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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第五十五話 優斗の反抗

 周りから見たら微笑ましい光景に思えるんだろうな。彼女彼氏で小説を読むって……俺にはそんな微笑ましさとか無く、ただ帰りたいと言う感情しか無い。


 こんな彼氏がどこにいるんだ。彼女の家に初めて行って、もう帰りたくなってるって。莉奈の親がいるわけでも無いのに。だが、本当に帰りたい。


「すぅ、はあー」


 俺は深呼吸をする。


「どうしたんですか?」

「ストレスを逃してるんだよ。このままだと本を破りそうだから」


 言い過ぎかもしれないけど、だいぶストレス溜まってるのは事実だ。こう言ったら莉奈も代案を出してくれるだろう。


「分かりましたよ。優斗くん。これで慣らしましょう」

「スマホ?」

「ええ、WEB小説です。これだったらそこまで難しいことは書いてないただのラブコメなんで」


 と、莉奈はWEB小説のタイトル画面を見せてくる。タイトルは『カフェの店員さんが常連俺にデレデレで困ってしまうんですが』というものだった。


「おう、それってアニメになってたやつだよな」

「あ、知ってるんですか。なら好都合です」


 と、莉奈は一話目を選択して俺に渡してくる。


「そんなのがあるんだったら最初っから言っとけ」

「そんなこと言われても、こういうのは嫌いなんですよ。私はWEB小説は小説もどきとみなしてますから」

「なんだよその過激思考」


 どっかの人に怒られそうだ。


「良いじゃないですか。大体のやつ担当とかいないじゃないですか」

「そう言う意味か」

「ええ、そうです」

「で、読むか」


 こっちの方が簡単らしいが、どうなんだろう。


 この話は主人公がヒロインが働くカフェでたまたま出会い、そこから友情しいては、愛が発展していくという話だ。俺も三年前にアニメで観たことがある。


「どうですか?」

「まだ早いわ!」


 まだ一話も読めていない。そんな状況でどうですか? などと聞くとは。


「ふう、つまらねえ」


 だが、四話しか持たなかった。所詮文字だけで全部表現するなんて無理だ。それなら漫画を読んだ方がいいんじゃないかな。


 実際こんなのだったら小説のコミカライズ版の方が面白い。


「じゃあ何だったら読めるんだすか?」

「うーん。漫画」


 多分もはや何も読めない気がする。


「議論の余地なしですか?」

「ああ」


 もう諦めてくれ。合わないもんは合わないんだ。


「分かりました。じゃあ異世界系の奴で見てなさそうな奴なんか適当に読んでください」

「おすすめとかしてくれないのか?」

「私、WEB小説はほとんど読まないんですよ。だからおすすめとか出来ないです」

「そうか」


 意外だな。まあ俺自身もなにが小説出身なのか全く分からない訳なんだけど。


「じゃあもう詰みだはいおわりおわり!」


 と、立ち上がり、莉奈の椅子の下にあるスマホを取ろうとする。


「もう逃しませんよ」


 と、莉奈が俺の行手を阻む。


「もう無理だろ。それより時間を有意義に過ごしたい」

「ダメです!」

「どいてくれ」

「ダメだ!」

「どいてくれ!」

「ダメです!」

「どいてくれ!」

「ダメです!」

「どいてくれ!」

「ダメです!」

「どいてくれ!」

「ためです!」

「もう埒が明かないな。バトルしか無いか」

「中二病ですか?」

「うるせえ」


「とはいえこのままではダメですね。力づくでやるしかないかもしれませんね」

「ああ、そうだな」


 と、スマホを奪いにかかる。しかし、莉奈はその腕を握り、俺の頭を押さえつけ、俺の背中の上に乗っかってきた。



「おい、お前乗っかってくんなよ」

「なら、小説を読んでください」

「それは普通に暴行罪とか脅迫罪? とかで訴えられるからな」


 一般論として犯罪だろう。


「いいですけど、それをする労力に見合わないのでは? たぶん手続き面倒くさいですよ」

「それを言われたら弱いが、なんとかして脱出するだけだ」

「私がそれを許しますと?」

「うんぬ」


 と、背中を押し出す。しかし、莉奈の体は動こうとしない。


「お前、重いんじゃないか?」

「ちょっと、それはJKに対して言ってはいけない言葉ですよ」

「お前が全体重を預けてるのが悪いんだろうが」


 と、体を持ち上げようとしながら言うがやはり全然持ち上がる気配はしない、むしろこちらの状況が悪くなってる感もある。


「てか、いい加減辞めろ!」


 そろそろマジで体がしんどい。


「なら小説読んでください」

「俺そんなに勉強強要したか? 仕返しなら別にやってくれよ」


 今回のケース。対比として出てきそうなのが勉強だが、俺は莉奈をちゃんと休ませたし、別に休み過ぎの場合、休憩するなとかは言ったが、強要したわけではない。


「仕返しじゃあありませんよ。私はただ趣味を共有したいだけです」

「その結果俺に嫌われるかもだぞ」

「大丈夫ですよ優斗くんは私を嫌う訳ないですし」

「どこから来るんだよその自信は」


 逆にここまでして嫌わないと思ってるのかよ。まあ別に別れるつもりとかはないけど。


「だって優斗くんは……優しいですし」

「俺だって時にはキレるんだぞ」

「でも、本気になったら私如きの拘束、すぐに逃げれるじゃないですか」


 いや、普通に力が足りないんだけど……


「まあな」


 嘘をついておこう。流石に純粋に引き剥がさないとは思われたくない。


「だったら大丈夫ですよ。引き剥がしてくださいよ。私は純粋に勝負したいんです」


 なんでだよ……俺は無理なんだよなあ。


「ふんぬうううう」


 だが、やはり……


「もっと本気出していいんですよー」


 こいつもしや分かっているのか?


「降参だ。俺の負けだ大人しく読む」


 くそ、ここまで読んでいたのならとんだ策士だな。


 と、再び小説を読むこととなった。読みたくないし、帰りたい。だけど、莉奈は許してはくれないだろうな。


「今度はこれでどうでしょう!」

「それは?」

「官能小説です」

「おい! やめろ。俺にはそう言う趣味はねえ」


 官能って言ったらエッチなシーン出てくんじゃん。知らんけどさあ。


「私は別に小説を始めるきっかけになればいいなと提案しただけですよ」

「逆にお前そう言うのもってんのかよ」

「一冊だけ持ってますよ。何かそう言う描写があるからエロいとかそう言うのはありませんからね。そう言うのもその良さですよ。単なる小説の一種類ですから」

「えっとさあ、そのさあ。お前は良くても俺にはそう言うのに対する耐性はないから」


 てか、官能小説を持ってる女子高生とは……。あまりそんなことを考えてると作者に怒られるかもしれんけど。


「そんなこと言ってたら本番の時に困りますよ」

「おい、何の本番なんだよ」


 とはいえ、一つしか思いつかないが……俺にはそう言うのは早すぎる。


「それ聞くんですか?」

「やめとくわ。俺が聞きたくない答えが来るかもしれないし」

「でも心の準備はしといてくださいよ。結婚したらしなくてはならないんですから」

「それは先の話過ぎるだろ。てか結婚確定かよ」

「いいじゃないですか、子ども作りましょうよ」

「あ、はい」


 脱線しすぎだろ。てか先のことなど決めれないわ。


「てか小説読むんじゃなかったのか?」

「じゃあもうWEB小説をもう一回見てもらいましょう」

「でもお前あんまり紹介できないんじゃなかったのか?」

「いえ、よく考えたら私が知らなくても優斗くんが知ってるやつを見てもらったらいいじゃないですか」

「俺が決めるっていうことか?」

「ええ」


 そして俺は新規更新欄から面白そうなやつを探す。


「じゃあ……この『村を滅ぼされた少年。復讐のために力をつけすぎて復讐相手よりも強くなったが、そのことには気づかない』にするわ」


 タイトルがコメディっぽいし、なんか話数も少ないし良さそうだ。


「別に優斗くん、タイトルを読まなくてもいいんですよ」

「分かってるわ!」


 なんとなくだ。なんとなく読んで悪いんか?


「じゃあ読んでください。てかそれでよかったんですか? なんかまだ一四話しかないですけど」

「目標とかないとダメだろ」

「ああ、全部読み終わるのが目標という事ですか」

「そういう事だ」


 そうして少しずつ読み始める。

優斗の小説嫌いも少しはマシになったようですね。

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