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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第七十七話 植物園

「由衣。ちょっとすまん」


 二人で山の近くの動物園にいるときに、莉奈からメールが来たので、由衣に一言謝ってからメールを見た。

 そこには(今から会えませんか?)と書いていた。

 流石に今は無理だ。そう思い(今は由衣といるからダメだ)と断りのメールを入れる。




「……だめ……かー」


 莉奈はそう言って、ベッドに寝転がる。


「会いたかったなあ」


 そう思った。すると涙が出てきた。

 (やっぱり私は依存しているなあ)

 そう莉奈は思った。


 夏休み、いつでも優斗と遊べると思っていたのだが、逆に言えば一日一回は合えるというのがなくなる。

「あ、そうだ」

 と、呟き、例のカラオケ音声を流した。

 優斗の声を聴いて少しだけ、会いたい気持ちが安らいだ。でも、なんだか違う。

 この感覚はいわゆる推しに対する感覚とは違うと、莉奈は思う。

 とはいえ莉奈は推しに対する感情などは全く分からないのだが。

 合いたいのに会えないのがこんなにつらいとは全く思っていなかった。そりゃあ優斗の予定があるのだから仕方ないのだが。


 そんなことを思っていたら、家にいるのもつらくなってきたので、莉奈は荷物をまとめて外に出る。

 せめて、外で遊んで気を紛らわせよう。そう思い、近くの植物園に行った。


 植物園に行くことはほとんどないのだが、今度優斗と行きたいと思ってたところだ。そこの下見にもちょうどいい。


 植物園までは莉奈の家の最寄り駅から電車で一〇分の距離だ。イヤホンで優斗の歌を聴きながら電車に揺られる。


 そして、電車を降り、歩いて植物園に向かっていく。駅から20分ほど歩く必要はあるが、散歩で気分がまぎれたらいいなと言う気持ちだった。

 歩く事二十分。ついに植物園に着いた。入場料は一〇〇円ほど、良心的な値段設定だ。

 中へと入っていく。すると、きれいな植物があった。これが私の心を癒してくれると嬉しいなと思いながら莉奈はその植物をじっくりと見る。


 だが、そんなに簡単な話ではなかった。

 十五分後、また莉奈はつらい気持ちを思い出した。これじゃあだめなのに。依存したら駄目なのに。


「これじゃあ、優斗君にもメンヘラって言われちゃうよ」


 そう呟き、そばのベンチに座った。


 家にいるよりはましだとは思っている。でも、暇で辛くてたまらない。

 愛するということは諸刃の剣なんだなと思った。


「なにしてるんだ? ここで」


 寛人に話しかけられた。


「……」

「あれ、優斗は?」

「……いないんです」


 莉奈はあまりそのことを口にしたくなかった。それによって今の辛い現実を直視しなければならないからだ。


「優斗くんは妹さんと一緒に遊んでいて、それで今日は私一人なんです」

「そうか。優斗のやつ……」

「優斗くんは悪くないんですよ。ただ妹さんと遊んでいるだけですから。今私が落ち込んでしまっているのは、妹さんがうらやましいと思う反面、優斗くんといたいっていう気持ちが大きくなって、どうしようもないんですよ。私って、何なんでしょうね。優斗くんがいないとこんなに何もできないなんて」


「……それが普通なんじゃねえか? むしろそれくらい好きっていう事だからいいだろそれは」

「……」

「だからさ、優斗がいなくても楽しめることしようぜ。そのためにここの生きたんだろ、松崎さんは」

「……そうですね。と言うかなんでここにいたんですか? 大貫さんは」

「ああ、俺は単にここに来たかったという訳だ。そうだ、今彰人も来てるんだ。一緒に見るか?」

「いいんですか?」

「ああ」

「……これ浮気になりませんよね」


 優斗の友達といえ、男子と一緒に回ること自体ダメなことなんじゃないかと不安な気持ちで訊いた。

「なるわけねえだろ。それに、一対二だからそもそもデートとか呼べないしな」

「わかりました!!」


 そして莉奈は寛人の後ろをついて行く。すると、そこには、


「あ、なんで松崎さんがいるんだよ」


 彰人がいて、不思議に思っていそうな顔でそう言った。


「もしかして、不倫?」

「違いますよ!」


 と、莉奈が即座に否定した。


「じゃあ、なんで?」

「こいつが優斗と一緒に入れなくて悲しんでいるところをたまたま見かけたからな、連れてきたという訳だ」

「なるほどな」

「そう言う訳です」


 と、そのまま三人で見回る。


「なんで、ウエハラさんはここに来ようと思ったんですか?」

「そりゃあ、植物を見るためだろ」

「それはそうなんですけど、少し意外だなって思って」

「意外?」

「ええ」

「ちょっと待て」


 彰人が気づいたそぶりを見せ、


「俺はいつもゲームしてるわけじゃないぞ」


 と、強い口調で言い放った。


「思ってませんよ。まあ、結構してるとは思いますけどね」

「おい!」


 彰人が「否定しないのかよ」と言いたげな感じでツッコむ。


「まあそれは置いといて、」


 寛人がずれた話を戻そうと、声を発す。


「俺が彰人を誘ったんだ。こいつ、めんどくせえ、なんで行かなきゃなんねえんだよ。みたいなことを言っていたけど」

「でも結構じっくり見てますよね」


 何なら一番しっかりと見ているかもしれない。莉奈はそう思った。


「うるせえ、別にいいだろ」

「そう言えば優斗君は誘わなかったんですか?」

「いや、昨日の感じだと二人で遊ぶんかなと思ったから」

「まあ、妹さんにとられましたけどね」


 そして莉奈は少し暗い気持ちになり、暗い表情を見せる。


「まあそりゃあ仕方ないよな。妹だもん」

「ああ、私妹に生まれたかった」

「落ち着け、それだと優斗と付き合えねえぞ」

「確かにそうでした」


 落ち着きを取り戻した莉奈は自分が言ったことを後悔した。


「まあ、でも寂しかったということは言ってもいいんじゃねえか? そしたら優斗のやつもっとかまってくれると思うぜ」

「でも、愛が重いなんて言われたらいやですし」

「思われてもいいじゃねえか。それにそんなんで嫌うやつじゃねえと思うし」

「そうですよね」


 と、瞬間少しだけ元気を取り戻した莉奈は、


「じゃあ、次の場所行きましょう!」


 と、駆けて行った。それを見て、彰人と寛人は顔を見合わせて、


「元気すぎるだろ」

「いつもの松崎さんだな」


 と言った。


 そして一時間立ち、入り口に帰ってきた。


「はー楽しかったです」

「それは良かったな」

「優斗くんと一緒じゃなくても案外楽しめるものなんですね」

「そうらしいな」


 と、莉奈の表情をしっかりと見ながら、寛人が言った。


「俺も楽しかったよ。男二人だと華がなかったしな」

「おい、彰人」

「へへ」


「じゃあ、ここで」

「ああ。またな」


 そして莉奈は帰路に着く。今日優斗と会えなかった悲しみを乗り越えて。






「え? 優斗……くん?」


 駅に優斗がいた。

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