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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第九十六話 居酒屋

「楽しかったですね」


 そう、球場を去る時に莉奈が言った。


「ああ、想像より楽しかった」


 まあ、心臓痛かったけれど。最後にあんなものすごいピンチがやってくるというのはだいぶきつい。ピロ野球ファンは何回もこの心臓痛さを経験しなければならないとは……大変だな。

 いや、本当に負けなくてよかった。もし、負けていたら荒れるところだった。……野球ファンではない俺が荒れるとはいったいどういう事だという話ではあるんだが。


 そして、今は応援歌が脳内で流れて離れてくれそうにはない。別に野球に屈するつもりはないのだが。

 とはいえ今は野球に対する拒否感もないのもまた事実なんだがな。


「それで、今日帰りは外で一緒に食べる手はずになっているのですけど……それでいいですか?」

「ああ。それで構わない」


 それに莉奈ともう少し一緒にいたいわけだし。……今の時刻は十七時十分、もう十分莉奈と一緒にいたとも言えるが、まだ足りないという気持ちもある。


「じゃあ、近くにあるので行きましょう」

「おう」


 そして莉奈について行くこと十五分、居酒屋さんに着いた。


「ここなんだ……」

「ええ。そうです」


 居酒屋って二十歳以上が必要とか聞いたことがあるような内容な。……まあいっか、それは店によるもんな。


「優斗くん何頼みますか?」

「そうだな……」


 メニューを見るといろいろなものがある。ポテトから揚げコロッケカツ焼き鳥焼肉、etc……色々とある。


 多すぎて何を頼めばいいかもわからない。よく考えたら俺はあまり外食をしない派だ。だから、こういう場所で何を頼めばいいのかもわからないし、知らないのだ。


 そして小考していると莉奈が「決まらないんですか?」と訊いてきた。確かに俺は何を頼むか決まっていない。悔しいが「ああ」と肯定の言葉を発した。


「私が色々決めてもいいですか?」

「ああ。構わないけど」

「分かりました」


 と言って莉奈はすぐに店員さんを呼び、色々と頼んだ。フライドポテトや、焼きそば、軟骨などなどいろいろなものを頼んでいった。


「莉奈これ全部一人で食べるのか?」

「そんなわけないじゃないですか。優斗くんと二人で食べるんですよ」

「え? そう言うこと?」

「もちろんです! あ、でも優斗くんも他にも頼んでもいいんですからね」

「これ以上頼んだら、食べられねえよ」


 そしてまず、から揚げとポテトが来た。から揚げは皿に四つ乗っている。見た目からしてジューシーそうなから揚げだ。さらにぴ手と、カリカリで美味しそうだ。


 莉奈が「いただきます」と言ってポテトを口にくわえるのを見て、俺もポテトを食べる。塩味が効いていて、カリカリで美味しい。これなら何本でも食べられそうな感じがする。その勢いでもう数本食べる。

 だが、流石に勢いがすごかったのか、「そんなに美味しいんですか?」と莉奈ににやにやしながら言われてしまった。


 うぅ。少し恥ずかしい。


 そして軟骨とから揚げは、噛み応えが良かった。この店は当たりの店らしい。……まあ莉奈が選んだ店だから当たり前と言えば当たり前なんだが。


 そして色々と食べているいると、莉奈が話しかけてきた。


「それで優斗くん今日の野球どうですか? ハマりました?」

「ハマりましたって、お前も熱狂なファンじゃないんだろ?」

「まあ……そうですけど。でも、優斗くんがはまるのなら私も熱狂的なファンになってもいいと思ってます」

「……莉奈だったら本当に熱狂的なファンになりそうだな」


 まあ、それは俺にも言えるんだが。


「どうでしょうね。でも勝負事は見てて楽しいですからね」

「ああ」


 それは今日の試合で十分感じた。


「また行きますか?」


 球場にって事か。まあ楽しかったからもう一度行ってもいい感じだ。……もちろん莉奈とだからその選択肢がうまれるのであって、あいつ(父親)と一緒に行くのは嫌だが。


「じゃあ、それで頼む」

「分かりました!! それで今日の試合結果で何と!!! 二位になりましたよ」

「二位か……」


 六チームあると聞いた事がある。という事は、真ん中より上といった感じか。


「しかも」莉奈は付け足すように「首位と一.五ゲーム差まできたんですよ!」

「へー。ってゲーム差って?」

「まあ、勝敗の差ですね。つまりランドリーズがあと三連勝したら首位という事です」


 とは言っても、首位のラスミトンチームも三連勝したらだめなんですけどねと莉奈が付け加えて言った。


 なるほどなあ。


「もし優勝となると何年振りなんだ?」

「えっと、二十七年ぶりになりますね」


 え!?


「全然優勝してねえじゃねえか」

「そうなんですよ。だから私も熱狂的なファンになっていなかったという事なんです」

「焼きそばお待たせしました」


 その瞬間に店員さんがきた。焼きそばを届けにきてくれたらしい。


「ありがとうございます」


 目の前に置かれる焼きそばを前に、店員さんにそう言った。


「じゃあ焼きそばも食べましょうか」

「そうだな」


 そして二人で分ける。莉奈が大盛りで頼んだからか、二人で分けてもかなりの量がある。


「これで頼んでたやつは全部か?」

「多分そうだと思います」

「そうか……」


 実は俺にはまだ頼みたいものがあった。それは、ラーメンだ。


 莉奈にそのメニュー表を見せて「いいか?」と訊いた。すると莉奈が「大盛りにして私にもください」と言った。なるほど、莉奈も食べたいというわけか。


 そしてラーメンを頼み、焼きそばを食べる。うん、美味しい。塩味が効いているほか、胡椒の味も焼きそばの味を引き立たせている。美味しさに箸が止まらなくなっていると、


「そんなに美味しいんですか?」


 声の方を見ると、莉奈が微笑ましそうに見ていた。


「美味しいぞ」

「じゃあ、私もいただきますね」

「おう」


 そしてラーメンも届きラーメンも食べた。こちらもあっさりとして美味しかった。




「おいしかったですね」

「ああ、おいしかった」


 そう、空皿ばかりになったテーブルを前にして2人で言う。実際全部美味しくて、もうお腹がいっぱいだ。満足感もすごい。

 幸せだなとも思った。莉奈と外出して、昼食と夕食を一緒に食べられるのは。


「じゃあまた今度もお出かけしましょうね」

「おう」

「というのも夏だからプールに行きたいと思ってるので、その準備をしてくださいね」

「ああ、分かった」


 そして俺たちは家に帰った。

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