第八十三話 お客さん
朝、家のピンポンが鳴った。玄関に行くと、男の子が立っていた。今日来ると言っていた竜輝君だろう。
「お邪魔します」
と、礼儀正しくお辞儀をした後、由衣のもとへと走って行った。
「由衣ちゃんおはよう」
そう、竜輝君が由衣に言った。
「おはよう、竜輝君!!」
由衣も返事をし返した。
「ねえ、お兄ちゃん?」
見守っていると、由依に話しかけられた。
「何だ? 由衣」
「三人でキングカートしようよ!!」
「ああ、分かった」
そしてゲームを用意する。しっかし、早速もうゲームか。早いな。
「じゃあ、行くか」
「うん」
「はい!」
そして、ゲーム開始する。とはいえだ、俺はまだ竜輝君についてほぼ何にも知らないんだけど……。いきなりゲーム始めてよかったのか?
そして、由衣がどんどんと、前に行く。俺よりも前に。
「お兄ちゃん。弱くない?」
そしてそんな感じに煽られた。少しだけムカつくな。
「大丈夫だ、これから巻き返すから」
「本当ですか? 僕にも負けてますけど」
「っ竜輝君まで」
二人にあおられるとは。とはいえ、このまま負けるのも年長者として恥ずかしいし、本気を出すか。
「さて」
と、小声でいい、ドリフトを上手く決めて、そのままどんどんと順位を上げていく。
「お兄ちゃんやるねえ」
「まあ、これくらいはな」
そして、いよいよ竜輝君を抜かそうとするが、なかなか距離が縮まらない。竜輝君も思っていたよりもやり手なようだ。
「お兄さん、どうしたんですか? 抜かしてくださいよ」
やはり由衣の友達は由衣の友達か、すっごく煽られるんだが。
「まだ、これからだ」
と、加速アイテムを取り、一気に竜輝君を抜かす。
「やりますね、お兄さん。ですが……」
竜輝君は、すぐさま、テクニックを駆使して俺の車を抜かした。
「なかなかうまいな」
「ええ、お兄さんにも負けませんよ」
「でも私には負けてるけどね」
「いや、由衣ちゃんはすぐに抜かすよ」
「えー、本当にできるの?」
そう、煽るように言った由衣に対し、「覚悟しといてよ」と竜輝君が言い放った。どうやら敬語なのは俺にだけみたいだ。いや、友達に対しても敬語で話すような人がいていいはずはないが。
そしてそのまま順位は変わらず、由依、竜輝君、俺の順番となった。つまり俺が最下位と言うことだ。一番最年長なのになんて情けない事なんだろうか。
そして、俺は今由依に煽られている。「お兄ちゃんよわー」っと。
なんて情けないんだ、俺は……この中で一番年上なのに。とはいえだ、俺は元から由依よりも若干弱い、そのことを思えば、これくらい大したことではないだろう。うん。
次のゲームで取り返したらいいだけだもんな。と次のゲームもやった。普通に二人に負けた。
「お兄ちゃん、もっと使いやすいキャラにしたら? そのキャラ弱いんじゃないの?」
「弱くねえ」
「でも、結論として加速が高いキャラの方が強いって聞きますけど」
「あ、もしかしてお兄ちゃんハンデあげてる? 元から私の方が強いのに」
「そんなことはねえ。第一、由依、お前に手加減する意味なんてねえ」
「でも、前やってた時、そのキャラじゃなかったよね? 使ってたキャラ」
「まあ、そうだが。でも、俺はこのキャラを使いこなせるようになりてえんだ」
と、次のゲームもやった。そろそろ勝たねえと、本当にまずい。このままじゃあだめなんだよ。
そして運命の三戦目、ステージはシンプルなコースだった。このステージはこのキャラがよく刺さる。
「絶対に勝つ!!」
「やってみてくださいよ」
「ああ、分かってる」
そしてゲームは開始された。俺は、上手くテクニックを駆使しながら一気にトップに躍り出る。
「さて」
と、つぶやき、差を広げるためにどんどんと、インコース攻めをして差を広げていく。
「どうだ、これが年長者の力だ」
「へーやるねえ。でもこれはどうかな?」
と、由依が持っていたアイテムが発射される。それは、一位追尾アイテムだ。
「何だと?」
「そうだよ。お兄ちゃんふっとべー」
そう悪戯っぽい笑みを由衣がこぼした後、俺の車は派手に吹き飛んだ。
「ナイス、由衣ちゃん」
「えへへどんなもんよ」
俺の車はスピードタイプだ。逆に言えば加速がない、復帰が遅いということだ。見事に手鼻をくじかれた俺の車は、由依の車に抜かされる。
「さっきまでいきってたのはどこのお兄ちゃん?」
「由依、ムカつくなあ」
と、俺も勢いを取り戻し、上手く由依の車に追いつこうとすだが、その距離はなかなか縮まらない。それどころか、追尾アイテムに当たり、また距離が広がる。
「お兄ちゃんちゃんとやってる?」
「ちゃんとやってるわ」
「へー、本当に?」
「信用しねえな」
「その調子だと僕にも抜かされますよ」
「流石にまた最下位は嫌だ」
そして、アイテムボックスに望みを託す。するとそれは無敵アイテムだった。
「あ、お兄ちゃんいいの取ったね」
「そうだ、これで逆転してやる」
「僕より順位上なのにずるいですよ」
「ずるくねえ。運も実力の内だ」
莉奈と言うイレギュラーもいるしな。あの運の化け物が。
「さて、抜かすか」
と言ってアイテムを使う。すると、スピードが上がった。俺のマシンはもともとスピード型。つまり、最高速は他のマシンに比べて早い。そのスピードでどんどんと順位を上げていく。一つずつ、一つずつ。
そして、ついに由依の車を目に捕らえた。
「覚悟しろ、由依!!」
「お兄ちゃん、怖いって」
「うるせえ。覚悟しろ」
そして、速度を上げ、由依の車の真横に着いた。もう、無敵状態は終わっているが、そんなのは関係が無い。由依の車に全力体当たりし、由依の車を場外に吹き飛ばす。大体のスピードタイプの車は、体当たりに強いのだ。
「お兄ちゃん。レッドカード」
「そんな決まりねえから」
そう言って俺はそのまま一着でゴールした。
「どうだ。これが年長者の力だ」
「力って言われてもお兄ちゃん、アイテムの力じゃん」
「そうですよ、お兄さん」
「そうは言われてもなあ、お前だってアイテム使ってたじゃん。文句は言えねえぞ」
「そうだけどさ。お兄ちゃんが使ったのって、速くなるアイテムじゃん。それに対して私が使ったのは一位追尾アイテムだし」
「俺はまあどっちでもいいんだが」
「だからさ、次も勝ったらお兄ちゃんの実力ってことにしてあげてもいいけど」
「まあ、じゃあそれでいいよ」
「でも、お兄さんは僕にも勝ってもらわないといけませんがね」
「なんだよ、そりゃあ」
「だって、そうじゃないですか。一番じゃないと、実力は認められませんよ」
竜輝君もなかなか行ってくるな。これじゃあ、由依が二人になっただけじゃねえか。
と四ゲーム目が開始された。
「さて、俺もそろそろ本気出すか」
「何ですかその今まで本気を出していないような言い方は。僕と由衣ちゃんに対して失礼ですよ」
「お、おう。ズバズバと言うじゃねえか」
「中二病はやめてください」
「分かったよ」
くそ、調子が狂う。小学生っていうのは大体、マジレスが好きなんだよなあ。
そしてコースとしては俺の結構特異なコースだ。これなら二連勝も行けるかもしれない。早速スタートダッシュで若干失敗して六位と言う微妙な順位になってしまって、由依と竜輝君に早速煽られたが、正直序盤の順位なんて関係が無い、大事なのはこれからだ。
早速アイテムを取り、加速アイテムを三つ使い、ショートカットをして順位を二つあげた。
「やるねお兄ちゃん」
そう由依が言った。そして、竜輝君のマシンを視界にとらえる。
「よし!」
と言って、竜輝君のマシンに少しずつ近づいていく。
「これならどうですか?」
と、竜輝君は追尾アイテムを三つ防御として使用した。相手に投げれるが、防御として使ってもいいアイテムなのだ。これで、近づけば攻撃を食らうという形になる。これではそう簡単には抜かせない。
「お兄ちゃん? 竜輝君にばかり構ってたら私永遠に抜かせないよ?」
「分かってるよ」
出がここは耐久しかない。しかし、そう時間をかけてもいられないようだ。由依は完全に独走体制に入っている。ここで時間をかけたら由依の思うところになる。
「あ」
一位追尾アイテムが空を飛んでいた。これは……
「由依気をつけろよ」
「え?」
そして由依の車は吹き飛んだ。
「えー」
「ざまあみろ」
「そんなあ」
「由依ちゃん。さらにプレゼント」
と、竜輝君が由依のマシンにアイテムをぶつける。
「え? 竜輝君味方じゃないの?」
「僕は由衣ちゃんにも勝ちたいから」
そして俺はそのすきを見て、二人を抜かす。
「ええ!? お兄さん」
「お兄ちゃん!?]
「仲間割れしてるから、俺が一位になっちゃったぞ」
と、煽る。とりあえず仲間割れしてくれてよかった。2対一だと勝のが難しいしな。
そしてそのまま独走状態に入る。由依と竜輝君は悔しそうだが、そんなのは俺には関係が無い。逆に煽られまくったから気持ちいくらいだ。こんなことを言ったらクズみたいになるかもしれないが。
「早く俺に追いつけよ二人とも」
「ムカつきます」
「ムカつく」
二人ともイラついてるようだ。普通に気持ちがいいな。煽られる側から煽る側に回るのって。
そして俺はそのまま三周目に入った。もうここまできたら逃げ切れるとは思うが、まだ少し心配だ。この距離では追尾アイテムを食らったら、二位に転落しそうだ。もう由依にあおられるのは嫌だ。まあ、今二位にいるのは竜輝君だが。
そして、ショートカットの方へと車を進める。そこは、成功したら結構引き離せるが、難易度が高い。もちろん失敗したら二位転落ところか、上位争いにも食い込めなくなるだろう。
成功させなくてはならない。その思いが俺の心臓の鼓動を早くさせる。今だけ少し静まってくれと思うが、そんな優しいものではない。
そしてその時は来た。俺は、車をジャンプ台へと乗せ、数回ジャンプする。ここでもミスったら一巻の終わりだ。だが、上手くいった。後は、最後の大ジャンプ台に乗って、上手く精気コースに車を戻すだけだ。
だが、それすらも簡単なことではない、結構なカーブが必要だし、着地地点はそこまで広くないからだ。
俺は神に祈りながら、静かに着地した。そしてそのまま車は何事もなかったかのように進んでいく。どうやら成功したようだ。
「お兄ちゃん、すご!!」
と、由依hが驚く顔をする。そして竜輝君も、「正直なめていました」などと言う。気持ちがいい。
「でも……」
竜輝君が静かに、
「お兄さん、気を付けたほうがいいですよ?」
と言った。その瞬間、一位追尾アイテムが俺の車を吹き飛ばす。俺の考えでは竜輝君との距離が若干空いてるから大丈夫だろうというものだが、果たしてどうか。
「よし!!!」
結局俺が一着でゴールした。
「負けましたよ」
そう竜輝君が清々しい顔で言う。負けを認めるなんて大人だな。そして次は二人共別のゲームに興味を持ったらしく、そのゲームをした。そして五時間くらい遊んだ後、
ピンポンと言う音が鳴った。
「お姉ちゃんかな」
と、竜輝君が言って、走って行った。
「あ、お姉ちゃん」
と竜輝君が言った。そこにはピンク色の長い髪の毛を持つ、目がばっちりとした女の子が来た。年は俺と同じか一個上くらいだろう。
彼女は俺の顔をじっと見たのち、
「弟から話は聞いています。あなたが由依ちゃんのお兄さんの優斗さんですよね」
「はい、そうです」
「思っていたよりもイケメンですね」
ん? 俺を口説こうとしてる? いやいや、ただの俺の巻近いだろう。それに俺には莉奈がいるしな。
「じゃあ、竜輝帰ろっか」
「えー。まだいたーい」
「だめよ、そろそろ夜ご飯になっちゃうから」
「えーお姉ちゃん」
「だめよ」
「えー」
「だめよ」
竜輝君は粘っているが、お姉さんも全く怯んでいない。
「分かった」
そしてついに諦めたようだ。
「あ、そうだ」
と、彼女が言って、俺のもとにメッセージアプリを開いたスマホを手渡した。
「せっかくなので交換しませんか?」
「ああ。分かった」
そして、交換する。由依の友達の家の連絡先は大事だ。
「ありがとうございます」
そして、俺もスマホを取り出し、QRコードを読み取る。
そして俺のところに友達が追加された。名前は綾だそうだ。綾? 流石に別人だよな……住んでる場所は違うはずだし。
「あの、苗字は何ですか?」
「ああ、苗字は……西園寺ですよ。西園寺綾です」
……俺は、思わぬところで要注意人物と合ってしまったようだ。
ついに来ましたね




