第五十二話 模試本番2
「おはようございます!」
翌朝、ご飯を食べるためにリビングに行くと、俺のことを迎えに来たらしき莉奈が家の家の椅子に座って話しかけてきた、
「……なんでもういるんだよ」
というのも今はまだ八時だからだ。流石に早すぎる。
「そりゃあ優斗くんを待つためじゃないですか」
「いや、それにしても早すぎるだろ、お前いつもこんなに早かったか?」
「だって今日も優斗くんに早く会いたかったんだもん」
と、そう莉奈が言い放った。さすが莉奈だなと感心? するしかない。
「お兄ちゃんいいねえ、そんな待ってくれる彼女ができて、妹として誇らしいよ」
「確かにお前だったらこんなことはしなさそうだもんな」
むしろ由依が寝坊しそう。
「ひどい!」
「だってそうだろ、お前はいつも遅くまで寝て、家を出るのが遅くなってるだろ。莉奈を見習え」
お出かけの時に、由依を待つケースがあまりにも多すぎるんだよ。
「そんなこと言われても、眠たいんだから仕方ないじゃん」
「お前なあ」
「さてと、優斗も早くご飯を食べなさい」
と、目の前にご飯を出される。
「そうだな」
そしてご飯を食べ始める……が、
「お前見んなよ」
莉奈が見つめてくる。食べづらい。
「いいじゃないですか。減るものでも無いですし」
「そう言う話じゃねえ」
「えー」
「てか早く食べなきゃな」
「なら私が口に入れてあげますよ」
「いやいいって、むしろ食べる速度落ちる」
恥ずかしいしな。
「チャンスかと思ったのに」
「チャンスはそう簡単に来ないさ」
「というかさっさと食べてください、私まで遅刻します」
「分かってるよ」
そして一五分後
「さてと出発するか」
「本当待ち疲れましたよ」
「お前は座ってただけだろ」
てか待つの我慢できないのに早く来るな
「えー、そんなこと言わないでくださいよ。地味に待つのも疲れるんですからね」
「だったらスマホ触ってたらいいだろ」
「そんな寂しいこと言わないでくださいよ」
「はいはい」
「はいはいってなんですか」
「別にいいだろ。で、今日も模試なわけだが、勉強はしたのか?」
「やだなあ優斗くん。私のやる気がそこまで持つと思ってるんですか」
なるほど。
「もういいわ」
「早歩きしないでくださいよ!」
「まあ俺としては別にいいんだが」
「私と一緒の大学に行きたくないんですか?」
「それは俺が聴きたいわ!」
そんな会話をしながら歩いていたら学校に着いた。
「さてと、テスト前は勉強してもらうぞ」
「あれ? 今日はスパルタじゃないですか?」
「当たり前だ。俺だって大学は知り合いと行きたいからな」
大学は友達が大事って聞いたことがあるし。それに一緒にいられる時間が増えてほしいしな。
「あ、それはうれしいです」
「そんなこと言ってないでやるぞ。まず政治経済だな」
「ああ、一昨日ほとんどやってませんよね」
「まあな、あの大学の受験科目には入っていなかったからな」
社会は世界史か日本史だけで行けたはずだ。
「じゃあ勉強しなくていいってことですか?」
「いや、お前の場合、別の大学に行く可能性もある。勉強してもらうぞ」
「嫌だー!」
毎度の反応だな。
「さてと、教科書を読んでもらおうか」
「これは世界史よりも難しいんですって、書かれてる文字が難しいですし」
「まあ頑張れ」
と言って二人で教科書を読む。
まさかこんな日が来るとは思っていなかったな。彼女と二人で教科書を読むなんてな。
「読めません!」
そんな時間は長くは続かなかったようだ。
「まあ仕方ねえ。お前を責める気はねえ。とりあえずがんばれ」
「いや、助けてくださいよ!」
「仕方ないなあ、問題形式にしてやる」
「やったー!」
「じゃあ世界で一番最初に社会権が認められた憲法は何だ?」
まあ簡単な問題だろう。
「ワイマール憲法!」
「正解だ! なら次、初めての近代的な国際条約は?」
「ネストファリア条約!」
「ウェストファリア条約だ。惜しいな」
「正解でいいじゃないですか!」
そしてテスト開始まで問題を出し合った。
「優斗くん頑張りますよ!」
「ああ、頑張れ!」
そして問題を解いていく。
「さてとどうだった?」
「だめでした」
「だろうな」
「なんでですか!?」
「いや、さっきの様子からすぐにわかるだろ」
「私こう見えてもテスト中考えたんですよ。二十分もかけて」
「なら残りの三十分は?」
「優斗くんの頭を見てるか、寝てました」
「集中しろよ。せめて残り十五分まではがんばれ」
まあそんなこと言ってる俺も最後の十分間何も考えていなかったけどな。
「そんなこと言われましても」
「てか反省会は置いといて、数学の勉強やるぞ」
「反省会は優斗くんが始めたんじゃないですか」
「別にいいだろ」
「えー」
「さてと数学の勉強だが、お前はとりあえず教科書読んどけ」
「え?」
「え? じゃなくて」
「いや、そうじゃなくて、数学の問題じゃなくて?」
「お前は本番で数学の公式を文句なしで使える自信があるのか?」
ある意味記憶だからな数学は。
「ないですよ、そりゃあ」
「じゃあ教科書読んどけ」
「優斗くんは問題解いてるのに、仲間外れじゃないですか?」
「仲間外れって一対一で言うか?」
多数対一だろ普通。
「いいますよ」
「言わねえだろ。てか読め」
「はーい」
そして数学のテストが始まった。
数学のテスト。最初の問題は難しくはない。ただ、最後の方の問題が難しいのだ。だが、時間を使いすぎるわけにはいかない。やはり時間の使い過ぎは禁物だ。なにしろ六十分しか無いのだ。
多分莉奈ぐらいの実力だったら時間が余るかもしれないが、数学模試は勉強が出来るほど、解くためにやることが増え、その分時間がかかるという物なのだ。
テスト後
頭使いすぎて、頭が痛え。だが……
「莉奈どうだった?」
走ってきた莉奈に聞く。
「撃沈です、たぶん」
「そんなに自信がないのかよ」
「仕方ないですよ。難しかったんですから」
「まあ、高得点取れてる事を祈るしかないな」
「ですね」
「不安なのか?」
心無しか、不安そうな顔に見えた。
「だって努力が否定されるかもしれないんですよ、怖くないんですか?」
「まあな、でもお前はお前なりに頑張った。それで良いじゃねえか」
実際莉奈の努力は認めるし。
「そうですよね、優斗くん。ところでこのあと行きたいところがあるんですけど」
「なんだ?」
急だな。
「私の家です」
「それは来て欲しいということか?」
「はい! 今日は私の両親いないんで」
「挨拶とかじゃ無いんだ」
普通いるもんな気がするけど。
「それはまたの機会です!」
そして放課後すぐに莉奈の家に向かった。




