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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第三十四話 ハンバーガー屋

 ハンバーガー屋さんに着いた。


「それで何にします?」

「俺はこれにしようかな」


 そう言って俊はチーズバーガーを選んだ。


「優斗くんは何にします?」

「なんで聞くんだよ。俺はさっき言ったじゃねえか」

「いいじゃないですか。私がおごりますって」


 また奢ろうとしてるのかよ。


「お前まだ言ってんのか。俺はちゃんと俺のお金で食べるって。それにそのお金は自分のために使えよ」

「だめです、優しい優斗くんだからこそ使ってほしいんですよ」


 莉奈は引き下がらないようだ。


「だったらむしろダメだ。さっきも言ったじゃねえか。お前は俺のためにいろいろ奢りたいのはわかるけど。俺だって一人前の高校生だ。俺の食べる門は俺がお金を払いたいんだ」

「わかりましたならいいです、けれどその前に優斗くん何バーガーが好きなんですか?」

「普通のハンバーガーだけど」


 俺は普通に答えたが、なぜ聞いたんだ?


「そうなんですか」

「じゃあレジにいきましょー!」

「優斗」

「ん?」

「お前の彼女元気だな」

「ああ」


 俺は相槌を打つ。


「それにしてもお前変わらないな」

「それはいい意味でか?」

「ああ」

「みんな早く来てくださいよー」


 莉奈がレジのほうで手を振っている。


「じゃあ行くか」

「ああ」

「もうお会計なんで」


 莉奈が言う。


「もう注文終わってたのか?」

「はい、皆さんが遅いんですよ」


 そして俺たちは莉奈に言われたお金を払う。


「番号が呼ばれたら取りに来てくださいね」


 そう店員さんが優しそうにいう。


「わかりました」


 俊が言う。



「さーて食べましょうか」


 数分後番号が呼ばれ食事をとりに行って今に至る。


「はい、優斗くん」

「ん? なんだこれ、俺はハンバーガーなんて頼んでないぞ」

「私が頼んだんですよ」

「お前なあ、また奢る気かよ」

「感謝してください」


 感謝してくださいって言われてもなあ。奢らないでほしいって言った後じゃん。それに


「俺、莉奈に何も返せてないじゃねえか」

「私は優斗くんの笑顔だけで返されてますよ」


 それは知ってる。


「はー、お前ら俺のこと忘れていちゃいちゃすんなよ」

「ああ、すまん」


 俺は軽く謝る。


「お待たせー、急に呼ばれたからなんだと思ったよ」


 後ろから声がする。


「おう、明菜悪かったな急に呼んで。


 俊の彼女の佐伯明菜さえきあきなが来た。おそらく俊に呼ばれたのだろう。実のところを言うとこの人は俺にとって苦手である。俊との仲を絶縁まで引き裂いた原因でもあるし、そもそも生理的にこの人は受けつかないのだ。俊の彼女じゃなかったら俺はおそらくかかわってなかっただろう。


「ああ、悪かったな急に呼び出して」

「ううん、俊くんのためだもん全然構わないよ」

「それで呼んだ理由というのは聞かなくてもよさそうね」


 彼女は俺のほうをちらりと見ていった。


「ああ、久しぶりだろ。優斗と会うのは」


 俺は今非常に困っている。彼女とはまともに話したことがないのだ。


「そうね、優斗くん久しぶり」

「あ、ああ久しぶり」


 どうしよう、なんて話したらいいのか全く分からない。


「それでそちらの子は?」

「私は優斗くんのーーーーーーー彼女でえええええすうううう」


 なんでこんな元気よく言うんだろ。


「げ、元気な子ね」


 軽く引いているじゃねえか。


「そちらの方は俊さんの彼女ですよね」

「ああ、そうだ。俺の中の言い彼女だ」

「ということはこれはダブルデートというわけですね」


 莉奈よ、はっきりと言うなよ。


「お、俺はそんなつもりはなかったんだが」


 俊は明らかに動揺する。


「俊、まさか私をそんな目的で読んだんじゃないでしょうね」

「だから違うって言っているだろ」


 似たもの同士だなと俺は少しほほえましい気持ちになった。


「そういえば明菜も何か買って来いよ」

「うん、ポテト買ってくる」


 彼女はポテトを買いに走っていった。


「で、俺は聞きたいことがあるんだけど」

「何だ?」

「俺はお前のおもちゃじゃねえって言ってたきり、疎遠になってたんたじゃん」

「ああ、そうだな」


 俊も少し真剣な顔になった。


「あれは俺に何か至らないところがあったからか?」


 俺はそこが気になり続けている。俺が悪くないんならそれでいいし、俺がだめなんだったらその理由を教えてほしい。俺はそこがずっと気になり続けているのだ。


「いや、違う。お前は何も悪くない」

「ならなんでだ」

「俺は明菜と一緒にいたかったんだ。だから優斗は邪魔だったんだ。すまんな」


 想定外の答えだった。


「あ、ああ」


 俺はちゃんとした言葉を発することができない。


「ちょっと待ってください、ということは自分の利益のために優斗くんとの友達関係を止めたっていうことですか?」

「まあそうなるな」

「ふざけないでください、私は、私は、そんなこと許せません」


 莉奈の怒りはデットヒートしていく。


「莉奈さん、そんなに怒らなくても」


 俺は何とかさん付けをして莉奈の怒りを抑えようとする。


「いいえ、許せません」

「おお、修羅場になってる」


 彼女が帰ってきた。


「ごめん今どんな状況なの?」

「明菜、莉奈さんが急に怒ってきたんだ」

「それは語弊がありますよ。私は自分の利益のために優斗くんとの友達関係を切ったっていう俊さんのことが許せないだけなんです」

「あーなるほどね。確かに言ってたね」

「ちょ、おい明菜。そんなこと言うな」

「なんか、君との人生が大切だから優斗との関係はもう切る。とか、もう友達と遊ぶ時間はないし、必要もないだとか言ってたね」

「おい、明菜バラすなバラすな」


 俊は明らかに暴走する彼女を止めようとする。


「ちょっと待ってくださいよ、そんなこと言ってたんですか?」


 莉奈は怖い顔をして俊に問う。


「うん」

「明菜助けろよ」

「私は今ポテトを食べてるの」


 俊の願いとは裏腹に彼女はこの言い争いには興味を示していないらしかった。


「そんなあ」

「もう許せません、もう帰りましょう」

「おいおい、ちょっと待て」


 俺はたまらず莉奈を止める。


「何ですか?」

「もう、俺はいいんだって」

「でも、嫌悪感に襲われたんですよね」

「まあ、まあそれはそうだけど、実際そのせいで人との関わり合いが怖くなってたし」

「そうですよね、だったらなおさらじゃないですか」


「すまん」


 俺と莉奈の問答を俊の土下座が止めた。


「許してくれとは言わない、ただ俺はクズだった。友達なんてただのおもちゃだと思っていた。でもそれは違うんだと高校の時に学んだんだ。謝って済む問題だとは思ってないし、俺だって何回も連絡とって謝ろうと思った。でも俺にはそんな勇気はなかった。謝って済む問題ではないということはわかってる。でもごめんなさい」


 俊は謝った、自分の非を認め謝ったのだ。


「わかったもういいよ。俺はもともと許そうと思ってたし」

「でもいいんですか?」

「莉奈、今のお前がやっていることは芸能人に対する誹謗中傷と同じだ。俺はもう許しているから、莉奈ももう許せ」



「わかりました」

「ありがとう」

「さて、食べましょうか」


 テーブルの上を見ると、彼女は思い切り食べているのだが、他三人のハンバーガーは全くと言っていいほど減っていなかった。

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