第三七話 鬼ごっこ
「さて公園着きましたね。じゃんけんをしましょうか」
公園に着くやいなや、すぐに莉奈が提案する。
「今思ったけど、女性陣が不利じゃないか? たぶん小学生とかよりも身体能力の差が激しいだろ」
「大丈夫ですよ。たぶん」
「たぶんってなんだよ」
「別にいいじゃないですか」
「まあ、じゃあやるか」
「はい!」
そして四人はじゃんけんをする。
そしてじゃんけんの結果莉奈が鬼になった。
「優斗くん、覚悟してくださいね。すぐに捕まえてやりますから」
「おう、楽しみにしとくわ」
「楽しみにしとくわって、私を舐めてません?」
「舐めてるね」
「なるほど、すぐに捕まえてあげましょう」
そして莉奈が一〇秒数え終わり鬼ごっこが始まった。
「覚悟してください」
「なんで俺の方を狙うんだよ」
莉奈は他の二人は無視して優斗の方ばかり狙っているのだ。
「さっき舐めまくってたのは誰でしたっけ?」
「そういうことか。でも捕まえられると思うなよ」
「はいはい、すぐちゅかまえてあげまちゅからね」
莉奈は優斗を煽るように赤ちゃんに話すかのように話す。
「煽るなよ。怒るぞ」
「ふふふ」
そして莉奈は少しスピードアップした。
「おいおい、早くねえか」
優斗は呟く。まるで女子とは思えないぐらいの速さである。
「当たり前ですよ。優斗くんは知らないかもしれませんが、私は意外と運動できるんですよ」
「くそ」
まずいと優斗は考える。莉奈と優斗との距離がだんだんと近づいてるのだ。優斗としてはまさか女子に負けるわけにはいかない、負けられないという気持ちだ。
「ふん」
優斗はブランコやシーソーなどの障害物の間を通り抜けながら走った。
「頭使いましたね。でも大丈夫です。そんな抵抗無駄ですから」
「そんなこと言うなよ!」
それを遠くから立ち止まって眺めていた二人。
「これ俺たちいるかな?」
「完全に二人の世界に入ってるね」
「こっちにも向かってこないとつまらないんだけどな」
「こっちも煽ってみる?」
「たしかにいい手だな」
二人の考えは固まった。
「おーい、そこの鬼、俺たちを追わないってことはすでに負けを認めてるってことか?」
「はあ、そんなわけないでしょ。すぐに捕まえてあげますよ」
「こっちに来い!」
「私は恨みを忘れたわけじゃないんですからね」
「それはすまん」
そして莉奈は俊と明菜の方向に走って行く。
「なんだったんだ?」
優斗は呟く。優斗の体力は切れかけてた。おそらくもう少し続けていたら俺は体力切れで倒れてただろう。優斗はこの時初めて自分の運動不足を実感して、悔しく思った。
「待てー!」
莉奈は叫びながら追いかけていく。
「捕まるかよ!」
俊はそれに対して逃げていく。明菜と俊、その二人は別々の方向に逃げたが、莉奈は俊の方を追いかけることにしたようだ。
「待ってください!!」
「おいおい息切れしてんじゃないかよ。だらしないなあ」
優斗と走り合いをした疲労も相待って息切れした莉奈を俊が煽る。
「ハアハア、息切れなんかしてませんよ」
明らかに息切れしてそうな感じの声で莉奈は否定する。
「体力回復まで待ってあげてもいいぞ、体力カスさん」
俊は明らかに莉奈を煽りまくる。
「また喧嘩しましょうか?」
「それは勘弁してくれ」
「でも、手を抜くかどうかはこっちが決めますから」
莉奈が再び走り出す。それに呼応して俊も走り出して、莉奈から逃げる。
「はあはあ、体力無限かよ」
およその五分後、自分の体力は切れそうなのに、莉奈の体力があれから切れそうになることがないことに対して冗談かよと俊は思った。まさかここまで体力があるとは思っていなかったのだ。
「タッチです!」
俊はついに莉奈にタッチされた。
「なんでそんな体力無限なんだよ。まあいいすぐにタッチし返すからな」
「やってみてくださいよ」
そして俊は一〇秒数え終わった。
「行くぞ!!」
そして明菜を追いかけ始めた。
「俊! なんで私なのよ。おかしくない? 今の流れだったらどう考えても莉奈ちゃんを追いかける流れじゃないの?」
明菜は大声でそう叫びながら俊から逃げる。
「同じ相手を追いかけても面白くないだろ」
「そうだけど」
「だから大人しく捕まってくれ、明菜」
「うるさい!」
「あ!」
そう言って明菜を追いかけてた俊は優斗にターゲットを変更した。
「なんでこっち来るんだよ」
「目があったから仕方ないだろ」
「そう言う問題じゃねえ」
優斗は愚痴を言う。彼としてはそのまま明菜を追いかけてた方が都合が良かったからだ。その理由は単純だ。彼は運動不足なのであんまり走りたくないのだ。
「うおお」
「くるなあああああ」
そして優斗はあっさり捕まってしまった。
「くそー! すぐにタッチしてやる」
そして少し休んでやる。それが優斗の考えだ。
そして優斗は真っ先に明菜を狙った。一番捕まえやすそうだからだ。俊はさっきあっさりとタッチされたし、莉奈はスタミナがえぐいので、除去法で明菜しかないのだ。
「こっちこないでよ!」
明菜は逃げる。だが、優斗も全速力で追う。
「なんでだよ」
なぜか、優斗と明菜とのどんどん距離が離れていくのだ。
「はあはあ」
優斗は息切れを起こし、その間に明菜は遠くまで逃げる。優斗はまた負けたのだ。
「大丈夫ですか?」
莉奈が優斗に声をかける。優斗と莉奈の距離はおよそ三メートルだ。
「こっちこそ、そんな近づいて大丈夫か? 俺が体力切れたふりをしているだけかもしれないぞ」
「それならそれでいいですよ。優斗くんを全力で追いますから」
「そうか、まあでも大丈夫だ。息切れしただけだから」
「それなら良かったです! 早く追いかけてきてくださいね」
「分かってるよ」
そして1分後、優斗はまた走り出した!
「優斗くん、来ましたか」
「ああ、捕まえてやる!」
優斗は意気込む。
「おい、ちょっと早すぎないか?」
「えっと、ちょっとさっきより調子よくて」
「調子いいとかいう話なのか? それは本当なのか?」
「本当だよ」
「そんなんでそんなに速くなるか?」
「なりますよ」
「怪しいな」
優斗は絶対嘘をついていたるだろと思った。それぐらい今の莉奈の足はすごい足が速いのだ。
「しかし、お前ほんまに足速いな」
優斗が莉奈に追いつく未来が優斗には全く見えなかった。
「仕方ねえ」
優斗はそう呟きターゲットを俊に変えた。
「次は俺かい」
そして優斗と俊の追いかけっこが始まった。
「またこれかよ」
三分後にまた優斗は悪態をつく。全く捕まえられそうにないのだ。
「さっさとこっちへ来いよ」
「うるせえ」
「お前は中学の時からそうだよな」
「体力なさすぎとでも言いたいのか?」
優斗は半ギレで返す。優斗にとってさっきの俊の発言は煽ってるようにしか聞こえないのだ。
「ああ」
「これが俺の限界なんだよ。俺はインドアの人間だからよ」
「そんなこと言ったら俺だって運動得意なタイプではないよ」
「そうなのか」
「でも俺に追いつけないレベルということはそれはおかしいレベルだけどな」
「おい」
優斗はむかつくと思いながらお言いg氏に言える言葉がなかったことが悔しかった。
「ちょっとそろそろ誰か捕まってくれないか?」
もう一〇分ぐらい優斗は鬼のままなのだ。優斗は体力が無くなってきて、息切れの頻度が増えてきたのだ。
「やだ」
「嫌に決まってるだろ」
「ごめんなさいね優斗くん」
全員から断られた。もう優斗の心は折れかけている。
「どうしたら捕まえられるんだよ」
もう精神的にきつい優斗に対して他のみんなが鬼を変わることを断わり、優斗としたらもう逃げ帰りたい気分だった。
「もうドンマイとしか言えないです」
莉奈は優斗を慰めるように言う。
「ならもう鬼になってくれ」
優斗は願うように言った。
「それは違うと思いますよ」
莉奈は優斗に対して冷たい言葉を吐きかける。
「はあ、俺には無理だ。今の俺にはお前らが化け物に見えるんだよ」
その言葉に対して優斗と明菜以外の二人は軽く同情する。
「もう優斗は外すか」
俊がため息をつきながら言った。
「ありがとう」
「もうお前を鬼にしてたら一生終わらないからな」
そして優斗抜きのおにごっごが始まった。優斗とは言うと、捕まえられないことに絶望しながらベンチでスマホをいじっていた。




