第六十九話 西園寺綾
あの後、必死で、西園寺綾の情報を探してみた。しかし、案の定見つからなかった。まあそれも当然だろう。今の時代、プライバシー守備とか何とかで、人の情報など出てくるわけがない。
まあそりゃあSNSを実名でやってる人とかなら見つけられるだろうが、そんな感じもなかった。
莉奈のお父さんにもう一度聞いてもいいのだが、なんとなくそれは嫌だった。莉奈の過去を詮索してるみたいに思われそうで。
だから、莉奈に聞くことにした。もちろん西園寺綾の情報を伏せてだ。
もちろん莉奈に嫌がられるかもしれない。そのことは承知の上でだ。まあ莉奈が俺を嫌うとは考えられないのだが。
まあそれはともかくだ。次の日に莉奈に聞くことにした。
「そういや、莉奈お前中学校はどこだったんだ?」
昼休み……意を決して莉奈に聞いた。正直あんなことを言ったが、正直言って怖かった。莉奈に変に思われるかもしれないという事、嫌われるかもしれないことが。だが、知らなければ次に進めない。その一心だ。
「……優斗くんはやっぱり私の過去に興味があったりするんですか?」
失敗した。莉奈の返答を聞いてそう感じた。
莉奈は気づいてしまったのだ。莉奈の過去に対して興味があるということを。
俺としては聞いた理由としては、もちろん、莉奈を西園寺綾と言う謎の女から守るためだ。だが、莉奈の過去を聞きたいわけじゃないとは言い切れないのが弱いところだ。
という訳で、しばしの沈黙が流れた。だが、俺はわかっている、この沈黙が長引けば長引くほど、不利になっていくということを。それを避けるためには早く言うしかない。早く言葉を発するしかない。
「そう言うわけじゃないんだ……ただ、莉奈って遠くから来てるじゃないか。だからさあ、中学校は地元だったのかどうか知りたかっただけだ」
根っからの嘘だ。だが、信じてもらえたら嬉しい。
「そうですか……ならまず優斗くんの中学を教えてください」
「なんで?」
「そりゃあ私の中学を話すんなら優斗くんの中学も知らなきゃ大東じゃないでしょう」
「ああ、そう言う感じか。俺は禴祭中学だ」
「なるほど、私は麻呂千歳中学校です」
なるほど。まあなるほどとは言ったものの、知らない学校だった。まあそりゃあ中学校なんて自分の学校以外で、二校、三校知ってたらいい方だと思う。まあ俺は自分の通ってた中学校しか言えないが……
まあとりあえず、莉奈が通っていたということは、例の西園寺綾も通っていたということか……もう少し莉奈に関する情報を知りたいところだが……まあ莉奈が嫌がるだろうし、それは高望みしすぎか。
ただもしかしたらその専修橋でいじめとかあったのなら、調べたら出てきそうな感じもする。その路線で調べてみるか。
「ええと、優斗くん?」
そんな事を考えていると、莉奈が俺に話しかけてきた。そしてその声で現実に押し戻された。
「優斗くん?」
「……聞こえてるよ」
「なんかめっちゃ真剣な顔して考えてたから……」
「まあ自分でも結構真剣に考えてたと思うよ」
実際、こんな深く考えるなんて、まあテストの時を除いたらほとんどないだろう。それくらい深く考えてた。
「なあ、専修橋中学ってどこにあるんだ?」
「え? 聞いといてそれですか?」
「どういう事だ?」
「だってさっき優斗くん地元かどうか気になったって言ってましたから」
「ああ、それは気になっていたが、実査場所がどこなのか聞いてなかったと思ってな」
「優斗くん……ドジですね!!!」
莉奈が元気に言い放った。ドジではないんだがな、さっきのはただの言い訳だし。
そして莉奈が笑って、「優斗くんここ笑うところですよ」と言ったので、それに対し、「おい、俺は別にドジってねえ!」と返した。
そして……莉奈が「私本当はわかってますよ。過去を知りたいんだなって事を」と言ったので、ドキッとした。だが、顔に出してはならない、顔に出したらバレる。そこで、
「そんなつもりじゃねえよ。それに恋人の中学校聞いたらダメなのかよ」
と返す。実際は過去を知るために聞いたものだが、嘘をつくなら突き通さなくてはならない。
「それに、彼女のことは色々知っておきたいしな」
まて、これは見すかもしれねえ。こう言ったらいろいろには莉奈の秘めたる過去が含まれる可能性もある。しまったなあ。
「そう言ってもらえてうれしいです。だから……」
と莉奈が俺に抱き着いてきた。
「私も最高の愛で優斗くんを愛しますね」
「莉奈、それ日本語おかしいだろ」
「えへへ」
「あと、学校でハグをするのはやめろ。周りの目が怖い」
「わかりました」
そして、莉奈は「トイレ行ってきます」と言ってトイレに向かっていった。もしやこれはぐらかされたか?
帰ってきてからいまさら聞くのもなんだしなあ。
そして五分後、莉奈が帰ってきた。
「優斗くん! そう言えば模試の自己採点なんですが……」
そう言えば自己採点して明日もって来いっていう話だっけ。一応自己採点はしてるけど、存在忘れてた。
「こうでした!!」
そして、莉奈の持つスマホから見せられる。
「これ、結構点数良くないか?」
流石に五〇は越えないだろう。だが、点数的に光るものはある。それに古文漢文も軽くやったおかげか、国語の点数が百三十七点と言う高水準の点数だった。
そのことを考えると莉奈の成長がよくわかった。
そして数学。これもかなり点数が上がっており、四六点。前の三〇点台と比べたら成長が芳しい。
他の教科も全体的に点数が上がっており、これなら俺と同じ大学に行ける光明が少しだけ出て来たなと言う感じだ。
「莉奈すごいじゃねえか」
「本当ですか? うれしいです!!」
俺の手を取りながらそう笑顔で言った。そして軽くドキッとした。そんな俺に対して「優斗くんの成績は同ったんですか?」と、そう莉奈が言うので見せた。
「わ、数学一点勝ってる!!!」
「うるせえ、不調だったんだよ」
実際2択で迷った問題が尽く間違ってたし。
「でも、優斗くんにはそれ以外負けてますね」
「まあ、俺に勝つにはまだ早いな」
「そんなこと言わないでくださいよ……優斗くんに勝つつもりだったのに」
「本当に勝つつもりだったのか? さすがにそれは無茶じゃねえか?」
「もちろんです。目標は高くないと」
と言って、単語帳を間始めた。
「あれ、やる気があるなあ」
「そりゃあ優斗くんと一緒の大学に行けないかもなんて嫌ですから!」
まあ動機は不純だが、やる気を出してくれてよかった。さて、俺もこうされては黙っていることはできない。
「優斗くんも単語帳ですか?」
「まあな」
「じゃあ仲間ですね」
「とはいえ、お前はいつまで持つかどうかやけどな」
「失礼ですね。私だって自分から単語帳かったんですから」
「確かにそれ、学校で交わされるやつではないな」
「そうなんですよ。しかもそこそこ勉強しましたからね」
「そうかえらいぞ、莉奈」
「じゃあなでてください」
「は?」
「いいじゃないですか。別に優斗くんにとっても悪い話ではないでしょ」
「得な話でもないけどな。それ」
だが、莉奈はそんな俺の言葉を聞いていないのか、それとも俺の言葉など意にも感じないのか、俺に頭を差し出してきた。
「……はあ。お前さあ」
「いいじゃないですか!」
そして仕方ないから莉奈の頭をなでる。一応ここ学校なんだがな。
「……ありがとう……ございます」
なんでこの時だけ顔を赤らめてるんだ。全く。かわいいなあ。
「お前、その顔かわいいぞ」
「私をほめ殺す気ですか!?」
そんなことを言っていたらお昼休みが終わった。




