第7話 仲違いと幽霊と
待っていた方がいるか分かりませんが、更新が遅くなってしまい誠に申し訳ありませんでした。
「ふぅ〜……やっと乾いてきた。」
前回、水の攻撃をモロに受けて服がビショビショになった(本人は無傷)ため、服を乾かしていたユウナ。
「もう日が傾きはじめてるし、やっぱ今日はパト村に向かって行けそうにないな。」
「あっ、勇者様。」
テントから勇者様が出てきて、そう言いました。ちなみにこの勇者様、呑気にお昼寝してました。パト村に向かうことは出来ないにしても、ちょっとでも鍛錬するとか無いんですかね…
「あーぁ。残念だな…」
「パト村に向かえない事がですか?」
「いや、ユウナが予備の服を持ってたことが。」
…プツン。
わたしの中で、何かが切れた音がした。
「な・ん・でっ!!初っ端からセクハラかますんですかっ!!この変態勇者様っ!!」ぽかぽか!
いつもの連続パンチをお見舞いする。…所詮はクソ雑魚連続パンチングですが。
「おい、待て!冗談だよ!冗談!てか、その言い口『クソボケ』より酷いだろ!!」
「酷いのは勇者様のクソボケっぷりですよ!!もう怒りました!今日は勇者様の分のご飯作りませんからね!!」
「何でそうなるんだよ!?おい!ユウナ!!」
何でそうなるんだ?
自分の言動を振り返ってくださいよ。
今日は、度重なるセクハラ発言にもう我慢がなりません。1食くらい抜いても大丈夫ですから、それで反省してください。
「さてと…」
横で必死に許しを乞う勇者様を無視して、自分の分だけ食事を作るわたし。
「でーきたっ。」
「おい!本当に俺の分無しかよ!?」
無視。
「いただきまーすっ。」
「ユウナ、せめて無視はやめてくれよ。」
無視するなって?仕方無いな…。
「…反省してるなら、先に言うことありますよね?」
「言うことって……だから、さっきのアレは冗談で…」
……このクソボケは…。
「冗談で済むならわたしは怒ってないです。」
「……やっぱ怒ってんのかよ…」
「怒ってますよ。」
むしろ怒ってないと思ってたんですか?これだからクソボケ勇者様は…
「ユウナ…」
険悪なムード。
だからわたし達は気付かなかった。
ヒュ〜、ドロドロ・・・
それが近付いてきてることに・・・
「そんな怒ることじゃないだろ?俺が変な事言うのは割といつものことで…」
「だからって何言っても良いわけじゃないですよね?」
ヒュ〜、ドロドロ・・・
「そりゃそうだけど、だからってそんなに怒ること…」
「そんな訳ないじゃないですか!わたしだって女の子ですよ!?そんなセクハラ発言繰り返されるのは嫌に決まっ……」
ドッ。
そんな音がして、わたしの中に"何か"が入ってきた。
「かはっ…」
がくん、と項垂れるわたし。
「ユウナ!?どうした!?」
言い合いしていたのも忘れて、"私"に近寄る勇者様。
「ユウナ!しっかりしろ!」
『……………ヒ。』
「……ユウナ?」
それに対して、"私"は・・・
『クヒヒヒヒ!ヨウヤク身体ヲ手ニ入レラレタ!』
「ユウ……ナ…?」
高笑いしながら、そう言った。当然、勇者様は 困惑している。
『復讐ダ!今コソ復讐ノ時ガ来タ!!』
「ゆ、ユウナ…?復讐ってお前…」
困惑しながらも、勇者は悟った。
今、目の前にいるのは、ユウナであってユウナでない。
「お前…ユウナじゃないな?ユウナに何をした!!」
『ユウナ?私ガ入リ込ンダ、コノ身体ノ事カ?』
「入り込んだ…?お前は一体……」
意外と聞き分けが良いのか、勇者の言葉に耳を傾ける"ユウナ"。
『私ハ、イワユル"ユウレイ"トイウ奴ダ!今カラ十年モ前二死ンダノダガ、今デモ現世ヲ彷徨ッテイルノダ!』
「ゆ、幽霊…?はっ?いやいや、そんなこと…」
そんなこと有り得るのか、と思いつつも、目の前で起こっている「有り得ない出来事」を鑑みるに、"ユウナ"が嘘をついているとも思えない。困惑の止まらない勇者。
…とりあえず、ユウナを返してもらう為にも、機嫌を損ねるのは良くないか。
考えた末、勇者は幽霊の言うことに耳を傾けることにした。
「幽霊、ね……なんで十年も現世で彷徨い続けてるんだ?現世に何か恨みでも?」
『ソノ通リダ!』
幽霊は語る。
『私ニハ永遠ノ愛ヲ誓ッタ男ガイタ!ダガアル時、私トソイツハ喧嘩ヲシテシマッタ!ソコデ一度、頭ヲ冷ヤス為二外二出タノダガ…ソコデ事故二遭イ、私ハ死ンデシマッタ!』
「それで、喧嘩の原因になった男の方を恨んでると?」
逆恨みじゃないか。
そう思ったが、幽霊を怒らせるワケにはいかないのでグッと抑えた。
『ソノ通リダ!奴ガ私ヲ怒ラセタリシナケレバ、私ガ家ヲ出テイク事ハ無カッタ!私ガ死ヌ事モ無カッタノダ!』
本当に逆恨みじゃねーか。
勇者は心の中で突っ込んだ。
「…それで?その身体でどうするつもりだ?」
『勿論、復讐ダ!コノ身体デ奴ヲコロス!』
「いや、その身体じゃ無理だと思うぞ・・・」
思わず、声に出して突っ込む勇者。
その身体の持ち主、女戦士を名乗りながらも、虫をも殺せぬクソ雑魚攻撃力の持ち主だからな…
『ンッ?何カ言ッタカ?』
「いや、何も…」
取り繕う勇者。「そいつ、クソ雑魚ですよ〜」なんて、言えるはずもなく。
「というか、それでユウナの身体を乗っ取る意味はあるのか…?」
『意味ハアル!奴ハ歳ヲトッタトハイエ、昔ハブイブイ言ワセテタ魔法使イダカラナ!実体ノ無イ私デハ歯ガタタナイノダ!』
えっ?今遠回しに惚気けました?
というか…だからと言って、ユウナの身体でも全く歯が立たないと思うぞ。確実に。
「意味は分かったけど…その人、そんなに凄い人なら、やっぱりユウナの身体でも無理があると思うんだけど…」
『分カッテイル!ダカラ、オ前モ手伝エ!!』
「……えっ?」
…今、なんて言った?
俺、これでも一応勇者だぞ?
その俺に、殺しを手伝えと?
いやいや。いくらなんでも、それは・・・
「……いや。ちょっとそれは、流石に…。」
『嫌ナノカ?ナラバ、コノ身体ゴト崖カラ身ヲ投ゲ…』
「うわあぁぁぁ!!分かった!手伝う!手伝うから、それだけはやめてくれ!!」
勇者とて、大切な仲間の身体を盾に取られてはどうしようもない。
それに、殺すまでしなくても憎しみを浄化させる方法が何かあるハズだ。
…こうなったら、出来るだけ事が穏便に運ぶよう努めるしかない。
『中々、聞キ分ケノ良イ奴ダ!』
クソっ……コイツ、幽霊の癖に生意気だな…
「ただ、手伝うには一つだけ条件がある。」
だが、俺とてやられっぱなしではいられない。
『……何ダ?』
「……出来るだけ、その身体を傷付ける事はしないで欲しい。…それから、全て終わったら、その身体をユウナに返してやって欲しい。」
『……二ツジャナイカ。』
……突っ込まれた。
コイツ、幽霊の癖にめざと過ぎるだろ…
『……マァ、コノ身体ヲ傷付ケルノハ、私モ良イ気持チハシナイカラナ。ソレハ守ッテヤロウ。』
「ユウナの身体を返すのもな。」
「ソッチハソンナニ必要ナノカ?」
「…はっ?」
必要なのかって……何言ってんだ、コイツ…
『ダッテオ前タチ、喧嘩シテタジャナイカ。コイツナンカイナイ方ガ良インジャナイカ?』
「っ…!」
「そんなわけないだろ!!」
『ケケッ…!?』
自分でも驚く程の大声が出ていた。
思わず幽霊もたじろぐ。
「そりゃ俺とユウナにも違うところはあるし、分かり合えなくて喧嘩することだってあるよ!!でも、それでも…!ユウナは大切な友達で、仲間なんだ!居ない方がいいなんて、そんなことある訳ないだろ!!」
『………』
思わず幽霊も黙ってしまった。
「はぁ……はぁ……」
大声でまくし立てた反動で息切れしている勇者。
『…マ、マァ、ソウダナ。ソコマデ言ウナラ、考エテオコウ…。』
「考えるだけかよ…」
その甲斐あってか、幽霊も少しだけ意思を曲げてくれたようだ。…本当に少しだけのようだが。
『考エテヤルダケ光栄二思エ!私ノ気ガ変ワラヌウチニ、サッサト行クゾ!』
「はいはい、分かったよ……」
こうして、突然ユウナの身体を乗っ取った幽霊の復讐を手伝わされる事になった勇者。
果たして、幽霊の復讐の行方は。そして、ユウナの身体を取り戻す事は出来るのか。
【to be continued・・・】
はい、久々なのにこんな回ですいませんでした。
一番古いストックがこれだったので仕方ないですね。
そして、改めて見ると導入に若干の唐突感があるので今度修正しときたいなと思います。
前話までの週1ペースとはいかずとも、また定期的に更新したいと思います。
ということで、また。