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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第八十五話 不和

 よし! と、決心してそして俺は彼女のところに近づき、


「松崎莉奈っていう人を知っていますか?」


 と、訊いた。


 その瞬間、彼女の顔が完全に固まった。どうやら本当に西園寺綾なようだ……まさに俺が探していた人物だ。


「なんで……その名前を?」


 彼女は恐る恐る訊いてきた。


「俺が莉奈の彼氏だからです」


 そう、まっすぐな目で答えた。もうどうとでもなってしまえという気持ちだ。


「……」


 西園寺綾は何も言葉を発しない。何を考えているんだろうか、もしかして、莉奈が話していた以上のことがあったのか?

 それとも、さっきの俺の質問の意図を今更把握したのだろうか……。俺が莉奈の彼氏だからああ訊いたということを。


「私にしませんか?」

「は?」

「莉奈ちゃんから私に乗り換えませんか?」

「……はあ?」


 まさかの堂々とした浮気勧誘だ。どこかのハニートラップかと思うくらいだ。


「なぜ、そんなことを言うんだ?」


 急すぎて全く状況がつかめない。まさかの告白だ、俺は西園寺綾を彼女の旧友、しかも今は莉奈と絶賛喧嘩中。そんな風にしか見ていない。もちろん、恋愛対象に見るわけがない。


「私が莉奈ちゃんに関してひどい目に合ったからです」

「……」

「あの子は……いつも私のそばにいたがったんです。私がしんどい時も、どんな時も。だから、私はあのこと距離を取ったんです。悪いことは言いません。あの子と離れたほうがいいです」


 そう、強く言われた。確かにそれみたいなことを莉奈に言われた。莉奈が西園寺綾に強く粘着してしまったとかそういう事を。だが、それはあくまでも中学の時の話で今の莉奈には点で関係が無い。それにいくら莉奈のことを悪く言われようと、俺は莉奈のことが好きだというその事実は一切変わることはない。


「確かにそれは事実かもしれない。だが、莉奈は成長している。確かにあいつはそう言うところがあるかもしれないが、俺はそこがあいつの、莉奈の短所とは思わない。だから、俺は莉奈と付き合ってるんだ」

「でも、いつか悪いことになるかもしれ……」「それでも別にいい!!! 莉奈は中学生の時とは、君と一緒にいた時とは違う」


 そう、強く言い返した。すると、


「私は、あなたのことを気に入っています。莉奈ちゃんよりもあなたのことを幸せにできる自信があります。……もう一度訊きます。私に乗り換えませんか?」

「俺は……」

「優斗くん!!!!!???????」


 大きな声が店内に響き渡った。そこを見ると、莉奈がいた。


「なんで……綾ちゃんといるんですか?」

「いや、これは……」

「最低です!!!」


 そして莉奈は再び店外に去って行った。俺の話をじっくりと聴く前に。俺が弁明をする前に。


「……」

「……」


 俺たちは無言で莉奈が出ていくのを見ているしかなかった。今、西園寺綾はどんな気持ちなのだろうか。

 そして周りから、「おい、修羅場だな」「え! ドラマ?」といった声が聴こえてくる。どうしてこうなってしまったんだ……。


「ほら、私に乗り換えましょう」

「黙っとけ!!」


 そして俺は、俺が食べた分の料金を机に置き、店を出た。悪いと思っていないのか?




「くそ!!」


 電話をかけたが、莉奈は電話に出ない。どうやら本当に怒っているようだ。前の俊の気持ちが分かった。冤罪で疑われるのって最悪だな。


「はあ、もう仕方ねえ」


 と、電話を別の相手にかける。


「寛人」


 どうしようもなくなった俺は、寛人にまず電話した。解決には程遠い方法だとはわかっている。だが、気を紛らわせたい。愚痴を言いたい、その思いで電話をかけた。


「おー。どうしたんだ?」


 寛人がそう明るく返した。


「莉奈と連絡がつかなっくなった。莉奈に振られた」

「……はあ???」


 当然の反応だろう。俺だってほんの五分前にはそんなこと思っていなかったのだ。


「今、浮気したと勘違いされた」

『ちょっと待て、一から説明しろ』

「ああ、俺は莉奈の中学時代の旧友に会いに行ったんだ。彼女と莉奈とは中学生時代のもめごとがあって喧嘩離れしたらしいんだ。莉奈によると。で、その莉奈の旧友、西園寺綾が俺の妹の友達の姉だったんだ」

『それは何とも』

「ああ、偶然にもほどがある。だから、俺はそこで会いに行ったンんだ。建前上は、兄弟が友達同士だから、俺たちも仲良くなるために、裏の事情としては、西園寺文がどんな人なんかを知るために。それで、ファミレスで一緒にご飯を食べていたら……」

『浮気したと思われたという訳か』

「ああ、莉奈目線で見たら、因縁のある旧友が自分の彼氏を奪ったみたいなもんだからな。それに、その女は俺に告白までしてきたし」

『告白?』

「ああ、莉奈より私の方がいいって」



『……それで……優斗はどうしたいんだ?』

「ん?」

『お前は莉奈と仲直りしたいのか?』

「そりゃあそうだろ。俺にとって莉奈は特別な存在だ」

『なら、追いかけたほうがいいんじゃないか?』

「でもどこに行ったか」

『じゃあ、莉奈の家に行ったらどうだ?』


 確かにその方法があった。莉奈の居場所が分からないのなら、莉奈が一番行きそうな場所に行くのが一番いい。莉奈のお父さんやお母さんも分かってくれるはずだ。


「よし!!」


 と、莉奈の家に向かった。莉奈の家が空いている、そんなのは分からない。だが、行かない後悔よりも行く後悔だ。すぐに電車に乗って向かった。だが、その間にもいろいろと不安な気持ちになる。


 ああ、俺はどうしたらいいんだろう、どうすればよかったんだろうと、莉奈に対して不誠実な気持ちは持っていない。もう西園寺綾に関しては全スルーだったほうが良かったのか? 

 しかし、彼女は俺に対して明らかに好意を持っていたように感じた。それは、莉奈の彼女って最初から知っていたからなのか、それとも知らなかったからなのか。


 いや、今は反省よりも次に出来る手を考えなければ。莉奈にどう説明するか、本当は俊の時みたいに西園寺綾を含めて話をしたいが、そんなことは出来ない。莉奈を彼女と合わせるわけには。

 そんなことを考えていると、電車は莉奈の家の最寄り駅に着いた。少しずつ莉奈の家に歩みを進めていく。

 莉奈の家に一人で行くのは正直言って初めてだ。今も恐怖で押しつぶされそうになる。


 恐怖に負けないように気持ちを強く持ち、莉奈の家のピンポンを押す。

 しかし、数分経っても誰も出なかった。今は誰も家にいない、その事実に築き、周りをぶらぶらとした。何も楽しくない。早く莉奈に会いたい、その気持ちでいっぱいだ。

 ああ、俺は莉奈にこんなにも好きだったのか。知らなかった。


 そして三〇分経ち、ピンポンを押す。誰も出ない。一時間後、ピンポンを押す。誰も出ない。そろそろ俺がしていることが本当に正しいのか不安になった。寛人にまた電話を掛けたいが、あまりかけすぎても迷惑かもしれない。


 俺は、もうわからな過ぎて、公園のベンチで一人座った。スマホを触る元気もない。とにかくベンチに座って時間がたつのを待った、時間が解決してくれると信じて。


「は!? 今何時だ?」


 俺は寝ていたようだ。

 周りの景色は大分オレンジ色になっていて、四時間たっていた。俺はすぐさま起き上がろうとした。しかし、すぐには起き上がれなかった。なんとなくけだるさを感じる。

 そりゃあ、四時間も寝てしまったんだから当たり前だろう。

 そして、俺は数分間かけて、何とか起き上がった。


 そして、今度こそ起き上がり、莉奈の家に向かおうとした。すると、目の前に一人の女性が立っていた。俺の知っている人だ。そして彼女は。


「……優斗くん?」


 と、話しかけてきた。

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