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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第三十九話 模試2

「さあ久しぶりの優斗くんの家ですね」


 莉奈が笑顔ではしゃぎながら言う。


「とは言ってもたったの二日ぶりだろ。それに俺たち毎日会ってるじゃねえか」

「そうですけど……二日も離れたら、もうきついんですよ」

「どんな病気だよ。俺の家ともカップルなのか?」


我ながらよく分からないことを言ってんな。そして俺が言った言葉に対して、なんでですか? などと莉奈は言い返す。


「……それで今日の目的は忘れてはないよな」


 俺は念を押す。今日は前から言っていた通り、勉強をする日なのだ。遊びをする日では無いのだ。莉奈だったらもしかしたらそこを勘違いしてる可能性もある。今日は莉奈のベースに巻き込まれないように頑張らなければならない。


「もちろんですよ、勉強会ですよね」


 莉奈も流石に分かっていたようだ。


「まあな、覚悟しとけよ。偏差値を五上げたるからな」


 今の莉奈の偏差値なんてゴミみたいなものなのだ。こんなんではいい大学なんて行けるわけがない。それに今のままだと授業も面白く無いだろう。


「五ってきつくないですか」

「お前の場合は元が低いから上げるのが簡単なんだよ」

「うええ」


 確かにきついが、100点のうち四〇点の人が二〇点あげるのと、百点のうち六十点の人が二〇点あげるのでは同じようで、二十点もの差がある。これを踏まえれば偏差値五をあげるのもそう難しく無いはずだ……たぶん。



「さあまずは数学だ、覚悟しとけよ」

「はーい」


 そして俺は数1の教科書を本棚から出して、教科書の七三ページを出す。そしてその内の一つの問題を指さして、莉奈に解かせる。



「えっとこれはどう解けばいいんでしょうか?」


 莉奈が早速聞いてきた。


「ああ、これはな。まず頂点が一と四だろ」

「はい」

「それを代入するんだ」

「どこにですか?」

「四をこのかっこの後ろに、一をこのかっこの中のⅹの後ろに入れるんだ」


 俺はノートに途中式を書きながら説明する。


「こうですか?」

「違う、かっこの中のほうの頂点はプラスマイナスを変えるんだ」

「わからないですよ」

「お前それでよく進級出来たな」


 この問題は基本問題のはずなんだが。


「……そんなこと言わないでくださいよ」

「はあ……まずこの基本式があるだろ」


 そう言いながら俺は教科書のページを開く。そこにはÝ=a(x-p)二乗+qと書いていた。


「はい」

「そこのpとqにそれぞれ一と四を代入すればいいんだ」

「ああ……えっと……あ! そういうことですか! 最初からそう言っとけば分かったのに」

「それが教えてもらうほうの態度かよ」


 俺は別に教えなくてもいいんだが。莉奈のためにやってるのに、莉奈にそう言う態度されたら何のためにやっているんだ。


「えへへ、すみません」


莉奈は笑いながら謝る。


「まあそれは置いといて、そしたらこの点2と5を通るって書いてあるだろ」


 莉奈はさらにじっくりノートを見る。


「それをxyに代入したらいいわけだ」

「なるほど」

「そしたらaが出るだろ」


 俺は式を解きながらaの数字を出す。


「うん」


 莉奈は頷く。


「そしたらaと頂点p、qに数字を代入したら答えが出るわけだ」

「……なるほど。じゃあ! 次の問題は?」


 よし、莉奈が乗ってきたな。


「これは頂点がpしか出てないから、qとaを求める問題だな」

「はい」

「でもこれは優しいことに、xとyが通る数字を二つとも示してあるわけだから、その数字を代入したらいいわけだ」


 俺はよし、解いてみろと莉奈に促し、莉奈に解かせる。


「そしたらこうなりました」


 二分後莉奈がノートを見せる。


「……よし、合ってるな。そしたらこれを連立方程式にしたら答えが出るわけだ」


「なるほど」


 莉奈はすぐにシャーペンを取り、連立方程式を解き始める。


「ただこの知識があっても模試ではだめだから、別の問題もやるぞ」

「これだけでも結構しんどいんですよ」


 莉奈は答えを見せながら言う。


「その答えは合ってるな。……まあそれは置いといて」


 俺は間を作る。


「仕方ないだろ、今までさぼっていた莉奈が悪いんだから」

「うわん」


 莉奈は顔を伏せ、泣き真似を始める。


「鳴き真似をしても無駄だぞ、次の問題だ」


「……これは文章題ですか?」

「ああ、去年の模試の問題だ」


 莉奈は考え込む。あんなことを言ってたくせにやる気はあるんだよなあ。


「えっとこれどうやって式作ればいいの?」

「これは俺が教えても意味がねえ、自分で考えろ」


 文章題はまずは自分で考えないと意味が無いのだ。文章題はパターンを覚えるのもそうなのだが。初見の問題をどう解くか、これも大事なのだ。


「そんなこと言われてもわからないよ」

「……まあとりあえず俺はトイレ行ってくるから、頑張れ」


 俺は腰を上げながら言った。


「はいはい、頑張りますよ」



 下の部屋


「どう、勉強は順調?」


 母さんが俺に喋りかけた。


「いや、莉奈が想像以上に馬鹿で困ってるとこ」

「馬鹿って言わないであげてよ、かわいそうじゃん」


 ソファーでゲーム機をいじっている由衣が返事をした。


「お前の言っていることも一理ある。けど、あいつ本当にバカだぞ」


 まあ、やる気はまああるし、成長速度は速いんだけど。


「そうなの?」

「まあお前よりは馬鹿じゃないと思うけど」

「お兄ちゃん酷い」

「じゃあトイレ行ってくる」


 俺は笑いながら言った。




「梨奈、出来たか?」

「出来るわけないじゃないですか、こんな難しい問題」


 莉奈は不満を顔に表す。仕方ないだろう。模試の問題は教科書の問題に比べたら難しいのだ。


「……それを明日できなきゃならないわけだぞ」

「なら尚更無理じゃないですか……」


 莉奈は見るからに落ち込む。


「そう落ち込むなよ、こう言うのは発想なんだ。例えばなんだけど、この問題なんか引っかからないか?」


 俺は説明を始める。


「何が?」

「これは、どの単語が公式のどの数字に当てはまるのかと言う問題なんだ。何か公式を見て気づかないか?」

「この数字が入るってこと?」

「そうだ、そんな感じで解いていけ」

「わかった、やってみる」

「頑張れ」


 やはり莉奈の成長速度はえげつないな。もしかしてこいつやってなかっただけで天才じゃないか?


「優斗くん、ここだけ解けないんですけど」

「ん? どれどれ」


 見るとほとんどの問題は解けていたのだが、最終問題で苦しんでいる感じだった。


「ああ、この問題きついよな」

「はい」


 俺でも難しい問題だ。今の莉奈なら尚更だろう。こうやって模試は簡単な問題の羅列の中に難しい問題を入れてくる。本当に簡難差が激しすぎるのだ。


「……あれ? 教えてくれないんですか?」


 やべえ考え事してて莉奈のこと忘れてた。


「ごめんごめん忘れてた」


 俺はすぐさま謝罪する。


「ひどいです」


 そう言って莉奈はほっぺを膨らます。


「……で、ここか。こういうのは。慣れの問題だからなあ。こういうのは類似問題をいっぱい解くのがいいけど、今は時間ないからな。それに問題は数学だけじゃないし。まあとりあえず問題集持ってくるわ」

「え、問題集ですか……」

「ああ」

「解けるわけないじゃないですか」

「自己評価酷すぎないか?」

「これが偏差値四一の自己評価です」


 莉奈はドヤ顔で言う。


「いや、ドヤ顔で言われても……」

「だって偏差値四一ですよ。舐めないでくださいよ」

「いや、低さで勝負されてもなあ」

「低さなら私のボロ勝ちです」

「それで嬉しいのか?」

「全然嬉しくないです」


 嬉しくないのかよ。


「まあ、それは置いといて。この問題解答あるからそれ見て解けばいいと思うぞ」


 そして俺は腰を再び上げた。


「俺は問題集取ってくるから、莉奈はもう少し頑張ってこい」

「私が解説を理解できなかったらどうするんですか?」

「その時は俺を呼べよ」

「はーい」


 そして俺は問題集を取りに行く。問題集はリビングに俺が放置してたせいで、この部屋にはないのだ。



「助けてください、意味がわかりません」


 俺が部屋に戻った瞬間莉奈が俺に飛びついて来た。


「ほーい、何がわからん?」


 俺は莉奈のノートを見る。


「解説の内容が理解出来ません」


 莉奈は俺に抱きつき、泣きながら言う。


「あー、難しく書かれているからなあ」


 解説というのは専門用語が多いのだ。ある程度勉強できるのならいいが、あんまり得意じゃない中で解読するのは難しいと思う。さて、どうするか。


「どうやって解読したらいいんですか?」


 莉奈は聞いてくる。


「うーん、そうだなあ。こういうのは意外にも書かれてい内容は簡単だからなあ」

「そうは言われても簡単には思えないのですが」

「そうかなあ」

「優斗くんは数学できるからそう思うだけですよ」

「まあ、頑張れ。ヒントを与えてもいいかもとは思うけど、たぶん次困るから言わんとくわ」


 解説はちゃんと読めるようにならないと、俺がいない時に勉強出来なくなるし、解説を読めるということは、勉強出来るってことにもなるからな。


「優斗くん、ひどいです」

「ひどいとか言われてもなあ」


莉奈のために言っているのだが。


「まあでもさっき言った通り時間かければ理解できるから」

「うん」


 莉奈は渋々納得する。


「これであってますか?」


 十五分後、莉奈が聞いてきた。俺は参考書を置いて、莉奈のところに行く。


「答えはそこに書いてあるだろ」

「でもあってるっていう実感がわかなくて」

「それはわかるわ。でもそれは仕方ないよ。諦めるしかない」

「今日は時間ないし、一問に時間をかけるほど非効率的なことはないと思ってる。受験生なんだったらまだしも、今はやるべきじゃないと思う」


 あくまでも俺の持論なんだがな。



「そうですか、なら優斗くんの言うとおりにします」

「おう、じゃあ次は確率だな」

「え、休憩させてくださいよ」

「まだ一時間もやってないだろ」


 まだまだやらなければならないことは沢山あるのだ。


「えースパルタすぎませんか」

「一時間ぐらいで値を上げるほうが心配なんだけど」

「私はまだ勉強初心者なんですよ、大目に見てくださいよ」

「わかってるけどさ、今日で数学英語国語世界史理科全部やらなきゃならないんだぞ」

「模試にそんな力かけることありますか?」

「あるよ、ここで本気出さなきゃ、受験の時に大変になるぞ」


 受験。学生のほとんどが通らなければならない関門だ。正直言って莉奈の今の学力で行ける所なんてほとんどないだろう。莉奈はそれでいいんだろうが、俺はそんなのはダメだと思う。ある程度の知識は持って大学に行って貰わないと。


「なんか未来見すぎじゃないですか?」

「そんなことはないけどな、それに先生が、大学受験はもう始まってるのですって言ってたじゃねえか」

「それはただの脅しな気がするんですけど……」


 脅しではないと思う。大学受験は応用力が問われるのはそうなのだが、基礎力も問われる。だから今基礎力をつけないとダメな気がする。


「まあとりあえず次やろうぜ」

「十分、十分でいいですから」


 莉奈が手を合わせて懇願してくる。


「はあ、わかった、十分な」

「はい!」

「じゃあ糖分持ってくるわ」


 糖分は脳の疲労を回復する効果があるからな。


「ありがとうございます!」


 そして俺はリビングに行く。


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