第四十七話 休み時間
「では、テスト初め!」
その先生の合図で問題を開いていく。
模試の国語の問題の難易度としてはそこまでは難しくはない。国語の問題は、大体三つぐらい百パー違う問題があるからそれを省けばいいのだ。
それに今回の模試では何文字以内で書けとかいう問題はないの。個人的に国語問題は筆記問題が難しいとされているから、この問題はそこまでは苦では無いのだ。
「莉奈どうだった?」
昨日はそこまで国語の勉強には時間を割いていないのだ。
まあそれも莉奈が国語は得意と言っていたことを踏まえて軽く漢文古文を触ったぐらいなのだ。
「現代文は行けました! 古文と漢文もたぶんそこそこは行けてると思います」
「それは良かった」
「優斗どうだった?」
寛人がやってきた。
「まあ、自身はあるわ」
「うわ、俺は全然無理だった」
「私は出来ましたよ!」
「そうか、俺だけか……」
寛人はそんな卑下するぐらい勉強できないわけでは無いだろうと言いたいが、もう少し勉強できてもいいと思うので、言わないようにしとこう。自信満々よりは卑下するぐらいが丁度いいのだ。たぶん。
「さてと次は英語だよな」
寛人が話題を変えた。莉奈に同盟を断られたからだろう。
「ああ。英語も莉奈に高得点取ってもらわないとな」
「ええ!?」
莉奈が驚く仕草をする。
「だって結構動画見たし」
たぶん十分ぐらいの動画八個ぐらいは見たであろう。
「そうですけど、自信はありませんからね」
「なんでだよ!」
「だって、英語って感覚じゃないですか。点数取れなくても私のせいじゃありませんからね」
お前のせいだろ。
「じゃあ誰のせいだよ」
「優斗くんのせい?」
「俺は動画見せただけだろ。俺は教えてないし。てか、その前に莉奈自分の責任じゃねえか」
それに対して莉奈は「バレましたか」などと言ってくる。バレましたかじゃねえよ。
「てか、そろそろ勉強させてくれ」
「優斗、休み時間ぐらい頭休めようぜ」
「ダメだろ、模試の日ぐらい脳を破壊しないと」
模試の日の勉強は身に入るのだ。それに本番の試験の時もみんな勉強すると聞いたことがある。本番のようにやった方がいい模試では勉強しないといけないという理屈だ。
「じゃあ勉強バカは放っておいて会話しようぜ」
「そうですね!」
「はあ、お前らも勉強しろよ」
「嫌だよー」
「まったく」
俺はため息をつく。
「大貫さん」
「なんだ?」
「優斗くんなんて放っておいて、話をしましょう」
そして俺の席の後ろで寛人と莉奈が楽しそうに会話をし始める。ちくしょう、会話に加わりたい。だが、勉強をおそろかにする訳には行かない。我慢だ。
「優斗くんも加わったら良いですのに。こんを詰めても行けませんよ」
「うるせえ」
拒絶する。それしか無い。模試の時に後悔したく無い。前に試験前の勉強をサボった時に、凡ミスで一問、二問落としたことががあるのだ。
「優斗くん」
邪魔しないでくれ。
「優斗くん」
「あー、うるせえ!!」
結構大きい声で叫んでしまい、周りの人達が一瞬こちらを見る。
「優斗くん……」
「……恥ずかしい……」
空気が険悪になった。原因はこいつらのせいもあるだろうが、俺のせいもあるだろう。なにしろ大声で叫んでしまったのだ。
少しだけ時間が経ったが、恥ずかしさは微塵も消えない。
聞かれたのがほかのクラスメイトだったらまだいいのだが、大村さんや、日中さんがこちらを見てたのがとくに恥ずかしいのだ。なにしろただのクラスメイトではなく、一緒にランチを食べた仲なのだ。
「はあ、なんか集中できねえ。仕方ない。会話に加わるわ」
俺は椅子の向きを変えて、後ろを向けるようにする。
「やった!」
「まったく」
莉奈は困ったものだ。
「で、何の話してたんだ?」
まあ十中八九俺の話だと思うが。
「大貫さんと優斗くんの話です」
やっぱりか。
「今までのことか?」
「そうです。友情という感じで良かったです」
「おい、何の話してたんだよ」
「別に大した話じゃないぞ、放課後に初めてお前の家にやってきた時のことだ」
「ふーん、まあいいけど」
寛人と放課後に遊ぶことはそこまであるわけじゃないが、数回寛人が俺の家に来たことがある。たぶんその時の話をしているのだろう。
「あの時お前凄かったよな」
「どの話だよ」
「ああ、オセロの話だよ」
ああ、オセロの話か、寛人と一回オセロをしたことがあるが、俺のボロ勝ちだった。
「もしかして二人で俺に負けた時の話をしてたのか?」
「おう」
「うん」
そうか。その裏で俺は母さんや由依にボロ負けしているわけなのだが。
「お前が容赦がないという話だ」
その横で莉奈が首をぶんぶんと縦に振っている。
「なんだよ、ただ日々の鬱憤をオセロで晴らしただけだろ」
日々の鬱憤、つまりいつも家族にオセロで負けるストレスのことだ。とうか友情を感じられる部分なかったと思うんだが。
「いや、あれはいじめですって」
「そうだな、優斗」
「だったらリベンジ承るぞ」
「それは別にいいわ」
「なんでだよ。てか先生着てないか?」
「そろそろか、なら寛人席に戻っておけ」
「わかった」
そして俺は残りの三分を勉強に費やした。




