第六十一話 食事
「美味しい!」
と、莉奈がカルボナーラを美味しそうに食べる。
それを見て俺も食べる。
「確かにおいしいな」
「優斗くんが頑張ったからですよ」
「そっか、ありがとう」
たしかに俺頑張ったしな。
「ところでどこまで進んでるんだ?」
と、莉奈のお父さんが言った。
「それってどういう?」
「カップルとしての話だ」
「一緒に本読んだりとかですかね」
風呂に一緒に入ったとか、キスしたとかは恥ずかしすぎて言いたくない。
「優斗くんそうじゃなくて。風呂とかキスとかでしょ」
うわ、言われたし。
「それは聞いているよ」
「まあ私もう言ったしね」
しかも知っていたらしい。
「ならもう本読んだとかカラオケしかないじゃん」
「そんなこと言われましても……なら今日新たにカップルっぽいイベント作ります?」
「なんか嫌な予感しかしないんだが」
「やっぱり仲がいいようだな」
と、莉奈のお父さんが突然言った。
「もちろんよ!」
と、莉奈が俺を抱き寄せてきた。
「おい、なんだよ」
「イチャイチャしましょうよ」
「もしかして私の言葉に影響されてかな?」
と、莉奈のお父さんが言う。
「うん!」
元気よく莉奈が返事した。
「やっぱりかわいい子ね。莉奈は」
と、向こう側にいた映奈のお母さんが口を開いた。
「うん。もちろん私はかわいいよ」
「さすが!」
ノリについて行けねえ。とりあえずパスタを口に入れる。チーズの味がしっかりと出てておいしい。
「優斗くんもほら私の胸に飛び込んで!」
「なんだよ。急にテンション高いじゃねえかよ」
「私はいつだって高いですよ!」
「それは知ってる。てかご飯食べさせろ」
「えーせっかくの彼女の家ですよ。もう少しいろいろ楽しみましょうよ」
「いや、ご飯食べさせろ」
「別に飛び込んでからでいいじゃないですか」
「おい、それが例のお願いのないようだったりするのか?」
「いえいえ、まさか。もっと大事なことに使いますよ。これはただのお願いです」
「わかったよ」
と、莉奈の胸に飛び込む。これで気が済むんならまあ悪くはないだろう。俺も嫌ってわけじゃないし。
「優斗くん。よしよし」
と、抱きしめながら頭をなでなでされた。恥ずかしい。彼女の家で彼女の両親に見られながら抱きしめられながらよしよしされる? 羞恥心がどうにかなってしまいそうだ。
「どうだ? うちの娘のなでなでは」
「まあ悪くはないですね」
「またまたあ。優斗くん正直に言ってもいいんですよ。最高ですって」
「恥ずかしくて言えんわ!」
よく彼女の両親の前で言えると思ったな。
莉奈は「またまたあ」などと言ってくるが、マジで莉奈の両親の前でも普通にイチャつくのやめてほしい。
「あ、あーんしましょうか?」
「お前はイチャつかないと、気が済まないのかよ」
「嫌じゃないくせにー!」
そう言って肩をたたいてくる。まあ嫌ではないけど。
「ではそろそろ聞かせてもらおうか。昔の話を」
「え?」
「だってそうじゃないか。親と、カップルがそろったらすることは一つしかないだろう」
あー莉奈の親なだけにそう言う話は好きなのか。
「まあ、その話なら……」
小学生の話。それはだめだな。他の女の子の話をしたら気まずくなる可能性がある。ならこれか。
「小学生の時の話なんだが、俺の妹がおもちゃ屋の前を通りかがった時に急に泣き出したんだ。その時まだ妹は四歳だったかな? そして泣きながらおもちゃが欲しいって言って俺の父さんにしがみついてきたんだ。あれが欲しいあれが欲しいって言って。だが、甘やかしたらいけないと思ったのか、父さんはひたすらに買うことを拒んだんだ。そしたらあいつ俺を味方につけようとしたのか、お兄ちゃんもあれ欲しいよねって言ってきた。俺も実際ちょっとほしいなと思ってたから、俺も欲しいってねだったけそ、それでもお父さんが買ってくれなかったもんで、共闘して店に駆け込んでいって、おもちゃを盗もうとしたんだ。すぐにばれたけどな。それで怒られたことがある」
別にこれはそこまで黒歴史でもないし。
「つまり、優斗くんはいたずらっ子だったという事か」
と、莉奈のお父さんが言う。
「まあそうなりますね」
「じゃあそんな子にうちの娘はやれないな」
「ちょっと、お父さん」
「冗談だよ」
流石は莉奈のお父さん。性格が似ているな。
「まあそんなことは置いといて、なら今度は莉奈の過去について話そう」
「ちょっとお父さん!」
「いいじゃないか」
「私は嫌だよ」
「おい、莉奈。どうしたんだよ」
「私は……本当知られたくないの。だからごめん」
「おい、俺はいろいろ黒歴史話されているるのにそれはずるくねえか?」
「ずるいって言われても、私は……」
どうしたんだ、いったい。いつでも上機嫌なはずなのに。やっぱりこの話はアウトなのか。
「これって……」
「私としてはそこまで話したくないというのが分からないのだが」
「お父さんは黙ってて」
「……」
「……」
「私はね」
沈黙の中、莉奈のお母さんが話し始めた。
「別に莉奈が言いたくなかったら言わなくてもいいと思うわ」
「しかし、美奈さん。彼氏にも言えないのではな」
「ちょっと、そんなのだから、空気読めないって言われるんですよ」
「そんなこと言わないでくれよ」
「……」
空気が確実に悪い。俺はどうしたらいいんだ?
「私は……」
莉奈が口を開いた。
「別に言ったからって何か変化があるわけじゃないと思う。でもいうのはなんとなく嫌なの。優斗くんならどんな私でも受け入れてくれる。そう思ってるけど。でも……」
「莉奈……俺はもし莉奈の過去がどんな感じの過去でも受け入れるよ。でも、言う言わないは別だ。莉奈が言いたくないことを無理に聞こうとは思わない。だからこそ莉奈が決めることだ。まあ俺の場合母さんが無理やりばらしてきたんだがな」
「なら今は話さない……」
「わかった。じゃあ、あーん」
「え?」
「あーんだよ。お前したかったんだろ」
元気付けだ。
「そうですけど。あんまりしたくないんじゃなかったんですか?」
「落ち込んでる莉奈は見たくないからさ」
「わかりました、なら私もあーん返ししますよ」
「おい! 急に立ち直るな」
「えー。優斗くんが落ち込んでる私を見たくないって言ったから立ち直ったんですよ。感謝してほしいくらいです」
「感謝はしねえよ」
「ひどいです!」




