第五十七話 莉奈の両親
「優斗くん、今日は泊まる用意できてますよね!」
「ああ、もちろんだ……今日はお風呂は一緒に入らないからな」
この前みたいなのは嫌だ。さすがに目線をどこにやったらいいのかわからなかったし、しんどかった。
「分かってますよ。あくまでも泊まるだけですからね」
「そんなことを言って入って来ないか今から心配なんだが」
流石にあれから日が経ったとは言え心配だ。それに莉奈だし。
「当たり前ですよ。そんな道徳はあります」
「本当かなあ?」
「信じてくださいよ」
「おはよう優斗」
「お、今日は来てるんだな」
そこにいたのは彰人だった。彰人は実に土日挟んで三日間学校に来ていなかったから、久しぶり過ぎる。
「当たり前だ。そろそろ行かないと出席日数がやばい」
「お前模試も休んでたからな」
「その事だけどさあ、模試っているか?」
「普通にいるだろ」
急だな。
「俺はいらないと思う。だから模試の時間はノーカンな」
「その理論は普通におかしいだろ」
「なあ、寛人はどう思う?」
「俺か? 俺もいらないと思う」
「おい! 寛人お前もか!」
まあ、こいつら勉強嫌い勢なら分かっていたことではあるがな。
「ああ、別に今の学力を知ったとて、どうこうしよう解かないしな」
「ならなぜ寛人は模試に来てたんだよ」
「それは普通にお金払ってるからだ。金を払ってるのなら行くしかない。当然のことだろ」
「なるほどなあ。そう言う価値観もありか。でもまあ俺も莉奈みたいに模試をちゃんと受けさせたいけどな。だってお前ら勉強会とか提案してもすぐにさぼるだろ」
不真面目すぎるから。こいつらは一五分やったらもう休憩を求めてくる。休憩は確かに必要だが、取りすぎもだめだというのに。
「まあな。俺はお前とは違って推薦で大学行くつもりだし」
「ん? あれ、寛人はともかくさあ、彰人お前は大学とか大丈夫なのか?」
勉強どころか、内申点稼いでる様子もない。そんなこと言ったら寛人も対しては内申点を稼いではない気もするが。
そもそも休みの多い彰人は推薦なんか取れない気がする。
「大丈夫だろ。それに俺はいろいろと多趣味だからそれを使ったら行けるだろ」
「相変わらず楽観的だな」
「何の話をしてるんですか?」
「莉奈、来たか」
さっきまで莉奈はクラスの女子と話していた。
「優斗がさあ、そんな感じで将来大丈夫か? とか言ってくるんだよ」
「優斗くんが心配って言うんなら大丈夫じゃないんでしょう」
「おい、お前」
「勉強は大事なんですから勉強してください」
俺は咳払いをしてから……
「お前、昨日模試の後何時間勉強した?」
「国語除いたら0分ですね」
「よし、ギルティだ」
「別に勉強嫌いが勉強の大切さを説いたって良いじゃないですか」
「良くねえわ」
「ひどいです。優斗くんの味方を作ろうとしただけなのに」
「それで味方をしたと思える方がおかしいだろ」
「まあ、優斗お前の味方してたんだから許してやれ」
「いま、別に怒ってるわけじゃないんだけど」
「怒ってるわけじゃないんですか。なら良いです」
「なんか素に落ちねえ」
「さてと今日もいらっしゃいませ優斗くん!」
「ああ、お邪魔します」
そして今日も莉奈の家にお邪魔した。着替えとかは家を出る前に持ってきたので、今日は完全なる旅行だ。まあ旅はしてないんだが。
「さてと、小説読みますか!」
「それは無しって言っただろ」
「あ、今日は両親いるので」
「ああ、そうなんだ」
そしてリビングルームに入ると……。
「君が莉奈の彼氏か……いらっしゃい」
そこにはスキンヘッドで顔の右頬に切り傷がある、いかにも裏の仕事やってそうな人がいた。おそらく莉奈の父親だが……どうするか。普通に怖い。だが、仮にも彼女の父親だ。粗相をしてはいけない。
「はい、俺が莉奈の彼氏の優斗です」
「優斗か……」
たぶん名前はすでに知っていると思うので、たぶん品定めならぬ彼氏定めをしているのであろう。怖すぎて帰りたい。威圧感がありすぎる。
「良くぞ来てくれた。感謝しよう」
「はい、ありがとうございます」
「というわけで今日は二人で作ってくれるのよね」
と、莉奈のお母さんらしき人物が出てきた。
「うん」
「おい、二人で作るってどういうことだ?」
「ああ、愛の共同作業をしようと思って」
「聞いてないぞ」
「サプライズです」
「そんなサプライズはいらねえよ。それに俺料理下手だぞ」
マジで料理したことないかもしれない。
「良いですよ。私が上手に教えてあげますから。それに今日作る予定なのはパスタなのでそこまで難しくないですしね」
「ふふ、莉奈に彼氏なんて夢みたい」
「ちょっとお母さん」
「俺もそんなふうに感じるよ。昔は……いや、やめとこう」
「ん?」
やめとこう? どういう事だ?
「莉奈……」
「まあとりあえず作るにはまだ早いですし私の部屋にいきましょうか」
普通にはぐらかされたか?
「じゃあまた後で」
「ああ、仲良くな」
と、莉奈のお父さんが見送る。
「さて、どういう事だ?」
「なんですか?」
「いや、さっきの莉奈のお父さんが言ってた事だ」
「何しますか?」
そう言えば前もこんな感じの話になった時に莉奈は嫌な顔をしてたな。
「いや、昔はっていうやつだ」
「空気読んでくださいよ!」
「え?」
「私の過去については触れないでください」
うーん。この前みたいに触れない方がよかったのかなあ。
そしてそのまま無言のまま時間が過ぎた。
やはりこういう話は禁句だったのか。とりあえずスマホをいじることにした。しかし、ふつうに気まずい、誰か助けてほしい。
「優斗くん……私の過去は気にならなくても別に構いませんからね」
そんなこと言われてもなあ。
「じゃあもう聞かないわ」
「わかりました。なら、少しだけ人生ゲームしましょう」




