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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第九十話 水族館

 水族館の中に入るとまず、洗礼を受けよとでも言いたいのか巨大なサメが巨大な水槽の中で泳いでいた。見るからに恐ろしい牙がむき出しのこちらが食べられそうな感じのサメだ。


「怖そうな感じですね」

「ああ」

「もし私がサメに襲われたら優斗くんは守ってくださいね」

「どういうことだよ」


 どう考えても莉奈は俺より強いと思うんだが。

 実際俺より足が速いし、運動も出来るし。


「そのままの意味ですよ。優斗くんにはヒーローになってほしいんです。私にとっての」

「なるほどな」


 よく分からんが、意味はわかった。


「そういう事です!」


 そして俺たちはどんどん進んでいく。しかし、今日は莉奈の行動が激しいぞ? 手をつなぐことは当たり前として、カップルみたいな行動をたくさんしてくる。

 まあ、名実ともに久しぶりのお出かけだし、気持ちは分かるが。


 そして、水中のトンネルまで来た。ここは、魚たちが泳いでいる水槽の中にある透明なトンネルを歩けるという場所だ。正直いって、水族館の見どころはここだと思う。このトンネルの中では、多くの魚を見ることが出来る。それも、かなり自然に泳いでいる魚たちを、いつもと違う目線から。


「優斗くん。ここでハグしましょうか」


 莉奈がそう言ってきた。予想外だが、あくまでも言うかもしれないと思っていた言葉だ。当然莉奈はこういう雰囲気に便乗しようとする癖がある。


 そう、莉奈はこういうところがあるのだ。だが、莉奈とハグをしたいという気持ちは俺にもある。という訳で、思い切り莉奈を抱きしめた。全身で包み込むように。


「それが優斗くんの答えという訳ですか」

「ああ、そういう事だ」


 莉奈のことが好き。そこには言葉はいらない。


「優斗くん。見られてますね」

「ああ」


 周りには多くの人たちがいる。


 その視線をたどると、俺たちを見ていることはすぐにわかる。だが、莉奈が止めないように、俺にもやめる理由はない。


 前までの俺は莉奈のハグを断っていただろう。だけど、俺は莉奈の愛が永遠じゃないことも知っている。

 だからこそ俺も莉奈を愛すのだ。


 そしてハグを満喫した後、俺たちは手をつなぎ、歩いていく。その道を。


 そして、最終的にお土産コーナーに着いた。

 俺たちはそこで、クジを見つけた。


「これ買いましょう」


 それを見た瞬間莉奈は四枚そのクジを手に取った。


「多すぎだろ」

「いいじゃないですか」


 そう言って莉奈はクジを手放そうとしない。やれやれ。


「なんでそんなにとるんだよ」

「だって、あれが欲しいから」


 そう言って莉奈は超巨大ペンギンを指さした。


「それでなんで四枚なんだ?」

「だって、優斗くんと私で二回ずつ回したらいいなって思って」

「ああ、なるほど」

「じゃあ、行きましょうか」

「いや待て!」


 あぶねえ、納得しかけていた。流石にあの小さいぬいぐるみ二つはいらねえ。サイズ違いならまだしもな。


「優斗くん、あれ見てなかったんですか?」

「え?」

「ペンギンだけじゃなくて、シャチもいるんですよ」


 そう莉奈がシャチのぬいぐるみを指さした。


「なるほど」


 確かに一つずつという事なら理にかなっている。模試はずれても俺と莉奈で二種類を一つずつ分ければいい。いや、待て!!


「お前はあの大きな()()()()の大きなぬいぐるみが欲しいんだろ?」

「ふふふ、選ぶのはくじを引いた後でいいんですよ」

「なるほど、なら四つ買うか」


 理はかなってるし、それにどうせ莉奈のお金だし。


「ええ! 行きましょう!」


 てか、よく考えたら。


「莉奈待て!」

「え? 何ですか?」

「莉奈、お前強運だろ、だったら一枚で行けるんじゃないか?」

「あ、確かにそうですね。……変な問答いらなかったんですね」

「そうだな。だけど、今の会話楽しかったからいいんじゃないか?」

「そうですね!」




 だが、結局四枚でやることになった。理由は全種類欲しいからだそうだ。


 俺はいいって言ったけど、悪いからということで、俺も引くことになった。


 どうやらさっきの俺の提案のせいで(ゆうと)が引けなくなるという俺にとって自業自得の展開を嫌がったらしい。俺は別にいいんだが。

 そして俺が先に引くことになった。


「さあ、出ろ!」


 弾くならあたりを弾きたい。人間なら当たり前の思考だ。

 念を込めて一枚目を引く。


「残念賞ですね」


 一枚目は外れだったらしい。なら二枚目はどうだ? と、思い勢い良く引く。さあ、今度こそ!!


「残念賞ですね」


 その声が俺の耳に入ってくる。残酷なものだ。二枚もあったのに何も出なかった。


 そして、悲しみの中、莉奈に順番を譲った。


「莉奈」

「分かってます。優斗くんの死は無駄にしません」

「いや、俺死んでないから」


 漫画みたいな会話をした後、

 そして莉奈が引く。だが、俺には結果は見えている。


「やった。特賞です。しかも二つ!」


 でしょうね。出ないわけがない。


 店側も可哀そうだな、こんな幸運の女神みたいなやつに来られて。


「見てください! かわいいでしょ!」


 そう、巨大なお人形二人を持った莉奈が見せつけてきた。


「ああ、かわいいな。人形もお前の笑顔も」

「む、そんなこと言っても何も出ませんよ」

「それは分かってるわ。……それでそのお人形はどうするつもりだ?」

「え?」

「だって、このまま持って帰るわけには行かんだろ。だいぶ持ちにくそうだし」

「あ、そうですね」


 今にも莉奈の手から零れ落ちそうな感じがする。


「まあ仕方ねえ、一つ持ってやるよ」

「ありがとうございます。優斗くん」

「とはいえ……しんどさは変わらないわけなんだけどな」


 あくまでも、モテない状態から、持ちにくい状態に変わっただけだ。


「まあ、2人で見せつけるか」

「そうですね!」


 そして俺たちは、人形を持ちながら、莉奈の家へと向かう。水族館から莉奈の家までの距離は徒歩十五分だ。そこまで遠いわけではない。


 だが、歩いていると周りな人にじろじろ、じろじろと見られる、正直恥ずかしさを感じるシチュだが、今の俺はその視線が好ましい物へと変わっていた。


 男女二人でお人形を持ちながら歩いている。これはデート以外の何物にも見えないだろう。


 ああ、良いな。見せつけるのは。


「優斗くん。いいですね。デート。見せつけられるのって」

「莉奈も同じこと考えていたのか」

「もちろんですよ。というか……優斗くんも、その極地に至ったんですね」

「何だよその極地は」

「もちろん、イチャイチャを楽しむ極地です!」


 莉奈はそう言って俺に抱き着こうとした。


「おい! 莉奈」


 これは、崩れてしまう。

 そう思い、俺はすんでのところで、ぬいぐるみの頭をつかみ、地面に落ちるのを阻止した。


「ハグはいいけど、気をつけろよ」

「はい、分かりました」


 そう言って莉奈が済まなそうな顔をした。その顔が正直かわいくて、思わず「ふふ」と言ってしまった。


「何ですか? それ」

「いいじゃないか。かわいかったし」

「最近誉め言葉多くないですか?」

「そりゃあ、莉奈のことが好きだし」

「はあ、本当、怒って正解でした」

「別にご機嫌取りじゃないぞ」

「わかってますよ。優斗くんのそれはそんな感じの言葉じゃありませんし」

「よくわかってるじゃないか」

「あ、なんかむかつきます」


 そう言って、莉奈は可愛らしくぷいっと、向こうを向いた。その顔がまたかわいい。だが、今度はかわいいという言葉を言わずに、胸の奥にしまい込んだ。


 はあ、莉奈と会話しながら帰る。最高だな。

2万PV達成しました。

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