第七十二話 莉奈の過去
「……私と綾ちゃんは中学の同級生で仲良しでした。それはもう、休み時間はずっといたくらいです。でも……それがいけなかったんです。
私と彼女の価値観は違ってました。私は友達とはずっと一緒にいるものだと思っていたのですが、綾ちゃんは私とずっとは一緒にいたくなくて、その……なんか日本語おかしいですけど、とりあえず。私は彼女を親友だと思ってました。でも彼女は私のことを友達としか思ってなかったんです」
それからも莉奈は色々な話をしてくれた。それをまとめると、莉奈が他の人と遊ぶ彼女に嫉妬して、家に押しかけたらしい。
その時は帰ってと言われて帰ったらしい。ただ、だんだんと莉奈の行動がエスカレートして、ストーカーのようなものになったらしい。
そこで喧嘩が起きたという話だ。喧嘩の理由は確かに莉奈が全て悪かった。たぶん西園寺綾が危険人物だからという理由ではなく、ただ単に莉奈が彼女に会ったときに気持ち的にどうしようもないからだろう。だから会わせないでくれと言ったのだ。
「それで結局メンヘラとか言われて、もうどうしようもなくて不登校になったんです。ただ単に会いたくないから。それで勉強も出来なくなって、週一くらいで行く学校では小説を読んで。それで……高校に入って心機一転しようと思ってもメンヘラという言葉が私に響いて、友達作ろうと思っても嫌われるのが嫌で、友達を作らなくて、でも孤独が嫌だから小説を読んで気を紛らわしたりして。
そんな時に優斗君に一目惚れしたんです。本当は私が優斗君を好きになったタイミングは入学式じゃないんです。むしろ一目惚れじゃなくて、大貫さんと話している優斗君を段々と好きになってきて、ああ、この人好きだなって感じて……
でも告白したらこの人を私のメンヘラに巻き込んでしまうって思って、出来なくて、体操服一日だけ盗んだりとか、家を特定したりしてました。本当はその時、私やっちゃってるなと思ったんですけど、でも我慢できなくて……こんな私嫌ですよね……だから隠しておこうと思ったんです……」
莉奈は自分を責めている。それと同様に俺もある言葉を思い出した。確か、俺は前に莉奈に対してお前メンヘラとかじゃないだろうなとか言ってた気がする。もし本当に行っていたとしたら、悪い気がする。
莉奈のトラウマに知らぬ間に足を踏み入れてたかもしれない。そう思うと俺はなんて最低なんだ。
「優斗くん、こんな私でも好きでいてくれますか?」
「いるに決まってんだろ!! お前のことがこんなことで嫌いになるようなやつだったら、看病しに来ないだろ。それに、お前、メンヘラ言っても、嫉妬しただけだろ。別に嫉妬するんならしたらいいじゃねえか。それに俺は、浮気なんてするつもりはない。お前にそんな嫉妬させないから大丈夫だ」
「……優斗くん」
「だから、安心して俺のこと愛してくれ」
「わかりました」
莉奈が俺のことを抱きしめようとしてくる。俺はそれを間一髪のところでよける。
「なんでですか?」
「当たり前だろ!!」
そして、そのまま次の莉奈の話が始まった。それは、なぜ告白しようとしたかと言う話だった。
「私は、二年生に上がったタイミングで思ったんです。優斗くんを愛したいって。他の人に渡したくないって。それもある意味嫉妬なんでしょうかね。
でも、手紙を渡すのに数日迷いました。当時の私は私を嫌いでしたから。だから、でも、だからこそ告白を受けてくれたことが嬉しかったんです。
そこから数日間は軽く暴走してた事はわかってました。お風呂に無理やり入ったりとか、私勇気あるなと思いましたし、これで嫌われたらどうしようと思ってました。でも、優斗君が、それを受け入れてくれて、そんなことがあってもなお、そばに置いて、しかもこんな事を言ってくれる。うれしいんです。私、優斗君に出会えて」
「莉奈……俺もだ。確かにあの時は困惑したし、あんなことやらないでくれと思ったが、今となれば、俺をこんなに愛してくれて嬉しいと言う感じだ。そもそも、俺と付き合ってからの莉奈はそこまで嫉妬してると言う感じはなかったし、もう大丈夫だ」
「ありがとうございます」
「それで、もしその西園寺綾にあったらどうするつもりなんだ?」
「え? ……」
まあ答えられないのも無理もない。莉奈にとってはトラウマなんだろうからな。
「私は……」
そのまま莉奈は考えるそぶりをする。まあ、やはり会いたくはないんだな。ふむ、困った。
「会いたいわけではないですけど、会いたくないというのも嘘になってしまいます。嫌いではないので」
まあ、もともと友達だったわけだしな。
「でも、もしあったら私たぶん吐きます」
「なんでだ?」
「前にそういう事があったんです。綾ちゃんとたまたま会ってそれで吐いてしまったことが」
「なるほど」
じゃあ会わない方がいいのか?
「でも、謝ったほうがいいと思うんです、やっぱりそう言う行為をしてしまったのは事実なので」
「いや……」
「?」
「謝らなくてもいいんじゃないのか? だって所詮中学校の出来ことだろ? そんなン気にして直いだろ」
「でも、気にしてたらって思ったら」
「それはその時だろ。無理して会う必要なんてねえ」
「うん」
そしてそのまま莉奈を介護した。看病とは言え、莉奈はすぐに寝てしまったので、そのまま俺は莉奈の両親が帰ったのを契機に家に帰った。
そして、俺も風邪をひいてしまった。
とはいえ、微熱だったおかげで一日で治ったのだが。




