第四一話 確率2
莉奈は受け取られた問題を見る。
「何これ、めっちゃ難しそうじゃないですか」
「ああ、そうだな。難しそうだな」
「頭死んじゃうって」
「ああ、脳死んで来い」
脳が死ぬまで考えた方が頭は良くなるだろうし、しんどい事以外にはいいことしかないだろう。
「無理だって」
莉奈は嘆く。
「がんばれ、答え見てもいいからさ」
「はーい」
莉奈が頑張っているのを横目で俺は自分の苦手な単元の問題を解き始める。
「うわああああああああ」
数分後莉奈が発狂した。
「無理、脳が持ちません、疲れた」
俺はその声を聞いてすぐに莉奈のところに行く。
「見てくださいよ、優斗くん。この問題異常過ぎませんか・」
問題を見ると六分の五の三乗×六分の一の三乗と出てる。
「何度やっても答えが合わないんですよ!」
「莉奈、これはな。覚える系の問題だ」
俺は莉奈に優しく言う。
「覚える系ですか?」
「だいたいこういう系の問題は解いていくうちに数字を覚えていくもんだ。俺の場合だと六だと四乗までは言えるし、三だと七乗まだ言える」
「でも私はそんなのはまだ覚えてませんよ」
「それは今から覚えていったら良いだろ。そこでやりやすい方法を教えてやる」
まあ、従来のやり方の方が楽な可能性もある。それに元々計算の方法なんて人それぞれなのだ。だが、俺流のやり方を教えて損なことはないだろう。
「例えば分母は六の六乗だろ」
「うん」
「ならそれは六の三乗×六の三乗と同義だ」
「うん」
「なら六の三乗は?」
「えっと……」
莉奈は考え込む。
「二百十六ですか?」
数十秒後莉奈は答える。
「そう、なら二百十六×二百十六をすればいい。それと分子も同じ考え方だ」
「うん、でも二百十六の二乗も難しくありませんか?」
「まあ、そうだけど。最初に比べたらまだましだろ」
「そうかもしれませんけど……」
莉奈は少し飲み込めてない様子だった。
「まあ、単に六をかけまくっても良いけどな。ただ、二百十六の二乗もちゃんと良い計算方法がある。まあシンプルだけどな」
「それは?」
「ああ、えっと、二百十六かける二百十六だと難しい感じがするが、二百十六かける六たす二百十六かける十たす二百十六かける二かける百と考えたらどうだ?」
「ああ、たしかに簡単になった気がします」
「そうだ。そんな感じで計算したら良い。だが、これもあくまでも一つの計算方法だから、莉奈が選んだらいいけどな」
「はーい」
「で、次は分子だ。五の三乗×五の二乗、つまり百二十五×二五こう考えたら簡単だろ」
「うん」
「こう考えたら簡単なんだ。そしたら二十をかけるけど、二〇は四で割れるから、さっきの分母を四で割って分子に五をかけたらいい。別にこれは計算する前に前もって六2つを三にしてやってもいいし、そこはお任せだな。じゃあ解いてこい」
「はーい」
そして莉奈は鉛筆を取る。
「解けました」
「よし、正解だな。よし休め」
「やったー!!!!」
「今度は十五分許してやろう」
「ありがとうございます」
そして俺は参考書を開いて計算する。
そして俺は参考書を開いて計算する。
「優斗くんも休みましょうよ」
「やだよ、俺はまだ頭疲れてないんだ」
まだ二時間程度しか勉強してないし、そんな短時間の勉強で疲れない程度には勉強には慣れている。
「でも最近勉強してなかったじゃないですか? 私が泊まりにきた日とか」
「その日はそうだけど、今日は勉強しまくる日だからさ」
「いつもこんな感じなんですか?」
「ああ、試験の前の日はこんな感じだな」
実際に勉強する日とその他の日で分けているのだ。まあ、とは言ってもその普段の日も基本的には一日三十分は勉強しているがな。
「じゃあ私が邪魔した感じですか?」
「いや、教えるのも勉強にもなるから大丈夫」
「そうですか」
莉奈はチョコを一つつまむ。
「ちょっと優斗くんの問題集見てもいいですか?」
「ああ、いいぞ」
俺が今やっているのは確率の色分けの問題だ。よくある問題で、隣と色が同じにならないようにする組み合わせが何通りあるかという問題だ。
「え? 優斗くん」
「ん? なんだ?」
「これ求められるんですか?」
莉奈は聞く。たしかに、この問題は初見では解くのが難しく思えるだろう。俺でさえこの問題は苦手なんだし。
「これは、まあ俺も解いてる途中なんだけど」
と、言っておいて、俺は説明をし始める。
「まずここの一つ目は全ての色が使えるから五通りだろ。そしてその隣の色はさっきの色は隣り合うから使えないから四通り、それ以降は同じように解いていくんだ」
まあこれで合ってたら良いんだが。俺自身この問題は嫌いだし、合っている保証もない。それに応用問題だと、これに加え、さらに条件が増えていく。その難しさは口で言わなくても分かるだろう。
「分かりました!」
「じゃあ俺は次の問題を解くか」
「はーい!」
そして莉奈はスマホを身始める。
「さて、莉奈もやろうか」
「はい!」
「さて次は、展開と因数分解、数学の定義、虚数、十分条件、数列、さてどれがいい?」
図形はあえて言わない。俺自身苦手で捨ててるからだ。そんな俺が教えられるわけがない。
「数学以外のやつやりません」
「数学飽きたのか?」
「はい!」
「なら別のやつやるか」
まあ、数学ばかりだと疲れるだろう。実際数学は脳をフル回転しなくてはならないから脳を疲れさせる。
「やったー!」
「じゃあ数学やるか」
「なんでですか」
「冗談だ」
「もう」
莉奈は俺の膝を叩く。
「さて、英語するか」
「はーい」
「とはいえ、英語ってどう教えたらいいんだかわからないんだがな?」
「私も分かりません」
いや莉奈が分からないのは同然だろう。
「ほな動画でも見るか」
動画サイトには英語教育のプロがたくさんいる。それに加えてたくさんの種類の動画がある。英語を勉強するならこれが一番の方法だろう。
「はい」
「そういや英語でわからないところってどこだ?」
分からないところが分からないと、何の動画を見たら良いか分からない。
「ほぼ全てですね」
やっぱりか。
「そうか、じゃあ構文からだな」
「ああ、あの第一構文とか?」
「そうだな」
「それって必要なの?」
「必要に決まってるだろ」
「だってなんかよく分からない感じじゃないですか」
「あのなあ、この世の大体の英文は構文からなっているんだよ。その構文に関係代名詞やら、接続詞やら、さまざまなもんが繋がってるんだよ」
俺は感情的に構文の大事さを教える。構文は全ての基礎なのだ。
「でもめんどくさくないですか?」
「こう言うのは大体基礎が一番めんどくさいもんなんだ。頑張れ」
「はーい」
「よしじゃあ、この動画にするか」
俺は登録人数七八万人の人気教育系配信者の動画を選んだ。
「じゃあ頑張って聞いとけよ、俺が見張ってるから。それとメモ、ちゃんと後でチェックするからな」
「はーい。てか先生厳しく無いですか?」
「当たり前だ。勉強できないような人が急に勉強のやる気を出すことなんてほぼないからな。さて、時間が惜しい。始めるぞ」
「分かりました」
そして莉奈は再生ボタンを押す。




