第五十話 ボウリング1
五十話目です。
「そういえばどこに行くか聞いていなかったな」
「あ、言ってなかったっけ。ボーリングよ」
「ボーリングか、久しぶりだな。莉奈はできるか?」
「私は出来ますよ。むしろ得意です! そう言う優斗くんはどうなんですか?」
「俺はそこそこいけると思うけど、分からん。なんせボーリングなんてほとんど行っていなかったし」
とは言え、前回行った時は小学生だったとはいえガーダーを連発してたけど。
「てか一昨日ボーリング嫌って言ってなかったか?」
「あれは気分ですよ。一昨日は嫌で今日は良い、ただそれだけです」
「なんだよそれ」
「まあ、じゃあ行きましょうか!」
「うん」
ってちょっと待て!
「そういえばお金の話は?」
忘れてたボーリングにはお金がいるのだ。俺金が無いし。
「あーたしかに、お金は一人千円ぐらいだったはず。出せる?」
千円か……出せるかな。いや無理だ。全財産四百円だし。
「優斗くん出せます?」
「……三人で楽しんでくれ」
そう返すしかできない。悲しいことだ。こんなことならお金を貯金しておくべきだったな。
「なら私が優斗くんの分も払いますよ」
「良いのか?」
「はい! もちろん」
「ああ、頼むわ」
今の俺は完全にただのヒモだ。だが、莉奈も俺がいたほうが楽しそうだし、それにこれは莉奈の提案だし、どうかお天道さまよ、許してくれ。
「しかし、私、理央さんはともかく、美里さんとはそこまで仲良くはないですよね」
莉奈が美里に話しかける。
「そうだね」
「なんかどう接したらいいのかわからなくて」
「普通でいいんじゃない? てか私にそれ聞くの失礼じゃない?」
「失礼ですかね」
「だってどう接したらいいのかわからないって」
「たぶん莉奈には悪気はないのよ。美里」
理央が莉奈の助けに入る。
「そうかなー」
美里はまだ懐疑的なようだ。
「そうですよ! というか優斗くん全然喋ってないじゃ無いですか。加わりましょうよ」
俺に会話が振られた。
「なんとなく」
「なんとなくって何ですか?」
「女子同士の会話だろ。俺が入る隙はないだろ」
「いいじゃないですか、男女とか関係ないですし。というかこれからボーリングするんですし、会話できなかったらダメじゃないですか」
「その時はその時で喋るよ。今回は入りにくかっただけだ」
そしてそんなふうな会話をしていたらすぐにボーリング場に着いた。
「さてと、着いたー!」
莉奈が叫んだ。
「そんな大声で言わなくてもいいだろ」
「いいじゃないですか。私だって常に素の私でいたいですし」
「お前はそんな叫ばなくても常に素だろ」
「そんなこと言ってないで行くよ! 時間がもったいない」
理央が立ち止まる莉奈に対して言った。
「そんなこと言わないでよ。もう少し過程を楽しみましょうよ」
「過程って、お前の場合過程とかじゃねえだろ」
その裏で理央は手続きをする。
そして手続きが終え、莉奈がボールを持つ。
「行きます!」
莉奈はさっそく第一投を投げる。結果はストライクだ。
「莉奈すげえじゃねえか」
莉奈のくせにやるなあ。
「だって私運動特異ですもん」
そう言えばそうだった。
「次優斗くんですよね。投げてください!」
あー絶対莉奈は楽しみにしてるよな。不安だ。
「よし行くぞ」
逆に考えるんだ。莉奈はどんな結果でも、褒めてくれるだろう。だったらどんな結果になろうと良しだ。
「えい!」
投げる!
「あれ、優斗くん……」
ガーターだ。少しだけ予感はしてたけどガーターだ。
「ドンマイです」
あれ、褒めてくれない。
「優斗、そんなに下手だとは知らなかったんだけど」
理央まで俺のことをけなしてきた。
「大丈夫だ。次で決める」
「えーほんとに行ける?」
美里までも俺をあざ笑う。ふざけんなよ。
「大丈夫だ。莉奈は信用してくれるだろ」
「優斗くん次はいけますよ! 私が付いています!」
「ありがとう!」
そして第二級が来る。
「行くぞ」
そしてボールを握り、投げる!
「あれ……」
終わった。
「信用するんじゃなかった」
莉奈のため息が聞こえる。
「お前はなんとか褒めてくれよ。フォームが良いとかさ」
「私を神格化しないでください」
よし……。
「もう帰るか」
帰るそぶりを出す。
「帰らないでくださいよ」
「だったら俺の精神ケアをしてくれ」
そして……。
「じゃあ次投げるね!」
そう言って理央が投げる。
「四つか、理央不調だね」
「不調じゃないけど」
「四つは不調じゃん」
四つで不調だったら俺はどうなるんだ。
「でも次があるから」
「それにどうやっても優斗くんよりは上ですもんね」
理央と美里の話に莉奈が入ってくる。俺のことをもうネタにするのやめて欲しい。全然精神ケアしてないし。
「大丈夫でしょ。相手ですら無いから」
やめろ。俺のライフはもうゼロだ。
「そんなこと言って優斗は大丈夫なの?」
理央がこちらを見るので顔を伏せ大丈夫じゃないふりをする。
「あ、優斗くんそんなことしても私の優斗くんイジリは止まりませんからね」
「止まってくれよ」
精神ケアはどこへ……。
そして理央は七球、美里は六球倒して、再び莉奈の番が来た。
「行きますよ!」
莉奈はそう言い、投げる!
「惜しいな」
八本倒れた。
「でも、これで前のやつと足して二六点ですから。優斗くんとは違って……」
「おい、お前それを言うのはやめろ」
しかもそれを見て理央が微笑んでやがる。やべえこのままだと恥を晒すことになる。てか、俺の味方は居ないのかよ。
「次行きますよ!」
莉奈は帰ってきたボールを持って投げる!
「惜しいな」
ピン一本分外れて転がった。
「まあでも……」
「優斗くんよりは上ですから、だろ」
「セリフとらないでくださいよ」
「予測しやすいぐらい言いまくるのが悪い」
もうお前のいうことなんて丸見えなんだよ。
「優斗くんのケチ。セリフぐらいは言わせてくださいよ」
「俺は別に聞きたくも無いから」
俺の悪口なんてな。
「てか次投げてくださいよ」
「たしかにな」
「楽しみにしてますよ……ガーターを」
「言うなよ」
なら投げてやろうか、ガーターを。
「行け!」
ボールを投げる。
「お!」
莉奈が驚く。七本倒れた。
「どうだ、これが俺の力だ」
「ガーダーになるところをみたかったのに」
「お前は俺になんの恨みがあるんだよ」
親でも殺されたか?
「なんですか優斗くん。私はただ楽しみたいだけですよ」
「さらに最悪だな」
「おーい、ボール帰ってきてるよ」
そう椅子に座ってた理央が言った。
「優斗くん、投げなさい」
「命令すんな」
そして俺は投げる。
「あーいつもの」
ガーターだ。
「いつもなとかいうな」
「はいはいー、どいたどいた」
そこに理央が割り込む。
「少しぐらい待ってくれよ」
「ああ、ごめん」
「ああ、まあ別に」
謝ってくれるとは思っていなかった。と言うことは俺の心が度重なる侮辱でおかしくなってるっていうことか。まあ悪いのは莉奈だけど。
「投げますね!」
そして理央が投げる。
私は普通に下手なのでガター連発してしまいます。ボウリングむずい。




