第六十二話 莉奈の小説
「さてと、次は何をしますか?」
食事が終わり、莉奈の部屋に戻る。
「何をするって言われてもなあ。うーん」
「あ、そうだ。昨日言われた通り、一応書いてきました!」
と、莉奈に原稿用紙を渡される。
「ん? 紙なのか?」
「はい、なんかネットに書くの、違うんですよね。なんとなくですけど」
そして莉奈の小説を読む。とりあえず原稿用紙七枚程度あった。確か原稿用紙一枚四百時程度と聞いたことがあるから……二八〇〇字という訳か
文字が綺麗だ。これだけで丁寧に書いているという事が分かる。俺だったらこんなに上手くは書けないだろう。
内容は普通に難しい。内容で言えば最初のあの小説くらい難しいだろう。ただ、莉奈が書いた、それだけで読むやる気は上がる。
ただ、それは内容を理解できるかとは少し違う。すぐに内容を読み飛ばしてしまう。だが、読み飛ばしては莉奈に対して失礼になる。頑張って何回も何回も読み返して、なんとか内容を理解しようと頑張る。
しかし、やはりなかなか読めない。莉奈の小説はやっぱり昨日読んだWEB小説とは違い、自分の欲望をただ吐き出しているわけではなく、文章の美しさを作り上げている。
なるほど。これが莉奈が望む小説か。
だが、俺的にはやはりはまるわけではない。読むくらいだったら漫画を読むかゲームをしたいところだ。
だが、莉奈の小説。その一点で読む価値が生まれる。
そしてようやく原稿用紙の一枚目を読み終わった。つまりようやく四〇〇文字だ。やはり時間がかかる。
「どうですか? 優斗くん」
「……うーん……」
どう答えるか。面白いと言えば噓にはなる。ウソはいけない。本当のことを言うか。
「文章がきれいだと思った。何と言うかストーリーよりも美しさに力を入れてるなって」
これは嘘偽りのない本心だ。
「面白かったですか?」
困る質問が来た。これは本心を言っていいのか? 全くはまらないという本心を……
「あまりはまらなかった。やっぱり俺には小説は無理だわ」
「そうですか……なら小説を書くのはこれで終わりにしましょうか」
「いや、才能はあると思うぞ。俺がはまらなかっただけで。知らんけど」
「私は……優斗くん本位で生きてますので。優斗くんが面白くないんだったら書く必要もないです」
「まあお前がそう言うんだったらいいけど、一回ネットに挙げてもいいんじゃねえか? それで案外小説家になれるかもしれないぞ」
「難しいんですって。もう」
「いやいや、文章たぶん綺麗だと思うし、教科書に載ってても違和感無いと思うぞ」
事実、文章は綺麗だ。これだけの才能を捨てておくのは勿体無い。
「お世辞でも嬉しいです」
「お世辞では無いけどな」
「じゃあもう少しだけ書いてみます!」
「ああ、まあ学業と両立させてくれよ」
「うぅ、善処します」
俺と同じ大学に行くのならな。
「そう言えば莉奈、野球って相変わらず見てるのか?」
「急に話変えてきましたね優斗くん」
「そう言えば父さんからきいてきてくれって頼まれてな」
メールで莉奈に聞けばいいのに。
「自分で話してくれればいいのに」
「そうもいかねえだろ。父さんから話のネタを渡されたってわけだ」
よく考えたら、俺に野球をハマらせる為の戦略かもしれねえな。
「そう言うことなら見てませんよ。前にも言った通り私は流れてたら観る程度なんで」
「なんかさあ、野球観てない人が言うなよって話な気もするけどさあ、たまにしか観ないってどうなん? なんか父さんは毎日順位表とかちゃんと観てるって言ってたぞ」
「私は別に順位とかどうでもいいので。またその時に勝ってたらいいんですよ」
「ほう、そう言う見方もあると言うわけか」
「だから私が観るときは優斗くんも観てくださいね」
「ああ、わかった」
父さんと一緒だったらなんか癪だが、莉奈と一緒なら嬉しい。
「あ、そうだ。莉奈が当てまくったキャラ使っていい?」
「もちろんいいですよ! まあ私もその画面見せて貰いますけどね」
「ああ、このキャラはさあ、結構凸が強いんだよ。凸で上がる火力が高いしなあ」
「そうなんですか。私に感謝してくださいね」
「ああ、土下座してもいいくらいだよ」
そして超極難でこのキャラを使っていく。別にランキング下位とは言え、凸したら普通にトップキャラと遜色ない強さになるのだ。
「必殺! ラクジュアリーブレイク!」
と、俺が叫ぶと、ゲームのキャラが黄金を敵に投げつけ、ダメージを与える。
「必殺技の名前、言う必要あるんですか?」
「うるさいなあ。べつにいいだろ」
気分乗るし。男のロマンだ。
「しかし、無双してますね」
「そりゃあ二凸だからな。弱いわけがない」
「ならそれを当てた私は?」
「最強だな」
運良すぎるし。
「良かったです。しかし、今日は特に運がいい気がしますね。いつもは人生ゲームでもあんなに運がいいってことはないんですが」
「どういうことだ?」
「だって、ギャンブルコース全部当てたってことですよ。さすがに私とは言ってもこんな運が上振れすることもないですし」
「確かに、お前も、いつもキングカートで最強アイテムを取ってるわけじゃあなかったしな」
「だから今日は優斗くんが来たので私の運も張り切っているんですよ」
「まさか、これから世界の敵が襲ってくるなんてことないよな?」
「流石にありませんよ」
「……」
「……」
会話が途切れた。なんか気まずい。
「会話がなくなったな」
「久しぶりですね。こういうの」
「最近ずっと会話が続いていたからなあ。なんで今日はこんなに続かないんだろうな」
「なら」
と、莉奈は俺に抱き着いてきた。
「え?」
「体で会話しましょうよ。会話が続かないんだったら!」
「ぞうだな」
そして厚いハグをする。
「優斗くん大好きです!」
「ああ、俺もだ」
そしてそのまま押し倒された。
「えっちょっとなんだ!」
「押し倒したらいいってきいたことがあるから」
「お……おう」
そして人生二回目のキスをした。二回目も相変わらず良い感じだ。
「優斗くん……胸揉んで良いですよ」




