・・つまり、幽霊の元夫の名前だろう。

・・・それより。


「・・・その包丁は?」


『先程、コノ隠レ家ニアッタ物ヲ拝借シタ』


どうやら、本当にユウナの双剣は使わないでくれるらしい。

意外と義理堅いところもあるんだな。今からとんでもなく物騒な事をやろうとしているワケだけど。


『サァ、復讐ノ時ダ・・・!』


「!!」


幽霊はそう宣言すると、老人の首元に向かって包丁を振り下ろす・・・






・・・が。


「ムッ!」ドンッ!


『オッ!?』


老人は気配に気付いたのか、座っていた椅子を尻を使って思い切り後ろに飛ばす。

幽霊は思わずたじろぐ。そしてしっかり椅子を避けた。これもユウナの身体を傷付けない約束があるからだろう。かなり焦っていたように見えた。


「何奴!」


完全に覚醒したであろう老人がこちらを向き、言う。


「・・・あっ、すいません。俺、ホムラって言います。一応、復活した魔王を倒す為に旅をしている勇者で…」


「…ふむ。噂には聞いておったが、お主が勇者か。で?そちらの包丁を握りしめたお嬢さんは?」


「こちらはユウナ。俺にお供してくれてる仲間の女戦士なんですけど……ちょっと、今は訳あって幽霊に身体を乗っ取られてまして……」


事細かに説明する勇者。


「・・・・・・ユウナ、じゃと?」


「えっ?」


いや、今ユウナの名前に反応します?

そこは幽霊に身体が乗っ取られてるとか意味の分からないところに反応するべきじゃ・・・


「・・・いや、なんでもない。それより、幽霊とな?」


そうそう、そっちですよ。というか、順番がおかしいでしょうに・・・


『ソレモ、貴様ノヨク知ル幽霊ダ!』


自分の話題が出た為、口を開く幽霊。


「ワシのよく知る?人間もモンスターも大勢殺めてきたが、どなたかな?」


さらっと言ってるけど、この人とんでもない修羅場を潜ってきたんだな・・・

人間も大勢殺めたって・・・


『貴様ヲ恨ミナガラ死ンデイッタ・・・貴様ノ妻ダッタ幽霊ダ!』


「!!」


驚いたのか、目を見開く老人。


「ま、まさか・・・ユリエ!?ユリエなのか!?」


ここにきて初めて知る事実。

幽霊の名前はユリエさんだったらしい。


『ヨウヤク思イ出シタカ…!デハシンデモラオウ!』


再び、包丁を振り下ろす幽霊。


「ひいっ…!」


やはり後ろめたい気持ちがあるのか、恐怖で動けない老人。


「おい!幽霊、よせっ!!」


勿論それを傍観するワケにいかず、二者の間に飛び込もうとする俺。


包丁の先端が、老人の胸へと向かうーーーーー!

はい、いいところですが長くなってしまったので今回はここまでです。


果たしてホムラは幽霊を止められるのか、そしてユウナの身体を取り戻せるのか。

全ては次回のお楽しみです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ