第七十九話 ファミレス2
「……おい、由依」
「えー聞かせてよ。せっかく二人そろってるしさあ」
「……ファミレスに来て話すことか?」
「いいじゃないですか、優斗くん」
「なんでお前まで乗り気なんだよ」
「私は誰の味方でもありません。私の欲望の味方です」
「……分かったよ」
と、息を一息吸い込み、
「話すぞ」
と、由依に言い放った。すると由衣はテーブルに顔を支える感じで腕を置いて、話を聴こうとする。
「まず何から話す? 現実的なやつで」
莉奈に訊く。ああは言ったものの何を話すかは決まっていない。
「そうですね、あれとかどうですか? 学校でのハグとか」
「やめろ、それはハードル高けえ」
「じゃあ、なにならいいんですか?」
「うーん。二人でゲームした話とか?」
「それは、イチャイチャ度が足りないじゃないですか」
「ええー」
どうすりゃいいんだよ。
「じゃあもう勝手に話しますね」
「おい莉奈!」
「これは、先週の水曜日の話です」
莉奈は俺の言うことを聞かず、勝手に話し始めた。
「それは……きついって」
流石にこのままあの話をさせるわけには行かないので、止めようとする。
「いいじゃん、お兄ちゃん、聞かせてよ」
「だめだ」
「大丈夫です。私が無理やり話しますから」
「はあ、だめだ。こいつら」
と俺がため息をついている間に莉奈が話をし始めた。もう諦めたよ。
「水曜日、私と優斗くんは家に一緒にいたんです。すると、優斗くんがいきなり、私をだきし得てきたんです。それで私ドキドキして優斗くんに好きですって言って。その時の優斗くんの返事が『おう』だったんです。最高じゃないですか?」
なんか変な感じに話してない? 莉奈さん?
普通に本人の前で話す話じゃねえ。普通にこれ拷問だろ。
「お兄ちゃん。さっすがー」
「いや、なんかそれっぽく話してたけど。その前に莉奈が抱きしめてほしいジェスチャーしてたぞ」
「え? そんなのしてましたっけ」
「とぼけんな。これだと俺が一方的にイチャイチャしてるみたいじゃん」
「そうだ!」
由衣が机に手を置き、俺の方に顔を向け、
「私にもやってよそれ」
「はあ?」
由依からまさかのことを言われた。
「いや、そうはいってもだな。無理だろ」
「えー莉奈ちゃんにはやったんでしょ? じゃあ、私にやったらだめっていう道理はないじゃん」
「そうだが」
流石に無理だ。しかも忘れてるかもしれんが、ここファミレスだぞ。
「……あとでな」
「そんなこと言って、今やってよ」
「私もやってほしいです」
「あ! 莉奈お前まで」
「やーれ! やーれ! やーれ!」
なんかコール言い始めたんだけど。これやらなきゃならない形? なんか無理なんだが。ここファミレスだぞ。
「じゃあ、やって!」
「……ああ」
と、由依を軽く抱きしめて。
「好きだ」
そう、出来るだけかっこよさそうに言う。これシスコンとか思われてないかな? 大丈夫かな?
「莉奈、由依、これでいいか?」
「うん!」
「はい!」
満足のようだ。
はあ、ファミレスだぞここ。
「か、カルボナーラで……す」
店員さんが困惑した様子でカルボナーラを届けに来てくれた。そうだった、由衣が頼んだんだった。
「ありがとうございます。そこに置いといてください」
と、由衣に対する抱きしめを解除し、丁寧に店員さんに言う。絶対やべえやつだと思われたじゃねえか。はあ、しんど。
「じゃあ、食べるねー」
「ああ、食べろ」
疲れた。
「もう一回膝枕します?」
「ああ、頼むわ。もう寝たい」
「ふふ、いいですよ」
と、膝に頭をのせる。はあ、いい感じのの寝心地だ。
「お兄ちゃん? お兄ちゃん?」
「優斗くん、起きてください」
その声で目覚める。
「もうお兄ちゃん。どんだけ寝てるの?」
「え?」
「もう三〇分寝てましたよ」
「え? そんなに? なんかすまん」
「いえ、いいですよ。私のおひざが気持ちいいことの証明になりますし」
「あ、ああ」
「それで私結構莉奈ちゃんと話したんだー」
「ほう、そうか……て、変なこと話してないよな。お互い」
さっきの件があったから心配なんだが。
「大丈夫ですよ。たぶん」
「大丈夫! おそらくね」
うん。大丈夫ではないな。
「別に言ったことと言えば、優斗くんと一緒にお風呂に入ったことくらいですかね」
「それは一番言ったら駄目なやつだろ」
妹の前でさ。
「でも、私莉奈ちゃんが泊まった時に一緒にお風呂に入ってたの知ってるし、別に良いじゃん」
「莉奈……てことはお前の家での話か?」
「もちろんです」
「……」
「嫌わないでくださいよ!」
「……これは嫌う嫌わないの問題じゃねえだろ。というわけで由依、記憶から消せ!」
と、由依の頭を軽く押しつぶすように、両側から力を入れる。
「消さないよ。こんな楽しそうな話」
「俺に味方はいないのか……」
この二人を会わせるべきではなかった。まあ今更悔やんでも、これはもう必然としか思えないが。
「お兄ちゃん、食べなよ」
「え?」
そんな暗い顔をしてた俺に由依が言った。
「言うの忘れてたけど、これお兄ちゃんの為に取って置いたから」
「ありがとう」
と皿に置かれてた一口二口程度の量のパスタを食べる。
「美味しいな」
「でしょ!」
「ああ、美味しい」
そしてそんなで俺たちはファミレスを後にした。




